ダイキン工業株式会社
20歳以上男女のおよそ3人に2人にのぼる「熱あたり」の規模は、国民病・スギ花粉症を上回る!?
ダイキン工業株式会社は、全国47都道府県に住む20歳以上の男女14,100人を対象に、夏の暑さが人々の健康的な暮らしに与える影響を探る「夏場の熱による体調不良に関する全国調査」を実施しました。
人は体内で生み出した「熱」を使って体温を維持し、過剰な「熱」を体の外へ逃がしながら暮らしています。こうした体の仕組みは健康的な暮らしにおいて大切で、「熱」を逃がしづらい暑さの中では体に溜まった「熱」にあたって、人は様々な体調不良を引き起こすことがあります。これらは、広く知られている熱中症に至る前から現れ、私たちの暮らしに影響を与えています。また、近年の気温上昇を背景に、「熱」による不調を感じる人が増加傾向にあるとも言われています。
こうした中、当社は、「熱」と人体に関連する専門家の意見も踏まえ、「熱」による身体的な不調全般を「熱あたり※1」と定義し、熱中症だけではない「熱あたり」の実態について、全国調査を行いました。その結果、全国の20歳以上のおおよそ3人に2人にあたる64.6%が、2024年の夏に日頃のパフォーマンスの低下や熱中症の発症など、何らかの「熱あたり」を経験した可能性があることが分かりました。これは、3人に1人※2ともいわれる国民病・スギ花粉症を上回る割合で、医療機関での診断などを通じて顕在化している熱中症患者は「氷山の一角」であることを示唆しています。

本調査を監修いただいた済生会横浜市東部病院 患者支援センター長の谷口英喜先生は、「これほど多くの人が熱あたりを経験していた可能性があることには驚き」とコメントしています。今回の調査結果を通じて、一人ひとりが体に溜まる熱を「自身も意識すべき夏の問題」と捉え、より多くの人が「熱あたり」の対策に取り組むひとつのきっかけとなることを期待しています。
本調査の主な結果は以下の通りです。

1. 2024年夏、「熱あたり」 の症状を経験した人は64.6%
今回、熱中症と診断されるような症状から軽い不調までを含めた「熱あたり」の症状を感じた経験がある人を調査したところ、2024年の7月から8月の間に、全国20歳以上男女のうち、おおよそ3人に2人にあたる64.6%が「熱あたり」の状態を経験した可能性があることが明らかとなりました。
「熱あたり」の症状を感じた人のうち、最も多くを占めたのは熱中症に該当するような自覚症状があったが病院には行かなかった人で、次いで多かったのが日頃のパフォーマンス低下につながるような軽い不調を感じている人でした。病院に行って熱中症と診断された人はごく少数で、医療機関での診断などを通じて従来から明らかにされてきた熱中症患者の規模は、「熱あたり」のうちの「氷山の一角」であることがうかがえます。
こうした結果から、熱中症患者として顕在化している規模以上に多くの人が、夏場に熱による体調不良を感じたり、日頃のパフォーマンスが低下したりしている可能性があることが浮き彫りとなりました。こうした症状にならないためにも、熱が体に与える影響を知り、対策に取り組むことが大切だと言えそうです。

2. 「熱あたり」 は世代を超えた夏の共通課題
一般的に高齢者は熱中症になりやすいと言われていますが、「熱」による身体的な不調全般を「熱あたり」として捉えなおした場合でも同様なのかを調査しました。その結果、世代による大きな差は見られませんでした。「熱あたり」症状経験者は全世代で6割を超えており、「熱あたり」は、老いも若きも世代を超えた夏の共通課題と言えそうです。

3. 「熱あたり」 症状のTOP3は「睡眠の質の低下」、「疲れがとれない」、「倦怠感」
「熱あたり」症状経験者が感じた体の不調を調査したところ、最も多かったのは「睡眠の質の低下」で(51.4%)でした。次いで「疲れがとれない」(46.0%)、「倦怠感」(30.8%)が続く結果となりました。
寝た気がしなかったり疲れが取れなかったりするのは軽い「熱あたり」症状で、体が熱を逃がし続けることによる自律神経の疲労などで起こると言われています。熱中症と診断されるほどではありませんが、仕事や勉強、スポーツなどのパフォーマンス低下につながります。また、最初は軽い症状でも、そのままにしていると症状が進行してしまうこともあります。
こうした比較的軽い症状以外にも、「足がつる」、「集中力や判断力の低下」、「大量の発汗」、「頭痛」などの症状が挙げられています。これらは病院に行けば熱中症と診断される可能性のある症状です。今回の調査では比較的軽い症状が上位に挙げられていますが油断は禁物です。できるだけ涼しい環境で過ごすなど、体に熱が溜まらないように心がけることが大切です。

4. 「熱あたり」症状経験者の6割以上が自身のパフォーマンス低下を実感
「熱あたり」の症状は、熱中症に該当するようなものから、「寝た気がしない」「疲れが取れない」「食欲がわかない」といった比較的軽いものまで様々です。こうした症状は、身体的なつらさはもちろんですが、日頃のパフォーマンス低下にもつながります。今回、病院で熱中症と診断された人を除いた「熱あたり」症状経験者が、どの程度のパフォーマンス低下を感じたかを調査しました。その結果、「そこそこ低下した」と感じた人が約半数(48.6%)を占め、2割弱の人は「かなり低下した」(14.2%)や「大幅に低下した」(3.8%)と感じていたことが分かりました。
東南アジアで最も発展した国の一つであるシンガポールの建国の父、故リー・クアンユー元首相は「この100年で最も影響力のある発明はエアコン。シンガポールの発展はエアコンなしにありえない」と語っています。暑すぎて仕事に集中できない環境の中、公務員が働くビルでいちはやくエアコンを導入し、人々の生産性を上げ、効率的な政府を作り上げたそうです。こうした逸話も踏まえながら今回の調査結果を見ると、「熱」は、個人のパフォーマンスから社会の発展まで、幅広く影響することがうかがえます。

5. 体の熱を逃がしやすい体をつくる「暑熱順化」の認知率は約3割
「熱あたり」対策には、体の熱を逃がしやすくすることが大切です。できるだけ涼しい環境で過ごすことはもちろんですが、暑くなる前の1~2週間ほど、ウォーキングやジョギング、筋トレやストレッチ、入浴などを継続して汗をかきやすい体をつくる「暑熱順化」に取り組むことも効果的です。
「暑熱順化」の認知率を調べたところ、今回の調査では「意味までよく知っている」は1割以下(7.7%)で、「聞いたことがあるが詳しくは知らない」まで含めても約3割(31.1%)に留まり、あまり認知されていないことがうかがえる結果となりました。夏を迎える前の準備として、涼しい環境をつくるためにエアコンが使えることを確認する「エアコンの試運転」が大切ですが、自身の体も汗をかけるように準備しておくことが大切です。

6. 「熱あたり」症状経験者の割合に、最も高い県と最も低い県で大差なし
今回の調査で得られた回答をもとに、「熱あたり」症状経験者の割合を全国47都道府県ごとに算出しました。最も割合が高かったのは大分県で、次に福島県と広島県が同率で続く結果となりました。最も割合が低かったのは、同率で青森県、静岡県、滋賀県でした。
一方、各都道府県の「熱あたり」症状経験者の割合の差に着目すると、最も高い県(71.0%)と最も低い県(60.3%)の差は10.7ptということが分かります。どの都道府県でも60%を超え、それぞれが僅差という状況です。こうした結果から、「熱あたり」に大きな地域差はなく、自身も意識すべき熱の問題と捉えた方がよさそうです。

【調査監修者コメント】
「夏場の熱による体調不良に関する全国調査」 を監修いただいた谷口英喜先生に、調査結果について伺いました。
Q :「熱あたり」 症状経験者が64.6%(およそ3人に2人)という結果についてどう評価されますか?
これほど多くの人が「熱あたり」を経験している可能性があることには驚きました。今回は2024年の夏に絞った調査でしたが、複数年で考えると国民のほとんどが「熱あたり」を経験しているといってもおかしくない結果といえます。もうひとつ驚いたことは、「熱あたり」症状経験者に世代差がなかった点です。つまり、どの世代も「熱あたり」のリスクがあるということになります。高齢者だけでなく、健康に自信がある若い世代も「熱あたり」には注意が必要と言えるでしょう。
Q :「熱あたり」 がもたらす社会的な影響について教えてください。
「熱あたり」は、日常の様々な場面でのパフォーマンス低下にもつながります。仕事や勉強の場面では、集中力が低下したり効率が下がったりすることで、小さなミスが増えている可能性があります。スポーツの場面では、記録が落ちてしまうということなども考えられます。個人の体調やパフォーマンスを超えて、社会全体で考えれば、大きな経済的損失につながっている可能性もあります。
Q :「熱あたり」 対策として私たちができることは何ですか?
夏前のまだ暑くなっていない時期なら、暑さに体を慣れさせる「暑熱順化」に取り組むとよいでしょう。以前は、季節がゆるやかに移り変わる中で自然に体が順化していきましたが、春が短くなってきた最近では、急に暑くなる傾向が続いています。これからの時代は、意識的に暑熱順化に取り組む必要があるものと考えてください。
暑くなってからの対策は、できる限り暑さ(熱)を避けることです。そこで欠かせないのがエアコンです。エアコンを使うことを中心に、扇風機を使ったり通気性のある服を着たりするなど、できることをいろいろ組み合わせた「合わせ技」で「熱あたり」対策に取り組み、暑い夏を乗り切りましょう。
谷口英喜 先生
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長

1991年福島県立医科大学医学部卒業。横浜市立大学医学部附属病院にて臨床研修を開始。その後、麻酔科に所属し、救命救急センターや集中治療部にて経験を積む。2001年に神奈川県立がんセンター麻酔科医長に就任。2009年より神奈川県立保健福祉大学にて准教授として教育・研究に従事し、2011年には教授に昇任。2016年には現職の済生会横浜市東部病院の患者支援センター長および栄養部部長に就任し、東京医療保健大学大学院の客員教授としても活動。2019年慶應義塾大学麻酔科学教室の非常勤講師を務める。2020年からは済生会横浜市東部病院の医師支援室室長として医師のタスクシェア推進にも尽力している。脱水症・熱中症・周術期管理の専門家として、テレビ・ラジオなどを中心に多数出演(2024年9月末で累計350本以上出演)。その他、雑誌やWEBなど、様々な媒体で多くの解説記事を掲載。『いのちを守る水分補給: 熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社/2023)、『熱中症からいのちを守る』(評言社/2024)など著書多数。2023年から、医療従事者の生涯教育サイト『谷口ゼミ』( https://taniguchi-seminar.com/ )を開塾。現役の麻酔科医師であり、各種専門医を取得、医学博士。
【調査概要】

【参考】
WEBコンテンツ 「みんなで熱あたりしない夏」
WEBコンテンツ「みんなで熱あたりしない夏」は、「熱」と人体に関する幅広い分野の有識者の協力を得ながら、「熱あたり」のしくみや対策について分かりやすく紹介しています。
