なりわいカンパニー株式会社
エイチ・ツー・オー リテイリング(株)が、林業者やデザイナー、そして大阪府民とともに活動してきた、大阪・関西万博 Co-Design Challenge 選定「想うベンチーいのちの循環」プロジェクト

「想うベンチーいのちの循環」プロジェクトは、大阪産材を使ったベンチをつくり、万博に設置、その後は大阪各地で使っていただくプロジェクト(運営:エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社)。日本や世界で活躍するデザイナー3名が大阪の森を訪問し地域の製材所と形にしたベンチが完成し、万博会場に設置されました。ベンチにつけられた二次元コードから、大阪府民が「いのち」をテーマに企画・取材から制作まで手がけた記事や、大阪の製材所インタビュー、大阪の森の歴史までを掲載したウェブメディアが見られる仕組みで、万博会場のベンチに座り、森やいのちに想いを馳せる時間をつくります。
【プロジェクトのポイント】
・国内外で活躍するデザイナーが、大阪の木材を使ったベンチをデザイン。
・公募で集まった大阪府民が半年をかけて「いのち」をテーマに企画・取材した記事をプロジェクトサイトに掲載
・万博会場に設置されたベンチの二次元コードからプロジェクトサイトの記事が読める。
各分野で活躍するデザイナーが、森林や木材の現状や課題と向き合い完成したベンチ。
大阪の森林面積は全国で最小の約5万6000ヘクタール。それでも、府全体の約3分の1が森林です。その森林を健全に保つため、地元木材の使用を増やし、森の循環を促進する取り組みをしているエイチ・ツー・オー リテイリング(株)が主体となり、当プロジェクトがスタートしました。
①日本で活躍する3名のデザイナーが大阪の森を訪問することからスタート。
今回、ベンチのデザインを担当したのは、建築やプロダクトなどの分野で国内外で活躍する佐野文彦氏、辰野しずか氏、松井貴氏の3名。万博開始の約1年前、2024年4月に大阪・南河内の森を訪問することからスタートしました。

②大阪の森林の現状
北に北摂山地、東に生駒山地、そこから南にかけて金剛山地、和泉山地が連なり、森(山)自体が県境になっている大阪。大阪の森の大きな特徴は、人々が暮らすまちと近い距離にあることです。森の資源を運んだりするのに便利がよく、大阪の森はまちの人たちのニーズに応じて、暮らしに必要なものを供給するために多重的に利用されてきました。ただ、高度経済成長期以降は木材の需要が減り、枝打ちなどの労力をかけて50年や100年かけて育てても、価格が上がらないため林業離れが進むという問題も。
*大阪の森について、詳しくは「想うベンチ」WEBの以下記事でもお読みいただけます
③「デザインのための樹」ではなく、「樹のためのデザイン」を。
目の前の何十年も生きてきた樹々。いのちに想いを馳せるとはどういうことか。「デザインのための樹」ではなく、「樹のためのデザイン」とは。デザイナーそれぞれの想いと地域の製材所の技術をあわせ、1年をかけて完成しました。
完成した3つの「想うベンチ」
【Type A】

一本の「樹」をありのまま(松井貴デザイン)
樹と人の関係とは。そんなことをあらためて考えるきっかけになればとの想いで、山にある樹の姿を想像できるデザインに。一本の樹で座面と脚をつくり、切り込みを入れて乗せるミニマムな構造ですが、反ったり割れたりとどんどん変化していく「樹」を、できる限りそのまま受け入れられるように設計されています。





【Type B】

均一ではない木材に、新たな可能性を
シミや節が多い木材は「C材」、利用されることなく伐採されたまま林地に残される木材は「D材」と呼ばれ、これまでその活用の機会は限られていました。しかし見方を変えれば、その個性も魅力であるという気づきからデザインを発案。個性豊かな木材を細分化し、並べ替えることで、木の持つ荒々しさや力強さを活かしつつ、シンプルな空間にも馴染む凛とした佇まいを目指しました。





【Type C】

樹の経過に想いを馳せる
森で何十年と生きてきた樹は、切り倒された瞬間に「材料」になる。そのことを改めて感じることが命を大事にすることではないか ーとの想いで、時間とともに変化する樹の存在を肌で感じられるようあえて「材料」の形でベンチに。切り倒したばかりの樹は水分が多いので乾燥させてから使うのが一般的ですが、あえて乾燥工程を万博会場で行うチャレンジでもあります。





④ベンチに二次元コードを設置。府民ライターによる記事が並ぶウェブメディアへ。
ベンチ制作とともに取り組んできたのが、公募で集まった大阪府民ライターとのメディアづくり。ベンチに二次元コードを設置し、そこからプロジェクトのウェブメディアへ。そこには府民ライターが「いのち」をテーマに執筆した記事や、大阪の製材所へのインタビュー、大阪の森の歴史、大阪府民のみなさんに聞いた「大阪らしさ」などの内容を掲載。ベンチに座りながら、それを作った人、大阪の森、そしていのちなどに想いを馳せるきっかけを作り出します。
【プロジェクトのウェブメディアについて】



【掲載している記事の一例】




⑤万博終了後はベンチを地域に。

作って終わりではなく、万博終了後もこのベンチを地域で受け継いでもらいたい。それがプロジェクトの最初からの想いでした。プロジェクトの主旨に賛同してくださった、大阪府堺市新檜尾台小学校などへの設置が予定されています。
「想うベンチ ー いのちの循環」プロジェクトとは
「想うベンチーいのちの循環」プロジェクトは、エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社(大阪市北区、荒木直也社長)が大阪府との包括連携協定に基づいて進める「大阪 森の循環促進プロジェクト」の一環として始動。2025 大阪・関西万博の運営参加特別プログラムCo-DesignChallenge にも採択されています。
これまで大阪の木材を使ったベンチ制作を軸として、メディア運営のほかに、『大阪の森の木でスプーンを作ろう!』ワークショップなども実施してきました。


■運営
■パートナー
■運営協力
(参考)大阪・関西万博運営参加特別プログラム「Co-Design Challenge」とは
2025 年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の運営参加特別プログラム。大阪・関西万博を契機に、様々な「これからの日本のくらし(まち)」 を改めて考え、多彩なプレイヤーとの共創により新たなモノを万博で実現するプロジェクトです。すでに販売されている物品・サービスの提供ではなく、これから開発を行うものを貸与・提供する点が特徴。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が設置したデザイン視点から大阪・関西万博で実装すべき未来社会の姿を検討する委員会「Expo Outcome Design Committee」監修のもと生まれたプログラムで、22件が選定されました。