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レーザフュージョン発電の実現に向けた大きな一歩

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浜松ホトニクス株式会社

世界初[1]、1時間にわたる大出力パルスレーザの連続ターゲット照射実験を実施

浜松ホトニクス株式会社(以下、浜松ホトニクス)と株式会社EX-Fusion(以下、EX-Fusion)は、レーザフュージョン研究において、大出力のパルスレーザを連続して模擬燃料ターゲットに照射する重要な技術の実証試験を共同で行いました。

現在、世界で進められているレーザフュージョン研究は、単発のレーザ照射による実験「一回だけレーザを照射する実験手法」を主として行われています。しかし、今後は、より効率的で安定したエネルギー生成を目指して、連続のレーザ照射による実験「連続してレーザを照射する新しい実験手法」が主流になると考えられています。

今回の実証試験で用いた、レーザを模擬燃料ターゲットへ連続照射する技術がより大きなエネルギーを扱うキロジュール級のレーザで確立されれば、これまでの常識を覆す革新的なレーザフュージョンの方式が実現する可能性があり、エネルギー分野における「ゲームチェンジ」に繋がることが期待されています。

今後5年の間に、世界中でキロジュール級レーザの連続照射によるレーザフュージョン研究が本格化すると考えられます。今回の実証実験で得られた成果や知見は、今後の国家プロジェクトに生かされ、レーザフュージョン発電の実現に向けた大きな一歩となります。

 

<研究の背景>

現在、最も研究が進んでいるレーザフュージョン研究は、重水素と三重水素を入れた燃料ターゲットに大出力のレーザを照射し原子核同士が融合する反応であり、この際に発生する莫大なエネルギーを利用した発電への期待が高まっています。

レーザフュージョン発電システムでは、燃料ターゲットが供給装置から射出され、反応炉の中心に到達した瞬間に、複数の大出力レーザが同時に照射されます。発電には100本以上のレーザが必要になると考えられています。

レーザフュージョン発電の模式図

2022年12月、米国ローレンス・リバモア国立研究所にある国立点火施設(NIF)で、レーザフュージョンによる「点火(自己持続的な核融合反応)」が世界で初めて実証されました[2]。この成果をきっかけに、欧米を中心にレーザフュージョン発電の研究開発が急速に進んでいます。しかし、NIFはレーザフュージョンの物理的な実証を目的とした施設であり、レーザ照射は数時間に1回、燃料ターゲットの設置もその都度で行われているため、発電には対応していません。レーザフュージョン発電を行うには、燃料ターゲットを1秒間に10回の頻度で自動的に供給し、それに合わせて大出力レーザを正確に照射する、高度な連続動作が必要です。

浜松ホトニクスは、1990年代から大阪大学と協同してレーザフュージョン発電の研究を進めてきました。現在、世界最高レベルのLD(レーザダイオード)励起大出力レーザ技術を保有し、中性子を安全に遮蔽できる専用施設と、高効率かつ高頻度でレーザを照射できる実験環境を備えた、世界で唯一の民間企業[3]です。

 EX-Fusionは、レーザフュージョン発電の実用化を目指す日本初のスタートアップ企業で、2021年に大阪大学および光産業創成大学院大学から誕生しました。2024年に、模擬ターゲットを高速かつ正確に供給・追尾する技術の開発に成功し、実用化に向けた大きな一歩を踏み出しています。

浜松ホトニクスの世界最大出力LD励起レーザ(HALIANS)[4]
EX-Fusionのターゲット供給・追跡装置

<研究成果概要>

このたび浜松ホトニクスとEX-Fusionは、レーザフュージョン発電の実現に向け、浜松ホトニクスのレーザフュージョン実験施設内に設置されたEX-Fusion保有実験チャンバーを使用し、両社の技術を生かした大出力レーザの連続照射システムを構築し、現在の技術レベルを確認するとともに、今後の開発に必要な課題を明らかにするため、共同実験を行いました。

直径1ミリメートルの金属製ターゲットを1秒間に10回の頻度で真空チャンバー内に投入し、ターゲットの位置を予測してレーザを正確に照射しました。1時間にわたる連続照射の結果、レーザの照射位置とターゲットの位置の誤差は約500マイクロメートルに抑えられ、50%以上の確率でターゲットへの照射に成功しました。

浜松ホトニクスのレーザフュージョン実験施設とEX-Fusionが所有する実験チャンバー
戻り光計測の結果

さらにターゲットへ照射したレーザショットの内、10%以上の照射でレーザ光がターゲットからレーザ装置側に戻る大出力レーザ特有の重要なデータも得られました。このような規模と条件で長時間にわたり統計的なデータを取得した実験は、世界初の試み[1]です。 

今回の成果は、次のステップである100ジュール以上のレーザを用いた実験に向けた技術開発に大きく貢献するものです。

今後、アメリカ・中国・ヨーロッパでも同様の技術開発が進むと予想され、5年以内には1~10キロジュール級のレーザを使った本格的なレーザフュージョン研究が始まると見込まれています。今回の共同実験は、そうした世界の動きを先取りするものです。

今後、国家プロジェクトや国際プロジェクトとして進められる大規模なレーザフュージョン研究において、日本企業の技術が重要な役割を果たすことが期待されています。

 

共同実験で得られた実験結果のまとめ

[1] 当社調べ。実験条件:レーザエネルギー10J、繰り返し周波数10Hz、ターゲット追尾

[2] 参照: DOE National Laboratory Makes History by Achieving Fusion Ignition | December 13.2022

[3] 当社調べ。250J級LD励起レーザを備えた中性子遮蔽機能を有する施設

[4] 当社調べ。参照:253 J at 0.2 Hz, LD pumped cryogenic helium gas cooled Yb:YAG ceramics laser Optics Express Vol. 30, Issue 25, pp. 44385-44394 (2022)

【お問い合わせ先】

<浜松ホトニクス株式会社>

■報道関係の方 浜松ホトニクス株式会社 コーポレートコミュニケーション部 児玉裕信

〒430-8587 浜松市中央区砂山町325-6 日本生命浜松駅前ビル

E-mail: kodama@hq.hpk.co.jp TEL:053-452-2141(17時以降は090-1849-9249)

■一般の方 浜松ホトニクス株式会社 中央研究所 産業開発研究センター 川嶋利幸

〒431-1202 静岡県浜松市中央区呉松町1820

E-mail: kawasima@crl.hpk.co.jp  TEL:053-487-5100

出典:PR TIMES

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企業プレスリリース詳細へ (2025年7月31日 17時53分)

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