株式会社帝国データバンク
「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2025年8月

株式会社帝国データバンクは、2025年8月以降における食品の値上げ動向と展望・見通しについて、分析を行った。
SUMMARY
2025年8月の飲食料品値上げは、合計1010品目となった。
食品分野別では、だし製品のほか、ポン酢やたれ製品を中心とした「調味料」(470品目)が最多となった。
10月の食品値上げ予定品目数は今年4月以来となる3千品目超えでの推移が見込まれ、2025年内では4月(4225品目)に次ぐ値上げラッシュとなる見通し。
[注]
品目数および値上げは、各社発表に基づく。また、年内に複数回値上げを行った品目は、それぞれ別品目としてカウントした
値上げ率は発表時点における最大値を採用した。なお、価格据え置き・内容量減による「実質値上げ」も対象に含む
2025年8月の値上げ、1010品目 前年比1.5倍
主要な食品メーカー195社における、家庭用を中心とした8月の飲食料品値上げは1010品目、値上げ1回あたりの値上げ率平均は11%となった。前年8月(661品目)から+349品目・+52.8%となり、単月の値上げ品目数としては3カ月連続で1千品目以上の推移となった。また、1月以降8カ月連続で前年同月を上回り、連続増加期間としては記録的な値上げラッシュの1年となった2023年2~7月を上回り、前月に続き2022年の統計開始以降で最長を更新した。

2025年8月の値上げを食品分野別に集計すると、だし製品のほか、ポン酢やたれ製品を中心とした「調味料」(470品目)が最多となった。「乳製品」(281品目)は、加工向け生乳取引価格の引き上げによる影響を受けて、牛乳やチーズ、ヨーグルト製品など幅広い品目で一斉に値上げとなり、2025年内では3月(284品目)以来の高水準となった。「加工食品」(109品目)では、冷凍食品のほか、包装餅などで値上げとなるものの、単月としては2025年内で1月(58品目)に次ぐ少ない水準となった。
2025年通年の値上げは、11月までの公表分で累計1万9416品目にのぼり、前年通年の実績(1万2520品目)を55.1%上回った。1回当たり平均値上げ率は15%と、前年(17%)をやや下回る水準が続いた。食品分野別では「調味料」(6140品目)が最も多く、前年(1715品目)から+4425品目・+258.0%と大幅に増加したほか、年間では2022年以降で2番目に多い水準となった。「酒類・飲料」(4656品目)は清涼飲料水のほか、ビール、清酒、焼酎、ワインといった洋酒など広範囲で値上げとなり、前年比で7割を超える大幅な増加となった。「加工食品」(4285品目)は、冷凍食品やパックごはん、海苔などの値上げが目立った。2025年における飲食料品値上げの勢いは前年に比べて強い状態が続いている。

値上げ要因では、原材料の価格高騰に加え、光熱費の上昇による生産コスト増、人手不足による労務費の上昇、物流費の上昇などが複合的に重なった。原材料などモノ由来(「原材料高」)の値上げが全体の97.2%を占めたほか、「エネルギー(光熱費)」(66.5%)、「包装・資材」(59.4%)、「物流費」(80.0%)、「人件費」(53.9%)など、主要な値上げ要因ではいずれも半数を超えた。
今後の見通し:10月の値上げ、半年ぶりの「値上げラッシュ」に
2025年の飲食料品値上げは、原材料高に加えて物流費やエネルギーコスト、賃上げによる労務費など、粘着性の高い物価上昇(コストプッシュ)圧力を受けた値上げの勢いが強まっている。輸入物価高に起因した2023年~2024年前半の値上げラッシュ時と比較すると、2025年の値上げ要因は内生的なモノ・サービス物価上昇による影響力が相対的に増大しており、比較的低位に抑制された前年から値上げ品目数が大幅に増加する要因となっている。
一部商品や食品分野では、2024年まで目立った内容量の減量など「価格据え置き・維持」より、本体価格を引き上げる動きが目立つ。国内外の天候不順による供給量の不安定化や、円安による輸入コストの上振れ、人手不足に伴う人件費の増加は今後も続くとみられるなか、一時的なコストプッシュに対応するための措置から、恒常的なコスト増を見越した値上げ戦略へ移行する動きもみられ、飲食料品における値上げは長期にわたり継続する可能性が高いとみられる。
先行きでは、10月の食品値上げ予定品目数が今年4月以来となる3千品目超えでの推移が見込まれ、2025年内では4月(4225品目)に次ぐ値上げラッシュとなる見通し。通年の値上げ品目は、2023年以来2年ぶりに年間2万品目台への到達は確実とみられ、今後の動向次第では飲食料品の値上げラッシュが本格化した2022年(2万5768品目)の水準に並ぶ可能性がある。
