CEIPA PR事務局
トヨタ自動車東京本社B1F大ホールにて1st Edition(韓国編)が開催
音楽業界の主要5団体が設立した一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(略称:CEIPA)とTOYOTA GROUPの共創プロジェクト、CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT”の一環として、Professional Seminar Public Series 1st Edition(韓国編)が、去る7月22日(火)に開催されました。

【Professional Seminar Public Seriesについて】
“MUSIC WAY PROJECT”とは、日本のコンテンツをもっと世界に発信すべく、日本音楽の未来を切り開いていく若者たちが進む「道」を共創し、本質的な日本音楽のグローバル化・持続的な成長を推進するプロジェクトです。
同プロジェクトは、CEIPAの主催により5月に京都で行われた国内最大規模の国際音楽賞、MUSIC AWARDS JAPAN 2025の公式カクテル・パーティー「YouTube Cocktail Party」でキックオフされ、併せて世界で最も有名な現代音楽教育機関のひとつであるバークリー音楽大学とのパートナーシップが結ばれたことも発表されました。Professional Seminarでは、2025年7月から11月に毎月1回 「Public Series」と題して、バークリー音楽大学の教授が事前収録したビデオ講義を放映し、現地で実際に教えている内容を日本にいながら体系的に学ぶ機会を提供、同時に韓国、タイ、インドネシアといった海外戦略の鍵となるマーケットをテーマにセミナーと懇親会が行われることもアナウンスされています。発表から約2ヶ月、いよいよ1st Edition(韓国編)の開催を迎え、会場であるトヨタ自動車東京本社(東京都文京区)B1F大ホールは、受講者で満員になりました。
【イベントレポート】
まず栗田秀一(CEIPA専務理事)が受講者の皆様へ「このPublic Seriesでは、音楽業界のグローバル化、アーティストの海外進出へ向けて、情報提供と人材交流を行えればと思っています。ぜひ、この場でGo Global!をともに目指す仲間を見つけてください」とメッセージ。
続いてMUSIC WAY PROJECTのプロジェクトチームの一員であり、YouTube Japan/Googleでディレクター/音楽パートナーシップ統括責任者を務める鬼頭武也が登壇しました。鬼頭が担当したのはメインセッションを前に、受講者にウォーミングアップしていただくための10分間のSmall Talk Session。“想いを届ける「ことば」”をテーマに、国際的なビジネスの現場に立ち、担当アーティストの魅力を言葉で伝えるにあたっての心構えをお話ししました。英語のテクニック以前に、根底に本当に伝えたいことがあるのか、それをどんな言葉で伝えるべきなのか――日本との文化的背景の違いを含めて、大事なポイントが簡潔にまとめられていました。

データの分析で、オーディエンスの実像を把握
ターゲットとなる国、都市を定めるバークリー流の実践的海外進出スキル
最初のメインセッションはバークリー音楽大学バレンシア校の教授であり、マネジメント博士号を持つAlexandre Perrin(アレクサンドル・ペリン)氏のビデオ講義。ペリン氏は音楽とデータの分野、音楽業界全体におけるアントレプレナーシップ(起業家精神)やリーダーシップの研究・教育に取り組んでおり、今回の講義ではアーティストが海外で活動するために、メタデータ(楽曲のタイトル、演奏家、作詞・作曲家、サンプリング、音楽出版社、音楽ジャンルなどの基本データに加え、著作権団体などが楽曲のロイヤリティを支払うためのさらに詳細な情報)をどのように活用するべきか、MUSIC WAY PROJECTのプロジェクトチームの増田雅子(VP of The Orchard Japan)による質問に答える形で解説していきました。
ストリーミング時代に入り、楽曲を「どこで、どんなオーディエンスが聴いたのか」を知ることができるようになり、それらデータを分析すれば「アーティストのファンはどこにいて、アーティストへの愛着がどの程度のレベルなのか」を把握できるようになりました。さらには分析結果を活用することで「どの国や都市にツアーへ行くべきか」「どんなアーティストと共演するべきか」(ベイン氏はアーティスト間の国際的なコラボレーションの効果を強調)といった海外活動の指針を定めることもできます。今回の講義でペイン氏は、データの種類と特徴、入手過程、分析方法までを丁寧に説明。講義を通して、これらの試みはインディペンデントな立場のアーティストとそのスタッフでも充分可能であることが伝わる同時に、現代の音楽ビジネスではアーティストを取り巻くデータを正確に把握することが必須で、海外進出においてはオーディエンスの分析だけではなく各国の国情も加味し、ターゲットとなる国を定めることが不可欠であることが浮かび上がってきました。その内容は、膨大な知識に裏打ちされた非常に実践的なもので、Public Seriesではこのレベルの講義が毎回セットされることを踏まえると、今後への期待が大いに高まったといって良いでしょう。

マーケティング、プロデュース、ライブ……
3人のエキスパートが多角的に掘り下げる、韓国音楽マーケットの現在の「リアル」
続いてのメインセッションは、MUSIC WAY PROJECTのプロジェクトチームの増田雅子、駒崎絵里(ソニー・ミュージックレーベルズ)の紹介により、3人のエキスパートが登場した「Market Deepdive #1(韓国編)」。

HYPEER Inc.の共同創業者であり、CEOのJayden Son(ジェイデン・ソン/別名:jxxdxn)氏は、Sony Music Korea在籍時にデータドリブンなキャンペーンを主導、熱狂的なファン層を拡大させ、現在はグローバルな音楽ストラテジストとして韓国と日本のカルチャーや市場をつなぐ役割を担っています。セッションのテーマは「ローカルに根ざしたマーケティングとPR戦略」。K-POPの躍進を支えているのは強固なファンダムであることは知られていますが、ジェネラルリスナー、ライトリスナー、ヘヴィリスナー、ロイヤルリスナーといったファンのセグメント化を行い、ロイヤルリスナーの10%からなるハイパーファンダムをつくり上げる重要性が示されました。また、海外進出の際にはターゲットとなる国ごとに違う戦略が練られるべきであり、その過程をポジショニング(新しい市場におけるアーティストの立ち位置)〜カルチャーコード(その国に受け入れられるための方法)〜チューニング(いつ、どのタイミングでイベントキャンペーンやWEBプロモーションを実施するか)の3段階で解説。具体的な日本人アーティストのプロモーション実例も挙げられました。レクチャーの中で特に印象的だったのは「アーティストのブレイクとトラックのブレイクを両立させる」「ファンが好きであることが自慢できるアーティストになる」「何を聴かせるか、ではなく、どう感じさせるか、が大事」といったフレーズでした。

AXISの創業者であり、CEOのSJ(SINXITY、通称:SJ)氏は、YGエンターテインメントでBLACKPINKなどのクリエイティブディレクターを担い、トップK-POPアーティストのクリエイティブプロジェクトを主導。現在はNTTドコモの「スタジオ&ライブ」傘下で展開されるプロジェクト、日本人女性4人組のK-POPヴォーカル&ダンスグループ、cosmosy(コスモシー)のリードクリエイターを務めています。セッションのテーマは「クリエイティブプロダクションとファンダム設計戦略」。デビューから3部構成のシングルをリリースし、まさに今、現在進行形でK-POPマーケットから世界に向けて売り出しているcosmosyのプロデュース戦略は、メンバーが全員日本人ということもあり、参考になる点が数多くありました。メンバーの選定、歌詞への韓本語(ハングルと日本語の融合)の導入の理由を、K-POPアイドルとして受け入れられるのではなく、熱狂的なJカルチャーファン、オタク文化全体を楽しむ層に支持されるためと説明。アメリカ進出も現地大手と組むのではなく、アニメEXPOへの参加、女子プロレス団体「SUKEBAN」でのプロモーションと、ターゲットへピンポイントで届くスキームを中心に据えているとのこと。振り付け、音楽番組の出演(オリジナルの舞台セットの製作)、プロモーションビデオ、デジタルマーケティングへの投資額も一覧表で明示され、実にリアリティー溢れるレクチャーになりました。

DMZ Peace Train Music Festivalの共同創業者であり、Artistic Directorを務めるCecilia(Cecilia Soojeong YI=セシリア・スジョン・イ)氏は、韓国のフェスティバルにおけるキュレーションやアーティストブッキング、アーティストリレーション、海外リレーションを担当してきました。セッションのテーマは「ライブとフェスを通じたマーケット進出」、韓国のライブ市場の現状を紹介しつつ、日本のアーティストがライブやフェスを通じて韓国へ進出する道筋を示すレクチャーになりました。韓国のライブ市場は、若者文化の発信源であるソウルの弘大や梨泰院、代表的なフェスの開催地である仁川、釜山が中心。日本人アーティストがライブを行うのであれば、なかでもソウルを拠点とするべきとのこと。近年はメジャーとインディーの境界が曖昧になりつつあるそうですが、ライブシーンはインディーが主力。フェスはローカルとグローバルが混在する場で、日本人アーティストの出演も歓迎される場合が多いそうです。ライブの宣伝に有効なのは、インスタ、Melon(メロン=韓国の代表的な音楽WEB/アプリ)、ナムウィキ(ハングルのウィキペディア)で、海外アーティストにとってMelonやナムウィキにページがあるかはとても重要。また、アーティストの音楽性と共通する韓国のレーベルがあるか、長期的なプロモーション計画があるかも、韓国でライブができるか否かの判断材料になるとのこと。加えて、政府運営の芸術情報統合プラットフォーム「KOPIS」(韓国公演芸術統合電算網=コピス)から支援を受けられる可能性や韓国の会場とコンサートプロモーターの相関関係、日本人アーティストが韓国でライブを行う際のケーススディもありました。

韓国市場をディープに知るためには、3人のエキスパートが担当した「マーケティング」「プロデュース」「ライブ」という入口はとてもバランスが良く、短い時間のなかで隣国の全体像を可能な限り深く把握できました。終了後に用意された懇親会では、受講者の皆様同士が交流を深めたり、3人のエキスパートと直接会話できる機会もあり、「ここから何かが始まる予感」が最後まで継続されたセッションになりました。この日のトヨタ自動車東京本社には、間違いなく「出会い」と「学び」と「チャンス」がありました。各登壇者が「国によって進出のための戦略は違う」と揃って述べていた事実を含めて、次回(タイ編)の受講もマストだといえるでしょう。
次回8月14日(木)、2nd Editionは(タイ編)
引き続きバークリー音楽大学提供のビデオ講義
タイ市場のエキスパートが登場するセッションも開催
CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT”
Professional Seminar Public Series 2nd Edition (タイ編)
日程 :2025 年 8 月 14 日 (木) 15:30開場 16:00開始
16:00 – 16:20 Introduction from CEIPA
16:20 – 16:50 “Building your artists/songwriter strategy,
story-telling and marketing“
Supported by Berklee College of Music
16:50 – 17:50 Market Deepdive #2 – Thailand
17:50 – 18:15 Live Q&A
18:30 – 19:30 懇親会 ※会場参加者のみ
会場 :トヨタ自動車東京本社 B1F大ホール(東京都文京区後楽1丁目4-18)
※オンライン参加:Google Meet
登壇者:・Yuthana “Ted” Boonorm (Senior Executive Vice President, Show Biz – GMM Music)
・Prim “Op” Thippayachan (Music Publicist)
・大坪麻夕子 (株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント)
・Grace Puluczek (Associate Professor , Berklee College of Music)