一般社団法人ツーリズムみはま
三重県御浜町は、町の主産業の一つである「みかん農業」を持続可能なものとするため、その原動力となる農業後継者育成強化に取り組んでいます。2022年3月に町のプロモーションサイト「青を編む」を立ち上げ、YouTube・Xなどを絡めた情報発信に力を入れると共に、新規就農希望者の受け入れ・サポート態勢を強化しています。
「みかん、やったらええやん」と言い合える町を目指す このプロジェクトは、開始後すぐに反響があり、それまで年にたった数件の問い合わせが急増し、24年度には45件/年まで増加しました。「みかん農家になりたい」と志し、名古屋・兵庫・神奈川・東京など主に都市部から三重県御浜町へ移住する方が増え、さらに地元・近隣地域からも就農を希望する方が増加しています。
23年度(=1期生)〜24年度の2年間で20名の研修生を受け入れ、25年8月までに17名が経営開始(新規就農)します。御浜町では、1期生が独立した2024年4月から、10年後の2033年4月に、新規就農者数が計100名となることを目指しています。
一方、新規就農希望者の増加に伴い、農地確保などの課題も出てきており、受け入れ・サポート体制のさらなる強化・課題解決に取り組む必要性が出てきています。

◆農家数7割減から一転、就農希望者が急増。新たな課題に取り組む
三重県御浜町における農家人口は、最盛期から7割以上減(1995年3,485人から2020年795人)となっています。また、現在担い手の平均年齢は70代以上が5割となっており、近い将来のさらなる農家人口減少が危惧されています。同時に生産量も減少し続けており、2023年度は約8,000tで推移。
『6,000tを切ると産地としての市場価値が下がる』と言われており、対応が急がれています。
そこで、新規就農者を増やすために、「みかん、やったらええやん」プロジェクトを始動。全国にいる「農業をやりたい」「みかん農家になりたい」と考える人へ、”三重南紀の産地ならではの強み”を整理し、検討層に向けて発信。まずオンラインで知ってもらい、実際に農業体験に訪れてもらうことで、御浜町でみかん農家を仕事にしたいと移住される方が増えてきています。希望者は20代〜50代と幅広い年齢層で、直近では20代前半の女性も研修を開始しました。問い合わせから早い方で半年程度、1〜2年じっくり検討を重ねて移住される方もいます。

ご夫妻の移住・就農物語: https://mihama-mie-townpromotion.jp/life/14287/


彼の移住・就農物語: https://mihama-mie-townpromotion.jp/life/13709/
希望者が増える一方で、新規就農者が借りたい畑をマッチングさせる難しさ・課題が浮き彫りになりました。みかん農業は、他の作物と比べると初期投資が低く新規参入がしやすい反面、樹をゼロから育てる場合、収入に繋がるまでは数年かかるため、未収益期間をいかに短くするかが経営面で重要となります。
町内に荒廃した畑は数多くあれど、それを耕し、新たに苗木から育てるとなると、実際収入になるのは5年後。そういった畑を持ち改植はしながらも、なるべく直ぐに収入へと繋がる畑(直前まで手入れがされていた畑)を借りる・買うことが出来るのが『理想的』で、引退される農家からの「農地継承」をいかにスムーズに出来るようにするか、が課題となっています。

農地継承を行わず、畑を荒らしてしまうことは、産地の財産を削ることにもなります。新規就農者に限らず、園地拡大を希望する中堅・若手の既存農家にとっても、価値ある畑を存続させることが、産地を未来へ繋ぎ、町を維持することへと繋がる。町全体で見ると、獣害被害の拡大や、町の景観を損なうなど、地域の持続性にも影響を与えます。
「農地継承」をスムーズに行えるようになれば、さらに多くの新規就農者を育てることが可能となり、産地を未来へ繋げられる。全国で同じ課題を抱えている地域が数多くある中、三重県御浜町はこの課題解決に真っ向から向き合っています。
御浜町では、農地継承の仕組み構築の足掛かりとして、
・新規就農者が増えていること
・農地継承の大切さ
を知っていただき、産地の明日を話し合うための『シンポジウム』を6月22日に開催することとなりました。
◆産地の現状に立ち上がったのは、町役場職員と4代目のみかん農家
「10年で100名の新規就農者確保を目指す。この目標を立てられるようになったのも、全国各地から、新規就農希望者が続々と御浜町へ来てくださるようになったからです。情報発信を通して、この産地の強み、目指すべき農家の姿、受け入れたいという熱意、全力でサポートするという意志を伝えることで、「農業」を仕事として考える方々に響き、実際に移住し就農を志してくれたことを嬉しく思っています。

すでに1期生・2期生も独立し始めており、新規就農者のサポート体制のより一層の充実を一気に進めています。
新規就農者の知識・技術不足の懸念解消のため、実地研修とは別で、座学の「みかん講座」を年20回ほど開催しており、研修生からは大変好評です。講座は移住者同士横の繋がりを作ることにも一役担っています。不要になった農機具・軽トラなどを引き継げる制度「農機具バンク」も開始しました。このように、出てきた課題に一つずつ向き合っています。今後 新規就農者のための農地確保・継承を促進するために、農地バンク制度の整備などを行っていますが、ニーズに十分応えきれているとはいえない状況です。地元の方への理解促進と、産地の一体感醸成を、次のミッションと捉え、今回のシンポジウムを企画しています。」

『みかん、やったらええやんと言い合えるまちになったらありがたいかな』
理念・プロジェクトの名前「みかん、やったらええやん」を生み出した4代目みかん農家

「プロジェクト開始以降、日本全国からたくさんの新規就農希望者が御浜町に来てくれている光景を目にして、希望を感じています。
当初は、役場もこれほどの反響があるとは想像していなかったと思いますが、『住宅がない・農地がない』と慌てている姿を見て『何をやってんねん』と感じていました。
でも結局は、それらの課題を解決できるのは、地元住民であり、農家である自分たちです。
以前は、役場・農家・JAと三者三様の考えで、一つの目標に向かって進むことはほとんどなかったのですが、今は産地の雰囲気がガラリと変わりました。
農林水産課の職員が一生懸命に頑張っている姿を目にすると、『俺らも協力したろうか』となります。
これまでは、『役場やJAは何もせん』と、好き勝手に言ってきましたが、『自分たち農家は何をしたか?』と思い返すと、もっと協力できることがあるだろうと。
自分にとっては、それが研修生を指導する『サポートリーダー』を引き受けることでしたし、今回のシンポジウムの実行委員長を務めることでした。
シンポジウムのメインとなる「座談会」では、登壇者(現役農家)の方々、そして会場へお越しの農家の方々にも話を伺う予定です。ベテラン農家から、中堅・若手、地元の農家、移住して就農する人たち、研修生たちにも来てもらいます。それぞれの立場で、それぞれが思うことをぶつけ合って、産地の明日を考えるキッカケにします」
山門さんのインタビュー:https://mihama-mie-townpromotion.jp/life/3502/
シンポジウム概要

名称:三重南紀・農業後継者確保のためのキックオフ・シンポジウム
日時:2025年6月22日(日)13時~16時
場所:三重県御浜町 中央公民館大ホール(YouTubeでのライブ配信あり)
内容:
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主催者・来賓挨拶
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講演「産地の歴史を振り返る」
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ベテラン農家さんらによる座談会
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御浜町の取り組み紹介
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若手・中堅農家さんらによる座談会
参加自由・無料(事前申込不要)
[主催]三重南紀・農業後継者確保のためのシンポジウム実行委員会
[共催]御浜町
[後援]農林水産省/三重南紀元気なみかんの里創生プロジェクト協議会
一般の方向けシンポジウムに関する問い合せ先:御浜町役場農林水産課
m-nousui@town.mihama.mie.jp
05979-3-0517
YouTubeでのライブ配信URL: https://www.youtube.com/watch?v=QHO-gVRmZMg