NTT東日本株式会社
-「低遅延」「高精細」「多数接続」を備える超遠隔操作技術の確立へ前進-
西松建設株式会社(東京都港区、社長:細川雅一)とNTT東日本株式会社(東京都新宿区、社長:澁谷 直樹)は、山岳トンネル無人化・自動化施工システム「Tunnel RemOS※1」による建設重機の超遠隔操作に、次世代通信技術IOWN※2におけるオール・フォトニクス・ネットワーク(以下「APN※3」)と「ローカル5G」(ギガらく5Gセレクト※4:NTT東日本提供)を適用し、疑似的に2拠点間距離200km(東京都-栃木県間を想定)とした場合において、遠隔操作が十分に可能な速度である映像伝送遅延約100msecを達成し、現場実装に大きく前進しました。
この結果を踏まえ、西松建設の実験施設である「N-フィールド」(栃木県那須塩原市)にローカル5G基地局を2025年8月1日(金)に開局し、さらなる検証を実施します。また、2025年度中に「N-フィールド」(図2参照)とNTT中央研修センタ(東京都調布市)をAPNで繋ぐことで、実際の遠隔操作環境を構築し、「低遅延」「高精細」「多数接続」を備える建設重機の超遠隔操作技術の確立をめざします。
本件は建設重機の超遠隔操作にAPNとローカル5Gを活用する初の事例となります。


■ 開発の背景
西松建設が開発を進めている山岳トンネル無人化・自動化施工システム『Tunnel RemOS(トンネルリモス)』(図3参照)では、これまでに広島県や岡山県の遠隔操作室から栃木県の西松建設の実験施設である「N-フィールド」の建設重機を超遠隔操作する検証を実施してきました。
しかし、拠点同士の通信にインターネット経由のVPN回線やLTE、工事現場の無線通信にWi-Fi等を利用し、高画質カメラを複数搭載した建設重機を複数台同時に遠隔操作すると、拠点間の通信回線の逼迫や無線区間の帯域・伝送チャネル数の制約により、最大で約1秒の映像伝送の遅れが生じるなど、遠隔操作の精度に課題がありました。
また、複数の建設重機が同時に接続した際の通信切断や、無線機器の熱暴走による通信速度の低下等、通信品質の問題に起因して、建設重機オペレータの空間認識能力の低下、トンネル内での障害物検知や粉じん環境下での視認性の低下といった課題もありました。
このような課題を解決し、将来を見据えた建設重機のさらなる自動化の促進に向けて、「Tunnel RemOS」による遠隔操作の2拠点間通信にAPNを利用し、工事現場における無線通信にローカル5G(ギガらく5Gセレクト)を組み合わせた「End-to-Endで低遅延・大容量伝送可能なネットワーク」を構築することで、超遠隔操作技術の確立に取り組んでいます。

■ 連携の概要
建設重機の遠隔操作システムである「Tunnel RemOS」の遠隔操作の2拠点間通信に、「低消費電力」「大容量・高品質」「低遅延」が特徴のAPNを適用し、現場における無線通信に「大容量」「高品質」が特徴のローカル5Gを利用することで、遠隔地かつ山岳トンネル内という通信環境が不安定な場所においても、安定した高速・低遅延の通信環境を実現し、精密な遠隔操作が可能になると考えています。
実際の遠隔操作環境を構築する前段階として、NTT中央研修センタにて、Tunnel RemOSのカメラ映像および制御装置による制御信号の無線通信にローカル5Gを、遠隔操作室までの2拠点間通信にAPNをそれぞれ適用し、2拠点間距離を200km(東京都-栃木県間を想定)とする疑似構成で遅延測定を実施しました。結果として、映像・制御信号の遅延は約100msecと遠隔操作が十分に可能な速度を達成し、現場実装に大きく前進しました。この結果を踏まえ、西松建設の実験施設である「N-フィールド」(栃木県那須塩原市)にローカル5G基地局を2025年8月1日(金)に開局し、建設重機を用いた検証を実施します。また、2025年度中に「N-フィールド」とNTT中央研修センタ(東京都調布市)をAPNで繋ぐことで、実際の遠隔操作環境を構築した検証を実施し、「低遅延」「高精細」「多数接続」を備えるTunnel RemOSによる建設重機の超遠隔操作技術の確立をめざします。
■ 今後の展開
超遠隔操作技術により、遠隔操作の専用拠点から複数の現場を統合的に管理・操縦することが可能となり、結果として、慢性的な人手不足への対応や、遠隔地への移動が困難な方々にも、建設重機オペレーションという専門職として、社会参画の機会を提供することが可能となります。
また、APNやローカル5Gを、西松建設が推進する「山岳トンネルデジタルツインプラットフォーム」※5の通信インフラ基盤として採用し、大容量3次元データや建設重機の稼働状況をリアルタイムに取得・解析を進めることにより、山岳トンネル工事の自動化をめざします。今後も、APNやローカル5G等の次世代通信技術と建設技術の融合により、現場の生産性向上と多様な働き方が可能な未来の実現に貢献してまいります。
■ 本件に関するお客さまからのお問い合わせ先
・西松建設株式会社 技術戦略室 技術研究所
土木技術グループ 山本 悟
TEL:090-7083-3646
MAIL:satoru_yamamoto@nishimatsu.co.jp
・NTT東日本株式会社 ビジネス開発本部 無線&IoTビジネス部 5G/IoT企画担当
MAIL: iown-l5g-ml@east.ntt.co.jp
<用語解説>
■※1 Tunnel RemOS(Tunnel Remote and automated Operation System)
西松建設が進めている山岳トンネル工事の無人化・自動化施工システム。山岳トンネル工事で使用するホイールローダ、ドリルジャンボ、吹付機、自由断面掘削機、油圧ショベルなどの大型建設重機に搭載したカメラ映像やガイダンスシステムを遠隔操作室で確認しながら無線遠隔操作する技術。現在は自律化・自動化の開発も進めている。
■※2 IOWN
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。詳しくは以下ホームページをご覧ください。
●IOWN構想とは
https://www.rd.ntt/iown/index.html
■※3 APN
APN(All-Photonics Network)とは、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、これにより現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難な、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現します。詳しくは以下ホームページをご覧ください。
●オールフォトニクス・ネットワークとは
https://www.rd.ntt/iown/0002.html
■※4 ギガらく5Gセレクト
従来の「ギガらく5G」で必要であった複数のサーバ等機器を一体型の基地局等に集約・小型化し、バックボーン回線として光回線・モバイル回線・衛星回線等を採用することで、これまで構築が難しかったユースケースにおいて、簡易にローカル5Gが利用可能となります。詳しくは以下ホームページをご覧ください。
●ギガらく5Gセレクトとは
https://business.ntt-east.co.jp/service/gigaraku5g/select.html
■※5 山岳トンネルデジタルツインプラットフォーム
フィジカル空間(現場)で取得した環境データ、設備稼働状況、作業状況、作業員の位置やバイタル情報などが、IoTゲートウェイを介して専用クラウドに収集され、これらのデータと「Tunnel RemOS」で得られる建設重機の位置や姿勢、走行速度などのデータをバーチャル空間上で統合し、リアルタイムに可視化することで、遠隔地からでも現場全体を把握することが可能となります。

