雲ノ平山荘
本州最大の山岳地帯・北アルプスの雲ノ平で滞在制作を行った14人のアーティストたちの視点を通して、「自然とは何か」という問いを深めていくプロジェクト。各種イベントや今年の滞在制作アーティストの募集も実施
北アルプスの山小屋・雲ノ平山荘は2025年5月9日(金)―6月30日(月)の会期で雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラム展覧会【Diffusion of Nature 2025 距離のゆらぎ】を開催します。
雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラムは「アートを通じて社会と自然環境の調和をデザインする試み」として、2020年からスタートしました。各地で活動するアーティストたちが北アルプスの最奥地にある雲ノ平山荘に滞在し、それぞれに内在する「自然」を描き出します。
これまでの5年間で、絵画、写真、彫刻、音楽、詩作、ダンス、バイオアート、講談、アニメーション、漫画などの多分野にわたる計32名のアーティストを迎え、多彩な活動が展開されました。
本展覧会はプログラム参加アーティストの作品と制作過程を紹介するとともに、アーティストたちの表現を都市の環境下で再現することを通して、さまざまな視点を巻き込みながら「自然とは何か」という問いを深めることを企画しています。
これまでに2回開催した成果展【Diffusion of Nature2022 「自然」をめぐる視点】、【Diffusion of Nature2023 土と夢】では、アーティストたちの見出した「自然」が鮮明なインパクトとして私たちの前に現わされました。
来たる5月9日(金)よりスタートする第3回展覧会【Diffusion of Nature 2025 距離のゆらぎ】では、前回に続きメイン会場となるGASBON METABOLISMにおいて2023年、2024年の参加アーティストによる展示が行われる他、別会場では歴代アーティストの有志たちがサテライト展示を行います。
雲ノ平という環境を共通体験として持ち寄りながらも、アーティスト毎の活動分野やメディア、視点や感覚の違いにより、多様な姿で表出される作品群は、会場に新たな「雲ノ平」の生態系を醸成します。
5月10日(土)には展覧会スタートを記念してオープニングイベントを開催します。
総勢14名の作品が並ぶ広大な空間の中で建築家・塚本由晴さんをゲストに迎えたトークイベント、2024年滞在アーティストのラッパー・KZ、アンビエントミュージシャン・HIROSHI WATANABEによる音楽ライブや講談師・田辺一記による山岳名著「黒部の山賊」を題材とする講談など、多彩な表現を通してDIffusion of Natureの世界観を掘り下げる他、敷地内の万珍醸造にてDJ Partyも行います。
その他、展覧会期中にアーティストトークやゲストトーク、ライブパフォーマンス等のイベントを企画しています。最新情報は公式WEBサイトやSNSで随時お知らせいたします。

■5/10 オープニングイベント詳細
11:00 開場
12:30~ オープニングトーク
13:00~13:30 Live – KZ
13:40~14:10 講談 – 田辺一記
14:20~16:20 トークイベント
塚本由晴(建築家)
今宿未悠(詩人, 出展アーティスト)
伊藤二朗(雲ノ平山荘代表)
16:40~17:00 Live – KZ
17:00~18:15 Ambient Live – HIROSHI WATANABE
18:15~20:00 DJ Party at 万珍醸造
参加費:無料(ドネーション制 別途展覧会入場時book代500円)
アクセス:車でお越しの方 中央自動車道須玉ICから車で6分、会場に駐車スペース有。
電車でお越しの方 JR韮崎駅から会場までマイクロバスを運行

■展覧会 開催概要
展覧会名:雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラム展覧会
「Diffusion of Nature 2025 距離のゆらぎ」
日時:2025年 5月9日(金) – 6月30日(月) 11:00 – 17:00
※火曜・水曜・木曜 休館
入場:¥500(book代)
主催:合同会社雲ノ平山荘
共催:GAS AS INTERFACE Co., LTD.
■参加アーティスト
伊藤大悟(木炭画)
瀧本泰士(日本画)
柏木崇吾(立体/インスタレーション)
桐月沙樹(木版画)
後藤那月(彫刻/インスタレーション)
KZ(ラップ)
後藤宙(美術)
太田桃香(絵画)
今宿未悠(詩・パフォーマンスアート)
大熊一弘(絵画・映像)
秋本寛太(建築)
田辺一記(講談)
HIROSHI WATANABE(映像・音・ライブパフォーマンス)
小林茂太(写真)


伊藤大悟(木炭画)

瀧本泰士(日本画)

柏木崇吾(立体/インスタレーション)

桐月沙樹(木版画)

後藤那月(彫刻/インスタレーション)

KZ(ラップ)
5月10日イベント出演

後藤宙(美術)

太田桃香(絵画)

今宿未悠(詩・パフォーマンスアート)
5月10日イベント出演

大熊一弘(絵画・映像)

秋本寛太(建築)

田辺一記(講談)
5月10日イベント出演

HIROSHI WATANABE(映像・音・ライブパフォーマンス)
5月10日イベント出演

小林茂太(写真)

【展覧会ウェブサイト】
https://kumonodaira.com/artist/exhibition-2025
【展覧会PV】
https://www.youtube.com/watch?v=sAFXQSSyxmo
【展覧会『Diffusion of Nature 2023 土と夢』 アーカイブページ】
https://kumonodaira.com/artist/exhibition-archive-2023/
【展覧会『Diffusion of Nature 2022 「自然」をめぐる視点』 アーカイブページ】
https://kumonodaira.com/artist/exhibition-archive-2022/
【雲ノ平山荘ホームページ】
【SNS】
Instagram: @kumonodairasanso
https://www.instagram.com/kumonodairasanso/?hl=ja
X : @kumonodairahut
https://x.com/kumonodairahut?lang=ja
【お問い合わせ】
雲ノ平山荘事務所
MAIL: kumonodaira@kumonodaira.net
TEL : 050-8882-5954
■ステートメント
この度、2年ぶりとなる雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラム(以下AIR)の成果展【Diffusion of Nature 2025 距離のゆらぎ】を開催します。
本プロジェクトでは、本州最大の山岳地帯・北アルプスの奥地にある雲ノ平において滞在制作を行った14人のアーティストたちの視点を通して、私たちにとって「自然」とは何か、という問いを深めていきます。
環境危機が叫ばれる今、私たちは予測不能な破局をもたらす存在としての「自然」を恐れつつ、同時に、高度に機械化された社会のなかで親しみのある存在としての「自然」を探し求めています。「自然」を巡っては、時代や地域、個人ごとに記憶、利害、価値観の物語が複雑に絡み合い、それに向かう態度は常に揺れ動きます。私たちにとって「自然」とは何なのでしょうか。
この問いをさらに深めるために、本展では「距離」という言葉を取り上げます。
平和、権利、自由、協調、多様性、多くの概念は、意識されることのなかった「あるべきバランス」が崩れたとき、はじめて生まれてきました。私たちの思考を加速させるのは、常に未知数としての「あるべきバランス」と「現実」の間に横たわる距離なのではないか。そして、表現活動とは、この距離を縮めようとする営みの一環であるということができるかもしれない。そのようなイメージから、展覧会タイトルを「距離のゆらぎ」と銘打ちました。
「自然」もまた、「あるべきバランス」と現実の距離が生み出した概念のひとつです。
「自然」という言葉が現代的な意味を持ち始めたのは、18世紀後半の産業革命以降です。自ら生み出した技術やシステムにより、生活環境が急激に変容する中で、人々は新たな緊張感を持って「自然」について考察を始めました。古い文化や景観などの共通価値の喪失、都市の人口過密化による公害や感染症の蔓延、資源の枯渇、相次ぐ戦争など、繁栄と混乱が交錯し、大きな利便性と引き換えに安定した生活モデルも失われ続ける時代。「人間」に対する不安の背後に、懐かしい友であり、絶対的な支配者であり、生活の手段でもある「自然」の多義性を透かし見るようになります。「自然」は実体のある対象ではなく、自分達と環境の相互作用として成り立つ世界を考察するための方程式の中の、xやyのような未知数として醸成された概念だと言えるかもしれません。
また、地質学の研究では、これまでに地球上では何らかの環境変化によって幾度となく大量絶滅が発生し、そのたびに生態系のバランスが覆されたことが指摘されています。その際、恐竜を絶滅させて哺乳類の台頭を促した隕石も「自然」だとすると、「自然」は「制御できないもの」として捉えることで、ようやく考察可能な概念になるようにも思われます。人新世といわれる今、最も制御できない「自然」は私たち人間自身なのかもしれません。
山奥にひっそりとひらける不思議な庭園のような佇まいから、かつては「最後の秘境」と呼ばれた雲ノ平でも、近年は急激な温暖化による積雪期の短縮の影響を受け、生態系が大きく変化しつつあります。氷河期の生き残りの植物相である高山植物の生息圏は、それらの生み出す景観と共に徐々に失われ、やがては暗い樹林帯に飲み込まれる未来も現実味を帯びてきました。しかし、それもまた「自然」のいち断面にすぎません。
「自然」という言葉が溢れる今、私たちは「自然」を通していかなる距離を克服しようとしているのでしょうか。
本展では雲ノ平という土地に遭遇したアーティストたちが、内面化された感触と概念の間でゆらぐ「自然」を音、言葉、造形、色彩、身体、空間などとして表すことを通じて、私たち自身を内包した「自然」の姿を描き出します。
彼らの視点が、「自然」をめぐる問いの座標となり、混沌とした世界で喜びを持って歩むための道しるべになることを願っています。
雲ノ平山荘 伊藤二朗
■2025年『雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラム』参加者の募集開始
2025年のAIR参加アーティストを募集しています。応募締切は5月31日まで。詳細は以下をご覧ください。
【募集ページ】https://kumonodaira.com/artist/2025-air/

本プログラムは「アートを通じて社会と自然環境の調和をデザインする試み」として、2020年にスタートしました。通常ならば長期滞在することが困難な北アルプスの最奥地にある雲ノ平山荘でアーティストたちが生活し、日常から遠く離れた環境下で「自然」をめぐる表現を探求します。
資源の枯渇や環境危機などに揺れる現代社会において、私たちは「自然」に何を見出そうとしているのか、多様なアーティストたちの視点を通して思索を深めます。
これまでの5年間で、絵画、写真、彫刻、音楽、詩作、ダンス、バイオアート、講談、アニメーション、漫画などの多分野にわたる計32名のアーティストを迎え、多彩な活動が展開されました。自分で現地まで歩く能力は必要ですが、生活面は全て雲ノ平山荘がサポートしています。
【雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラム】
https://kumonodaira.com/artist/

【活動の様子】
2024年:https://kumonodaira.com/artist/2024-air/gallery/
2023年:https://kumonodaira.com/artist/2023-air/gallery/
2022年:https://kumonodaira.com/artist/2022-air/gallery/
2021年:https://kumonodaira.com/artist/2021-air/gallery/
2020年:https://kumonodaira.com/artist/2020-air/gallery/

雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラム2025

雲ノ平の風景

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