足立ブランド
優れた製品・技術を持つ事業者を広く認定し区内外へPRする「足立ブランド」。認定企業である『タカラ工業』『タカラ樹脂工業』が2025年4月、新たなスタッフ4名を迎えました。
東京都足立区青井にある1,300坪もの敷地にいくつもの建屋を構える『タカラ工業』『タカラ樹脂工業』。歴史ある技術と経験を活かして、現在は2社の協働により、設計開発から多種多様な製造工程と納品までの社内一貫対応を実現。若い従業員で活気溢れる金属・樹脂加工会社です。今回はものづくりの現場から、生え抜きの社員として長年勤務する副社長、安食智史氏にお話を伺いました。

◆ 金属加工からプラスチック加工まで幅広く対応
『タカラ工業』『タカラ樹脂工業』は、設計から金型製作、各種切削加工、レーザー加工、溶接、金属プレス、プラスチック射出成形と幅広く行う金属・樹脂加工の会社です。

『タカラ工業』はハクキンカイロ、ヒーターなど家庭用電気器具の設計開発製造販売会社として、太平洋戦争終結後間もない、昭和20年に墨田区で創業し、今年で80年になります。その後、金属加工及び金属プレスの金属系機械部品製造をメインに展開。昭和27年には、当時の南千住工場なども吸収し、現在の青井に事務所と工場を移転し、この地で72年の歴史を刻み続けています。
『タカラ樹脂工業』は昭和59年、当時ブラジルで自動車関係の仕事に就いていた初代の子息で現社長である海宝善昭氏を日本へ呼び戻しました。
それならばと、無類の車好きだった海宝善昭氏は自動車関係の樹脂の需要を見越し、射出成形金型の設計製造から射出成形まで、樹脂系の部品製造を可能にするタカラ樹脂工業株式会社を分立。エアバックの運用試作など多くの難題に対応してきました。
その後「タカラ工業」を継承し、現在に至ります。
同社は、これまでにも昭和33年には金属ばねに劣らない耐久性を備え、電車のパンタグラフなどに使用される「ナイトハルトゴムばね」、昭和43年には海上コンテナ向けの「封印環・封印錠」(コンテナの扉に取り付ける鍵のような製品。破壊しなければ外すことができないため、集荷されてから解錠されていない証明となる)を自社製品として実用化、発展してきました。

平成19年には『上海桜木工貿有限公司』を中国協力工場として提携。また、平成22年には中国・河北省唐山に『海宝機械有限公司』を設立。現在の大口顧客の建機メーカーが中国進出にあたり、共に進出し、組立作業などを中心に行っているそうです。
◆ 展示会のメリットを感じた「足立ブランド」
「足立ブランド」の認定は平成27年。
「当時、弊社は会社の周辺環境や営業活動の方針、その方向性に悩んでいました。そのことを同じく青井の金属加工会社で協力メーカーでもある『鈴木製作所』の鈴木社長に話したところ、足立ブランドを勧められました。」と安食副社長。

「社屋周辺は準工業地域で、かつて多くの町工場がありましたが年々減少、今では一般住宅やマンションが建ち並びます。“区内産業のより一層の発展と足立区のイメージアップ”を掲げる足立ブランドに参加し、イベントや工場見学の機会を設け、地域にお住まいの方々にも弊社のものづくりや活動を認知していただきたいとの思いから応募しました。」と参加のきっかけを語る安食副社長。

また、同社は建機、鉄道、航空、自動車製造など様々な業界から厚い信頼を得ているものの、さらなる高みを目指し「足立ブランド」を営業ツールとしてビジネスの活性化に繋げたいという思いもありました。

「足立ブランドには多くの同業・異業種の企業がありますが、そうした横の繋がりを開拓することで仕事に繋がるのではないかとの期待もありました。」
実際に「足立ブランド」認定企業内でのご相談案件や、受注案件も多くいただき、何社かと協力してものづくりを行なった事例もあります。
「展示会出展では、来場していた埼玉の企業からお声掛けいただき、毎年金属、樹脂部品の大口の受注をいただいております。また、その会社のつてで別企業から案件をいただくこともあり、確実に広がりを実感しています。」

◆ 豊富な設備と長年のノウハウで、設計から製造・納品まで対応
同社では最新設備を含む数多くの機械が導入されています。例えば、一台何役もこなす切削加工ができるマシニングセンタは6台完備され、射出成形機は、100t/350t/450tに対応できる3台が設置されています。
「金属とプラスチックの製造工程を連携し、社内にて管理と完結が出来るため、安心してお任せください。図案やデータを拝見し、製品形状、製作方法、材質の選定、金型設計などをご提案。設計から納品までを検討させていただきます。上記の機械ほか、CAD/CAM、NC旋盤、プレス機/ベンダー、レーザー加工機、ワイヤーカット加工機、放電加工機、アーク溶接/TIG溶接/ロボット溶接/スポット溶接、シルク印刷、平面研磨機など多種多様な設備を取り揃えています。自社での一貫生産により、低コスト・短納期も弊社の強みです。」













新しい機器の導入は、基本的に補助金を利用しないのが社長の方針。社員の裁量で機械を導入するという意識を持ち、一人ひとりが、責任をもって機械を活用、それによって得られる利益を考えることへ繋げるという責任感を持たせることも特徴といえるでしょう。現在は、大手建機メーカー2社の案件を大きな柱としている同社。
「ある時、建機に用いるΦ27.2ミリの太径パイプの曲げ加工案件があり、条件に合う協力メーカーが見つからず、社長の結論はパイプベンダーを自社に設置し内製化することでした。こうした経験を重ね“タカラでできないものはない”と評価をいただくほど各種最新機械設備が備わった企業となりました。」
◆ 人材確保、教育への徹底と課題
「就職活動時、以前から、バイクや車が好きだった私に社長が『車が好きならうちにくるといい』と自身のフェラーリに乗せてもらい、入社を決めました。」と冗談まじりに話す安食副社長。
人材確保と教育には特に力を入れています。社員の4分の3が10〜30代。若い世代が中心で女性の就職希望者も増えているそうです。たまたま取材日には、建屋の階段の修復工事中でした。

「今年度4月から4名の高校新卒の社員が増えました。(女性1名、男性3名)ここ4年で4名の女性社員が増え、女性の働き易い職場環境にも取り組んでいきたいと思っています。古い建屋ですし、工場というのはオフィスビルのようなわけにはいきません。それでも可能な限り、社員に快適な環境で仕事をしてもらうかを常に考え改良に取り組んでいます。」
「弊社は高校新卒者のみの採用で、基本的に中途採用はしていません。人材不足の際には、長期派遣の方にお願いしています。各社員に早い段階で仕事を任せ、責任感を持つ教育をし、会社見学にいらしたお客様には、全員が各工程をきちんと説明できるようにしています。」
これは社員が自分の行う仕事内容を正しく熟知し、自己の能力を高めるばかりではなく、次の代への教育にも役立つのだと言います。
弊社の製造工程は、レーザー・溶接・プレス・組み立てなどのいくつもの工程にわかれます。一般的には、一人の従業員が専任スタッフとして1つの工程を任されることになりますが、同社では工程をおよそ20に分け、入社4年目までの社員は1週間単位で別の工程に移動するというローテーションを社内ルールとして決めました。
現在、社員と派遣の22名でローテーション中。
数字前のAはAM(午前)、PはPM(午後)の意味。
新入社員4名は赤文字⑲~㉒に該当します。

これにより、若い社員が同社の製造技術をまんべんなく経験する環境が整い、技術の標準化を実現しました。また、個々の性格や能力も把握し、人材に厚みが出来ます。多くのスキルをマスターすることで忙しい部署への配置調整も迅速に対応することが出来、コロナ禍にもうまく機能しました。
「技術が磨かれてくると、その道一筋の専門性を求める人もいますし、世代間によって考え方も変化し、年々従業員への接し方が変わり難しいこともある。」と安食副社長。
これまでの製造工程において「臭い」や「振動」など技術者の五感に頼る部分が多くあった。しかし、感覚的なものは継承することが難しい為、現在は属人的な感覚を数値化することで技術を見える化し、社内全体へと技術の共有を図っています。

◆ 理想の“タカラ”を探し求めて
「お客様には“ものづくりで困った時は、まずタカラに相談してみよう。なんらかのヒントはもらえるから”と気兼ねなくお声掛けを。」と安食副社長。
かつて顧客の建機メーカーから、展示会で来客者に配る為のロゴ入りキャップ(帽子)の製作依頼がありました。畑違いの案件でしたが、「どんな案件でも分からないとの回答はない」という社長の訓示を遵守。見事コスト、納期を調整し無事、納品までこぎつけたことも。型にとらわれず、諦めず、色々なものづくりに対するチャレンジする精神をモットーにしているのです。
「10年以上前から、KES認定企業として環境問題にも取り組んでいます。本来であれば、リサイクル・リユースが可能なプラスチックが、問題視されています。また、人口減少、少子高齢化社会に拍車がかかり、人材確保が難しい製造業ですが、一つひとつ問題を解決し、明るい未来を想像できる業種、会社になると嬉しいです。」そう笑顔で締め括ります。

企業情報
タカラ工業株式会社 タカラ樹脂工業株式会社
会社名:タカラ工業株式会社 タカラ樹脂工業株式会社
住 所:東京都足立区青井3-32-23
電話番号:03-3886-3184(タカラ工業株式会社)
電話番号:03-3886-3187(タカラ樹脂工業株式会社)
代表者:海宝 善昭
事業内容:
CAD / CAM 設計
・射出成形金型
・各種治具
各種機械加工
・マシニングセンタ加工
・NC旋盤加工
・レーザー加工
・ワイヤーカット加工
・放電加工
・プレス(100~250t) / ベンダー加工
・アーク溶接 / TIG溶接 / ロボット溶接
・スポット溶接
射出成形
・100t / 350t / 450t
自社製品製造販売
・ナイトハルトゴムばね
・封印環 / 封印錠
各種組立
シルク印刷
3Dプリンター
「足立ブランド」は、区内企業の優れた製品・技術を認定して、その素晴らしさを全国に広く発信することで、区内産業のより一層の発展と足立区のイメージアップを図ることを目的とした事業です。
『タカラ工業株式会社』『タカラ樹脂工業株式会社』は、この「足立ブランド」認定企業です。
取材など掲載情報に関するお問い合わせは、「足立ブランド」の運営事務局でもある足立区役所産業経済部産業振興課ものづくり振興係でも受け付けております。
足立区役所産業経済部 産業振興課 ものづくり振興係
電話番号:03-3880-5869
ファクス:03-3880-5605
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