一般財団法人国際災害対策支援機構
~空からの防災力を全国で高める自治体ネットワーク~

このたび、「航空防災協議会」は、全国の自治体や関係機関の連携のもと、2025年8月1日に総会をオンラインで開催いたしました。
本協議会は、災害時の航空支援体制の強化と、平時からの自治体連携による防災力向上を目的とし、自治体主導で設立されたものです。
■ 開会挨拶
航空防災協議会 会長である南砺市田中幹夫市長より開会挨拶があり、令和6年能登半島地震・令和6年奥能登豪雨災害における航空支援の実例を踏まえ、協議会の意義と今後の展望が語られました。
「令和6年能登半島地震では、民間ヘリコプターによる孤立地域への支援が極めて重要な役割を果たしました。南砺市も山間部を多く抱える自治体として、災害時の初動対応において航空資源 の活用が不可欠であることを痛感しています。自治体単独では限界があるからこそ、広域連携と制度整備が必要です。 本協議会を通じて、場外離着陸場の利活用や、空の駅を拠点とした防災・観光の融合的な取り組みを進め、地域の命を守る仕組みを構築していきたいと考えています。空からの支援が、地域の未来を支える力になると信じています。」

■来賓
国土交通省航空局秋田未樹次長より来賓挨拶を頂き、航空資源の制度的整備と地域実装の重要性が強調されました。
「災害対応において、航空資源は“最後の砦”であり、特に孤立地域やアクセス困難な場所への支援において不可欠な手段です。国としても、場外離着陸場の制度整備や、自治体との連携強化に向けた支援を進めてまいります。航空防災協議会のような実践的なネットワークが、制度と現場をつなぐ架け橋となることを期待しています。」

■参加者
全国11自治体が出席し、現場での航空支援の実施事例や、地域での防災教育の実践に関する講演が行われ、今後の活動に向けた意見交換が行われました。
今後は、より多くの自治体や関係機関と協力体制を築くべく、航空防災協議会への賛同自治体の拡充を目指し、地域の防災力向上のため、全国からの参画を広く呼びかけて参ります。

■航空防災協議会登録自治体一覧(2025年8月時点)
正会員(地域ブロック別、あいうえお順)
【関東】茨城県行方市(なめがた)鈴木周也市長
【北信越】石川県七尾市(ななお)茶谷義隆市長
【北信越】富山県南砺市(なんと)田中幹夫市長
【北信越】石川県輪島市(わじま)坂口茂市長
【東海】 三重県明和町(めいわ・ちょう)下村由美子町長
【近畿】 兵庫県神河町(かみかわ・ちょう)山名宗悟町長
【四国】 愛媛県宇和島市(うわじま)岡原文彰市長
【四国】 愛媛県大洲市(おおず)二宮隆久市長
【四国】 高知県大月町(おおつき・ちょう)岡田順一町長
【四国】 徳島県三好市(みよし)高井美穂市長
【四国】 高知県室戸市(むろと)植田壯一郎市長
準会員(地域ブロック別、あいうえお順)
【北海道】北海道名寄市(なよろ)加藤剛士市長
【北信越】富山県高岡市(たかおか)出町譲市長
【北信越】福井県勝山市(かつやま)水上実喜夫市長
【関東】神奈川県鎌倉市(かまくら)松尾崇市長
【近畿】奈良県川西町(かわにし・ちょう)小澤晃広町長
■講演内容 実施報告
総会後半では、航空防災の実践的な取り組みと教育的活用に関する2つの講演が行われ、参加自治体との意見交換を通じて、現場の課題と可能性が共有されました。
◉ 講演①
「令和6年奥能登豪雨災害における緊急消防援助隊の活動」
講師:総務省消防庁 広域応援室 航空企画係長 林圭一郎 氏
令和6年奥能登豪雨災害において、緊急消防援助隊が実施した航空支援の実例を報告。
孤立集落への物資搬送、要救助者の空輸、情報収集など、ヘリコプターによる支援の実効性と限界が具体的に示されました。
「現場では、地上からのアクセスが完全に遮断された地域が複数存在し、航空支援が唯一のライフラインとなりました。自治体との事前調整や場外離着陸場の確保が、初動対応の成否を左右します。」
参加自治体からは、「平時からの訓練と制度整備が不可欠」「民間事業者との連携スキームが必要」といった声が上がり、航空支援の実装に向けた課題が浮き彫りとなりました。


講演②
「令和6年能登半島地震から学ぶ私たちにできること」
講師:明治大学名誉教授 阪井和男 氏
JMOOC 災害関連講座整備特別委員会で作成している [授業シナリオ]を基に、災害から学ぶ私たちにできることに焦点を当て、「令和 6 年能登半島地震から学ぶ私たちにできること」をテーマに学んでいきます。「レジリエントな行動」を目指すリベラルアーツとしての災害教育の試みです。能登半島地震の発災直後から住民がLINEを通じて記録した日誌ややり取りをもとに、災害時の情報取得と共有の実態を紹介。 特に、石川県珠洲市でのLINE公式アカウントやオープンチャットの活用事例を通じて、情報格差の課題 と、SNSを活用した「災害の可視化」の可能性が語られました。
「発災直後、避難所では“炊き出しはどこで”“水はどこにある”といった情報がLINEでリアルタイムに共有されていました。こうした日誌的な記録は、災害の“見え方”を変え、教育や地域防災の 教材にもなり得ます。」
また、LINEの開封率やメッセージ内容の変化を分析することで、時間経過に伴う住民ニーズの変化を把握し、より適切な情報発信が可能になることも示されました。 この講演に対し、自治体関係者からは「SNSを活用した災害教育の可能性」「住民参加型の情報共有体制の構築」など、教育と防災の接続に関する前向きな意見が寄せられました。


■閉会挨拶
航空防災協議会 副会長である行方市鈴木周也市長より閉会挨拶があり、講演実例を踏まえ、協議会の意義と今後の展望が語られました。
「本日の意見交換では、災害時の航空機活用に関する制度的課題、自治体間連携、そして国との協働の可能性について、非常に実りある議論ができました。特に、七尾市の事例からは、現場での制度整備の必要性が浮き彫りになり、国交省からもガイドライン策定の進捗が共有されました。」 「協議会としては、今後も自治体の現場課題を起点に、制度提言と実践的な取り組みを両輪で進めてまいります。次回総会では、分科会の設置やモデル事業の提案など、より具体的なアクションにつなげていきたいと考えています。」

■今後の展望
1.制度整備と国との連携強化を目指す。
自治体からの現場課題(輪島市の事例など)を反映し、柔軟な運用ルールの構築を目指す。
2.自治体間の連携と知見共有
協議会を通じて、災害時の空域活用に関する事例‧課題‧政策を継続的に共有。
3.災害対応力の向上に向けた具体的施策
空域を活用した情報収集‧物資輸送‧人員移送の訓練を、自治体単独ではなく広域連携で実施。 通信遮断時の対応策として、ドローンや衛星通信との併用も検討。
民間事業者との連携スキーム(協定‧契約‧運用ルール)の整備。
4.協議会としての次のアクション
令和6年能登半島地震の検証および各機関との連携方法について検討
■航空防災協議会とは
航空防災協議会は、災害時に航空機やドローンなどの航空資源を活用した被災地支援体制の整備・強化を目的に設立された、地方自治体を中心とした全国規模のネットワークです。
地域間の連携を深め、航空防災に関する教育・啓発・実践活動を推進するとともに、平時からの備えを共有することで、大規模災害への即応力を高めることを目指しています。
👉 詳しくはこちら:https://techdev.unglobal.org/koku0001/

■航空防災協議会の趣旨
2022 年 1 月 17 日、22 の自治体の首長が集まり、「空の駅利活用勉強会」を発足、富山県南砺市田中幹夫市長を初代会長とし、各自治体に設置した「空の駅」を交通ハブとして活用し、災害対策と新たな観光の拠点として活用する基盤整備を推進することを目指すこととなりました。以来およそ 2 年、内閣府地方創生推進事務局、国土交通省航空局、国土交通省観光庁、内閣府沖縄総合事務局の皆様のご協力を頂き、勉強会を開催してまいりました。
そして令和6年 1 月 1 日能登半島地震発災時に、民間ヘリコプターを活用した災害対応の重要性が明らかになりました。「空の駅利活用勉強会」の事務局である一般財団法人国際災害対策支援機構が民間ヘリコプターによる孤立地域への災害対応を行う中で、観光に先立ち防災対策の準備を早急に整備する必要性があらためて明確なものとなりました。このたび空の駅利活用協会に参加する自治体からの要請もあり、航空防災に関する取り組みや知見を共有し地方公共団体に設置した場外離着陸場を活用した防災体制を構築することを目的とした、「航空防災協議会」を設立いたしました。
■航空防災協議会の目的
協議会は、航空防災に関する取り組みや知見を共有し、地方公共団体の場外を活用した体制
を構築することを目的とする。
■航空防災協議会の事業内容
1. 航空防災に関する実証及び標準化等の推進
2. 航空防災に関する規制改革等の提言
3. 航空防災に関する情報・資料の収集及び提供
4. 航空防災に関する研修
5. 航空防災に関する政府等との協力及び応援
6. その他、協議会の目的を達成するために必要な事業
実施内容
● 航空機等による情報収集や物資輸送、緊急支援活動を円滑に行うための体制整備
● 自治体・各省庁での航空支援に関する連携推進
● 教育・啓発活動を通じた「空からの防災」意識の醸成

■参加資格
協議会の参加者は、地方公共団体の長です。
正会員:協議会の目的に賛同し、一般財団法人国際災害対策支援機構との包括連携協定を締結した地方公共団体の長。航空防災に関する具体的取り組みを行っており、総会において議決権を持ちます。
準会員:協議会の目的に賛同する地方公共団体の長。議決権は持ちませんが、会議への参加や情報共有などを通じて連携しています。
■入会方法について
航空防災に関する取り組みや知見を共有し、地方公共団体の場外を活用した体制の構築を検討されている自治体を募っています。
会員として入会される自治体は、入会申込書により事務局に申し込みいただきます。下記の航空防災協議会事務局までご連絡ください。
■航空防災協議会に関するお問合せ先
一般財団法人国際災害対策支援機構内
航空防災協議会事務局
E-mail : koku_bousai@unglobal.org
航空防災協議会HP:https://techdev.unglobal.org/koku0001/
※メディア関係者の問合せは、所属名・担当者名・連絡先・取材概要をご記入の上、メールにてお願いいたします。

