株式会社ミンテルジャパン
~地産地消商品の入手性向上で、消費者の4割が「もっと買いたい」と回答~
市場調査会社「Mintel Group」の日本法人である株式会社ミンテルジャパン(東京都千代田区)は、6月の食育月間にあたり、ミンテルジャパンレポート「フードローカリズムのトレンド 日本 2025」にて、日本の食料自給率の危機的状況と地産地消に関する消費者心理を明らかにしました。
※ミンテル:ロンドン本社を含め13か国にオフィスを構え、美容やライフスタイル、食品・飲料分野における消費者調査に強みを持つ市場調査会社。2021年より日本市場向けにミンテルジャパンレポートを発刊。

コロナ禍を経て世界的に地元との絆が強まり、主要6か国(アメリカ、イギリス、日本、ドイツ、フランス、中国)のうち、日本を除く5か国で消費者の50%以上が地元ブランドを優先して購入していますが、日本では近年割合が増加しているとはいえ35%と低い数値となっています。一方で、日本における持続可能な生息地・資源を訴求する新商品は4年で2倍以上に増加しており、市場の意識変化が見られます。
ミンテルの調査によると、日本において、地産地消の食品を選ぶ消費者の動機の上位に「地域経済の活性化」があり、この背景には、地域経済や地域コミュニティとの強い絆との関連性があると思われます。また、調査では5人に2人(約40%)が「入手が簡単になれば地元商品を購入する」と回答しており、地産地消市場の拡大には消費者の入手利便性の向上が鍵となることが明らかになりました。日本の食料自給率の危機的な低さと、それに対する消費者の地元食材への期待、そして地産地消の新たな原動力となる可能性について探ります。

※本リリースの調査結果をご利用いただく際には、必ず【ミンテルジャパンレポート『食のローカリズム・トレンド(地産地消)– 日本 – 2025年』より】とご明記ください。
ミンテルジャパンレポートについて詳しくはこちら:https://www.mintel.com/jp/jr-may-2025-1
ポストコロナ時代のローカル消費革命
主要国の多くは地元ブランドを優先購入、コミュニティとの絆が深まる新トレンド
2020年に人々は、コロナ禍でロックダウンを経験し、自宅や地元に閉じ込められることになりました。外食や店舗での買い物をする人が減り、経済的に困難に直面している地元の商店を、テイクアウトやデリバリーで支援しました。また、自らの移動や食料の調達の際にコミュニティに助けられたり、逆に助けたりすることより、消費者は自分を取り巻くローカルコミュニティの重要性に気づかされたはずです。
ミンテルの調査によると2021年4月の調査では、イギリスの消費者の20%がローカルコミュニティの重要度が増したとしています。また、家族や友人の重要度も高まっており、50%の消費者が家族や友人と連絡を取ることの重要性が増したとしています。
調査対象: 英国:16歳以上のインターネットユーザー1,000人
出典: Mintel、2021年4月
ヨーロッパ4か国での消費者調査で、国産の飲料・食品の購入理由を聞いた質問では、「国の雇用をサポートする」が4か国すべてで50%を超え、フランス・イタリア・スペインでは、1位となっています。
環境へのやさしさ・品質も理由ではありますが、ローカル(国産)食品購入の背景には、ローカルの経済をサポートしたいという理由が大きくなっています。

調査対象: 前月に自国の商品を買った16歳以上のインターネットユーザー(フランス720人;ドイツ1,525人;イタリア683人;スペイン760人)
出典: Mintel、2021年3月
ミンテルの行なった別の消費者調査によると、地元のブランドを優先する比率は2023年から上昇しており、「非常にそう思う」と「まあそう思う」の合計の比率で、主要国6か国中、日本を除く5か国で50%を超えています。日本でも数値は増加しており、2024年9月には35%に達しています。
下記のデータは、食品に限らずすべての買い物に対する調査ですが、食品のみに限ったデータとしては、カナダの農業・農産食料省が実施した調査で、86%が地元で生産された食料を求めており、そのうち97%が実際に購入しているという結果も出ています。食品における地元意識の高まりがわかります。
なお、カナダでは、「地元(local)」という言葉を「州(province)」ととらえる人が42%、市(city)や町(town)ととらえる人が17%となっており、合計すると、60%近くが、国レベルより狭い地域を想定しています。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー1,000人(米国、中国、日本);16歳以上のインターネットユーザー1,000人(英国、ドイツ、フランス)
出典:Mintel(2023年9月;2024年3月;2024年9月)
食料自給率の低さが招く日本の長距離輸送依存
持続可能な食資源を訴求する商品が4年で2倍超に急増、食料自給率危機からの脱却に光
日本の食料自給率は、2023年に、生産額ベースで61%、カロリーベースで38%となっており、低位で推移している状況です。カロリーベースが生産額ベースより低くなる理由としては、自給率が高いコメの消費が低迷し、輸入比率が高い小麦の消費が増えたこと、野菜や果物などのカロリーが低く、価格が高い食品の消費が多いことなどが影響しています。
他国の自給率は、カロリーベースで、アメリカが104%、ドイツが83%、イギリスが58%と日本より高くなっており、日本の食料事情の脆弱さが見えます。

出典: 農林水産省
その影響で、各国のフードマイレージ*を比較すると、総数で日本が極めて長くなっています。一人当たりに換算しても、欧米諸国の倍以上となっています。輸送手段を考慮していないため、これが直接的にCO2の消費を意味するものではありませんが、日本が食料を大量に長距離輸送していることが示されています。
* フードマイレージ:食品が生産された地点から消費者に届くまでに移動する距離のことを意味する。
一般的に、このフードマイレージが長くなると、輸送に必要なエネルギーが増加し、温室効果ガスの排出も増えると言われる。

さらに日本の農業人口を経営体数別にみると、個人経営体が大きく減少しており、2020年は約100万経営体と2005年の52%まで減少しています。一方、法人化されている法人経営体は増加しており、2020年の2005年比は161%となっています。法人が増えて効率化はやや進んでいると思われますが、個人経営体の大幅な減少は、日本の食料自給力に影響を与えており、高齢化が今後進んでいくことも考えると、日本の農業の将来が懸念されます。

出典: 農林業センサス
一方でブランド側の地産地消への対応もより多面化しつつあります。日本における新商品で、「持続可能な生息地/資源」を訴求する商品の構成比は急速な伸びを見せており、2024年には2020年の2倍を超えるレベルになっています。

* 12月1日から12か月間。他の年についても同様
出典: Mintel GNPD(世界新商品データベース) 2015年12月- 2024年11月
「ピュアポテト オホーツクの塩と岩塩」は、100%国産のじゃがいもを使用するだけではなく、売り上げの一部を北海道南富良野町に寄付するとしています。メーカーの湖池屋は、生産工場のある南富良野町にて森林保全活動を実施しており、その間伐材でコースターの作成等もしています。

地域の活性化を求める地産地消マーケット
消費者の4割が「アクセス改善」で購入意欲、地元経済支援が最大の購買理由に
ミンテルが実施した消費者調査によると、食品購入時の重視点の順位では、「量と質」「おいしさ」という経済性や味が上位に来ており、次いで安全性が来る順番です。生産地や地元産など地産地消に関係する項目は、これらに次ぐ位置にあります。インフレーションの影響もあり価格が上位に来ていること、食品の前提としての品質・味、そして、身体に取り入れるものであるゆえの安全性などと比べると、地産地消関連は、相対的には低い順位です。ただ、逆にとらえると、これらの食品に必須である項目に次いで高いとみなすこともできます。
生産地情報と地元産かどうかという点では、生産地の方が質問の食料品すべてで高くなっており、消費者が、国産・外国産も含め、生産地情報を先に確認していることがわかります。スーパーマーケット白書によれば、野菜の購入時に41.7%が国産であることを選択のポイントにしています。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー 2,000人
出典: Mintel、2024年11月
そして、地産地消に期待される社会的効果・貢献としては、食料品としての特徴である鮮度・品質・価格に次いで、地域経済の活性化が挙げられており、健康や環境よりも高くなっています。消費者は、自分・家族や地球よりも、地元を経済的に応援する気持ちが強いとも言えます。
特に、地産地消商品の購入経験者に絞ってみると、地域経済の活性化は、品質・価格を上回って、鮮度に次ぐ2位になっています。また、地元を応援することによる達成感も大きく増加しており、地域経済との強い絆を期待していることがわかります。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人
出典: Mintel、2024年11月
地産地消について、特に生鮮食料品の地元商品は、道の駅や直売場で売られているケースが多いですが、それ以外の場所での入手しやすさを求める人は41%と高く見られます。また、地産地消商品の判断の難しさを感じている人も16%います。地産地消商品の購入経験のある人に限ると、50%が「もっと入手しやすくなればもっと購入する」としており、また大手ブランドの後押しを期待する比率も21%に上がります。
大手ブランドが、購入機会を広げ、分かりやすい商品を作ることへの潜在需要は高いと思われます。大手ブランドは、地産地消の中心となる担い手としてはあまり期待されていません。しかし、その状況の中での積極的な活動は、企業イメージを上げるのに大きく貢献します。地産地消商品の購入経験者では、33%が「自分の地元かどうかにかかわらず地産地消に取り組んでいる企業やブランドには好意を持つ」としています。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人
出典: Mintel、2024年11月
ビジネスチャンス
地産地消をメインにした訴求を、環境訴求と区別する
地産地消の側面の一つとして、環境にやさしいことがあることは、ここまでに述べてきました。一方消費者は、地産地消の貢献として、環境より地元経済への活性化を期待しているというデータも紹介しました。
SDGsや環境問題に意識が高い人と、地産地消の貢献として、地域の文化やアイデンティティを守ることにつながることを期待する人の重なりは少なく、SDGs意識層の15%が地域文化を期待しているに過ぎません。彼らは違う消費者です。
これを考慮すれば、地域との絆を重視する地産地消層に確実にアプローチするためにも、環境訴求とは区別したメッセージが有効であることがわかります。もちろん環境やオーガニックも訴求しつつ、何をメインとして明確に訴求するのかと言えば、「地元」なのです。
地域での雇用を訴求するパスタ
Organic Pasta Pearls はパッケージで、環境に配慮したオーガニック農業であること、60人のフランス人農家に適正な報酬と3年間の雇用を保証していることを説明しています(フランス)。
画像出典:ミンテル世界新商品データベース(Mintel GNPD)

■ミンテル ジャパンレポートについて
新製品開発のヒントになるグローバルトレンドと日本におけるその意味について理解を促し、日本市場における商機を探るレポートシリーズ。「美容・化粧品」、「ライフスタイル」、「食品・飲料」分野のレポートをサブスクリプション方式でご提供しています。グローバルと日本、双方の視点でトレンドを捉えることが可能です。
■ミンテル 世界新商品データベース(Mintel GNPD)について
世界86ヵ国の日用消費財の新商品を、原料や訴求内容から検索することができるデータベースです。世界各国に配置されたミンテルの調査員が、日々新商品の収集を行うことで、毎月約4万点の商品パッケージ情報をデータベース化し、GNPDを構築しています。商品のあらゆる情報を掲載しているため、様々な視点から世界の製品トレンド分析を行うことが可能です。
■市場調査会社ミンテルの強み
ミンテルに在籍する各分野の専門家であるアナリストは、 ミンテルグローバル消費者調査のデータや各国で独自に行う消費者調査、外部データなどを組み合わせて、消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測を行い、レポートを執筆しています。ミンテルは常に「消費者」に焦点を当て各サービスを展開しており、「消費者が何をなぜ求めているかを探るエキスパート(Experts in what consumers want and why.)」をコーポレートスローガンとしています。
■株式会社Mintel Japan(ミンテルジャパン)
ミンテルジャパンは、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel Group」の日本法人です。専門分野のアナリストと新商品の調査員を世界各国に配置し、独自の消費者調査や新商品情報の収集を行っております。
その独自のデータを基にした消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測に強みがあります。日本では主に「美容・化粧品」「食品・飲料」「ライフスタイル」の3分野に注力し、サービスを展開しています。
≪ご利用条件≫
情報の出典元として【ミンテルジャパンレポート『食のローカリズム・トレンド(地産地消)– 日本 – 2025年』より】の明記をお願いいたします。
■会社概要
企業名 :株式会社ミンテルジャパン
本社所在地 :東京都千代田区丸の内二丁目4番1号
丸の内ビルディング18階
代表 :リチャード・カー
設立日 :2008年03月
事業概要 :トレンドレポートの販売、市場調査、市場分析等
WEBサイト:https://japan.mintel.com/
