日赤
日本赤十字社(本社:東京都港区、社長:清家篤)は、このたび、紛争下での人道支援活動の保護について訴える声明を発表いたしましたので、お知らせいたします。
紛争下での人道支援活動の保護について
イスラエル・ガザ人道危機下において活動するパレスチナ赤新月社(以下、パレスチナ赤)の救急隊員が2025年3月23日、ガザのタル・アル・スルタン地区において、赤新月の標章を付した救急車で移動中に銃撃を受けました。3月30日、赤新月の制服を着たパレスチナ赤の救急隊員8人が、国連機関のスタッフ1人及びその他の民間救急隊員6人とともに遺体で発見されました。また、パレスチナ赤の救急隊員の1人が拘束されたとみられています。
「赤新月」は「赤十字」と全く同じ効力を持つ、国際人道法において定められた「保護」の標章であり、紛争下での人道支援活動を識別するものです。世界中の191の赤十字社・赤新月社で構成する国際赤十字・赤新月社連盟(本部事務局:スイス連邦ジュネーブ)の理事会は4月17日、「人道支援要員の殺害は、国際人道法に対する容認しがたい違反であり、今回の殺害及び拘束に関して悲しみと連帯、そして憤りをもって、このようなことが繰り返されないよう一致団結する」という声明を別添のとおり発出しました。日本赤十字社は、国際赤十字・赤新月社連盟の一員として、この声明に賛同し、紛争下での人道支援活動中に尊い生命を落とした人々に心からの敬意と哀悼の誠を捧げるとともに、赤十字・赤新月の要員や施設、機材だけでなく、その他の医療要員、医療施設、救急車、人道支援要員、民間救急組織などを攻撃することは、国際人道法の重大な違反であることを訴え、その遵守を強く求めます。人道支援活動が妨げられることは、本来こうした活動によって助かる生命が助からなくなることを意味します。
ジュネーブ条約締約国政府も参加した第34回赤十字・赤新月国際会議(2024年10月開催。於ジュネーブ)は「国際人道法の遵守に向けた普遍的な文化の醸成」という決議を採択しました。また、この会議で、日本赤十字社は日本政府と共同で、国際人道法の普及強化にかかる共同誓約を行い、その中でも人道支援活動を保護することの重要性に触れ、公教育等を通じた国際人道法の普及強化により、日本国内の世論喚起を図ることとしています。日本赤十字社は、国際人道法の普及に今後もいっそう努めてまいります。
日本赤十字社
社長 清家 篤
<別添>
国際赤十字・赤新月社連盟理事会メンバーによる声明
私たち国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)理事会メンバーは、パレスチナ赤新月社の8人の献身的なメンバー、モスタファ・カファジャ、サレハ・モアマー、エズディン・シャット、モハマド・バフルール、モハマド・アル・ヒラ、アシュラフ・アブ・ラブダ、ラエド・アル・シャリフ、リファート・ラドワンが殺害され、もう一人のメンバー、アサド・アル・ナスラが拘束されたことに対して、私たちは悲しみと連帯、そして憤りをもって一致団結します。
私たちはこの壊滅的な損失に深い衝撃と憤りを感じています。彼らは、想像を絶する苦しみの最前線で無私の奉仕をし、絶望的な状況にある人々に救命支援をもたらした私たちの同僚であり友人でした。彼らの死は、その家族や同僚にとって個人的な悲劇というだけでなく、私たちの人道的使命の核心と、私たちが支持する原則に対する深い打撃です。私たちは、可能な限り明確かつ強い言葉で、彼らの殺害を非難します。人道支援要員の殺害は、国際人道法に対する容認しがたい違反です。私たちの仲間は戦闘員ではなく、人道主義者でした。彼らは保護されるべきであり、危害を恐れずに人命救助活動を行うために、安全で妨げのないアクセスが認められるべきでした。
私たちは、アサド・アル・ナスラをはじめ、拘束されたままのパレスチナ赤新月社のメンバーの即時釈放を求めます。
私たちは、人道支援活動家、特に危機的状況にある人々に支援を届けるために日々命をかけているボランティアやスタッフの保護の絶対的かつ譲れない重要性を強調します。彼らは私たちの標章を、所属や政治の象徴としてではなく、保護を提供すべき盾として身に着けています。
私たちはすべての政府に対し、国際人道法の下での義務を思い起こさせます。この法律は、一般市民と彼らに仕える人々を保護するために存在します。この法律を無視することは、法的にも道徳的にも誤りであり、あらゆる場所で人道的行動の基盤を損なうものです。
私たちは説明責任と正義を要求します。それは、無残にも命を奪われた8人の同僚だけでなく、他の人々を救うために殉職したすべての人道支援者のためでもあります。そして、このような暴力が決して容認されず、無視されず、繰り返されないよう主張しなければなりません。
IFRCの理事会メンバーとして、私たちは、正義、保護、そして人道支援活動家の尊重を求める点で一致団結しています。
私たち一人に対する攻撃は、私たち全員に対する攻撃であり、私たちは沈黙を守りません。
<別添:英語版>
STATEMENT BY THE MEMBERS OF THE GOVERNING BOARD OF THE INTERNATIONAL
FEDERATION OF RED CROSS AND RED CRESCENT SOCIETIES
We, the members of the Governing Board of the International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies (IFRC), stand united in grief, solidarity, and outrage over the killings of eight dedicated members of the Palestine Red Crescent Society – Mostafa Khafaja, Saleh Moamer, Ezzedine Shatt, Mohammad Bahloul, Mohammed Al-Hila, Ashraf Abu Labda, Raed Al Sharif and Rifaat Radwan – and the detention of another member, Asaad Al Nasasra.
We are deeply shocked and outraged by this devastating loss. These were our colleagues and friends who selflessly served on the frontlines of unimaginable suffering, bringing lifesaving support to those in desperate need. Their deaths are not just a personal tragedy for their families and colleagues — they are a profound blow to the very core of our humanitarian mission and the principles we stand for. We condemn their killings in the clearest and strongest possible terms. The killing of humanitarian workers is an unacceptable violation of international humanitarian law. Our colleagues were not combatants — they were humanitarians. They should have been protected and granted safe and unhindered access to carry out lifesaving work without fear of harm.
We call for the immediate release of Assad Al Nasasra and the other members of the Palestine Red Crescent who remain in detention.
We emphasize the absolute and non-negotiable importance of the protection of humanitarian workers, especially our volunteers and staff, who risk their lives every day to bring assistance to those in crisis. They wear our emblems not as a symbol of affiliation or politics, but as a shield that should offer them protection.
We remind all the governments of their obligations under international humanitarian law. This law exists to protect civilians and those who serve them. Disregard of this law is a legal and moral failure that undermines the foundations of humanitarian action everywhere.
We demand accountability and justice — not only for the eight colleagues whose lives were taken so cruelly, but for all humanitarian workers who have died in the line of duty, saving others. Their memory must compel us to act, to speak, and to insist that such violence is never accepted, never ignored, and never repeated.
As Board members of the IFRC, we stand united in our call for justice, protection and respect for humanitarian workers everywhere.
An attack on one of us is an attack on all of us, and we will not stay silent.