株式会社イーディーピー
-デバイス開発用の大型化に成功-
1.はじめに
当社は大型のダイヤモンド単結晶を製作できることを主要な優位点としており、人工ダイヤモンド宝石(LGD:Laboratory Grown Diamond)製作用種結晶や基板、光学部品などに適用してきました。創業時には10x10mm単結晶が最大の形状でしたが、2025年2月13日に、30x30mmの世界最大級の大型ダイヤモンド単結晶基板を発売いたしました。
ダイヤモンドは優れた半導体特性を有しており、パワーデバイスや耐環境性デバイスとして利用されることが期待されています。このような半導体デバイスの量産には、他の半導体材料で使用されている2インチ(50mm)以上のウエハが、既存の装置技術を利用できることから、デバイスの品質安定性や、製作コストの低減に重要な役目を果たします。
当社は既にハーフインチ(直径12.5mm)の単結晶ウエハや、1インチのモザイクウエハの製品化を果たしております。しかし、ハーフインチからの拡大や、モザイクウエハの結晶粒界を無くすことについて、多くの関係者から要請を受けておりました。
2025年2月21日に公表いたしました2025年3月期第3四半期決算説明資料に記載しましたように、当社は2インチモザイクウエハ開発についてのロードマップを示し、開発した30x30mm以上の大型ダイヤモンド単結晶基板を利用する旨の方針を示しております。その製品化に先立ち、開発しました30x30mm以上の大型ダイヤモンド単結晶基板を利用して、ダイヤモンドデバイス開発を加速するために、当社はこの度ダイヤモンド1インチ(直径25mm)単結晶ウエハを発売いたします。
2.新たに発売するダイヤモンド1インチ単結晶ウエハ
添付写真に示した1インチウエハの仕様は、以下の通りです。
サイズ:25mmΦ (直径25mmの円盤状)
(厚さは0.05~1mmまでご要望により作製)
面方位:(100)面 3°程度のオフ角があります。
窒素含有量:8ppm以下
X線ロッキングカーブ半値幅:10~50arcsecの範囲(従来品以上の高品質)
3.新たに発売するダイヤモンド1インチ単結晶ウエハの用途について
ダイヤモンド1インチ単結晶ウエハの製品化は、ダイヤモンドデバイス開発を手掛けるユーザーから、量産を想定した試作において利用できるウエハの要求があり、開発いたしました。既に製品化しておりますハーフインチ(直径12.5mm)のウエハに比べ、使用できる面積が4倍に増加することから、ダイヤモンドデバイスの形状によっては大幅に製作するデバイス数が増加いたします。このことから多数個のダイヤモンドデバイスを同時製作する際の歩留や品質のばらつきなどを評価することが可能となり、実用デバイスの開発が加速されると考えられます。
半導体デバイスの製造においては、微細な構造を作りこむことが要求され、このために専用の装置を使用して、様々な工程を通して行きます。工程の中には円盤状のウエハを使うことが必須のものもあり、半導体材料ごとに様々なサイズのウエハが使用されています。現在は、2インチ(直径50mm)のウエハであれば、主要な工程のほぼ全てについて、ウエハを使って進めることができますが、ダイヤモンドの場合には2インチ(直径50㎜)ウエハの製作が出来ておりません。
ダイヤモンドにおいて実際の開発では、これまでは5x5mmや10x10mmといった正方形基板を使用した試作が行われてきました。しかし、工程によっては正方形の基板では、角があることが障害になる場合もあります。そのため、既に当社が販売しているハーフインチウエハ(直径12.5mm)を利用して開発を行う場合もあります。ハーフインチウエハは面積が小さく、製作できるデバイス数は限定されます。大型のデバイスの場合はウエハの縁との位置関係から、製作できるデバイス数は一層限定されます。
この様な状況から、ハーフインチより大きいサイズのウエハが要求されています。当社は2025年2月13日に公表した30x30mmの大型ダイヤモンド単結晶基板の開発に成功し、これを利用してデバイス製作に適したウエハの開発を行ってきました。ダイヤモンドデバイス開発を一層活発化するために、ダイヤモンド1インチ単結晶ウエハを製品化いたしました。
ダイヤモンド1インチ単結晶ウエハはハーフインチウエハの4倍の面積を持っています。デバイスサイズが5x5mmといった比較的大きなデバイスの場合では、ハーフインチでは2個しか製作できないのに対し、ダイヤモンド1インチ単結晶ウエハでは10個製作することが可能です。従って、デバイス製作の課題となるチップのロット間のばらつきや、製作歩留等の評価を行いやすいと言えます。また、ハーフインチウエハでは製作できない10x10mm以上の大型デバイスも製作でき、広い範囲の開発に貢献できると考えられます。
ダイヤモンドの大型ウエハは、半導体デバイスだけでなくデバイスからの熱を除去するためのヒートシンクや、放射線等の各種センサー、表面弾性波フィルター(電波の周波数を選択する部品)等の製作についても、大面積ウエハを使用して製作できることのメリットは大きいと考えられます。このようにダイヤモンドの持つ複数の物性の優位性を利用するために、ダイヤモンド1インチ単結晶ウエハは、2インチ単結晶ウエハ製品化までの開発用に、広くご使用いただけると考えております。
4.今後の開発について
2025年2月13日に公表いたしました、30x30mmの大型ダイヤモンド単結晶基板の製品化によって、当社はこの大型ダイヤモンド単結晶基板を1インチウエハに使用するだけでなく、これを4個接続して、50x50mm以上のサイズとなるモザイク結晶を開発する計画です。この大面積モザイク結晶から2インチ(直径50mm)モザイクウエハを製作する計画です。
2025年2月21日に公表しました2025年3月期第3四半期決算説明資料にて示しましたように、当社は2インチ(直径50mm)モザイクウエハ開発についてのロードマップのとおり、2025年12月末を発売時期の目標として開発を進めてまいります。
2インチウエハの製品化ができれば、実際に半導体製造プロセスにおけるほとんどの工程で使用することが可能となります。その実現のために単結晶サイズをさらに大型化することに注力し、50x50mm以上の単結晶の開発を目指します。この単結晶の開発には今後2~3年を要すると予測しておりますが、これが完成すれば、ダイヤモンド単結晶の2インチウエハの製品化が可能となります。
さらに50x50mm以上の単結晶が開発できれば、それを4個接続することによって4インチモザイクウエハ(直径100mm)が実現できます。現在の半導体製造プロセスの状況を鑑みますと、ダイヤモンドデバイスの本格的な量産には、この4インチモザイクウエハが必須の素材と考えられます。当社はその実現を目指して、これまで以上に開発のスピードを上げてまいります。
写真:ダイヤモンド1インチ単結晶ウエハ(25Φx0.3mm)
