株式会社新潮社
会話で相手に返事をするまで0.2秒。その間、あなたの頭の中で何が起きている?
YouTube登録者数36万人超の「ゆる言語学ラジオ」スピーカー・水野太貴さんが、誰もやらなかった方法で日常の奇跡を解き明かす大興奮の一冊です。バリューブックスを筆頭に、すでに1万3,000冊以上の予約が殺到し、発売前重版も決定した超話題の本作。この度、試し読みを特別公開いたします。

会話で相手と交替するまで平均0.2秒。この一瞬にどんな高度な駆け引きや奇跡が起きているのか――言語学の歴史を大づかみに振り返りつつ、「食べログ」レビューからお笑いに日銀総裁の会見、人気漫画まで俎上に載せ、日々の言語学をわかりやすく伝える、待望の書き下ろし。なぜうまく話せないのか。悩んでしまうあなたの必読書!
■試し読み特別公開!
発売にさきがけ、本書「まえがき」全文・第一章冒頭を公開いたします。ぜひご一読ください。
まえがき
日々繰り広げられる、0・1秒単位の競争
2009年8月、ドイツ・ベルリン。アメリカの陸上選手であるタイソン・ゲイは唇を嚙んだ。世界陸上の男子100メートル走決勝、彼が出したタイムは9・71秒。銀メダルだった。表彰台の横に立つのはジャマイカのウサイン・ボルト。今も破られぬ9・58秒という世界新記録を叩き出した男だ。その差はわずか130ミリ秒。
この130ミリ秒――つまり0・13秒という数字をあなたはどう思うだろうか。きっと、極めて短い時間だと感じる人が多いだろう。
しかし見方を変えると、あなたも毎日のように、1秒以下のわずかな時間で競争を繰り広げている。それが、会話だ。
会話では、一人の話者が話し、それが終わると別の人が話し始める。話者が交替するまでの発話を「ターン」といい、話者の交替を「ターンテイキング」というが、イギリスの言語学者であるスティーヴン・C・レヴィンソンらの研究によると、ターンテイキングには平均して200ミリ秒――つまり0・2秒しかかからないという。タイソン・ゲイが涙を呑んだ130ミリ秒とさほど変わらない、極めて短い時間である。
別の研究では、10の言語で「はい/いいえ」で答えられる質問文を与え、応答に要する時間を調べた。各言語の所要時間の中央値は0ミリ秒から300ミリ秒だったそうだ。やはり1秒どころか、500ミリ秒もかかっていない。僕たちは会話において、100ミリ秒単位の世界で高度な駆け引きを行なっているのである。 <続きは下記ボタンをチェック!>
■推薦コメントは、慶應義塾大学名誉教授・今井むつみさん!
著書『言語の本質』(秋田喜美さん共著)が2024年新書大賞に輝いた、今井むつみさんよりコメントを頂戴しました。
研究者ではない言語オタク水野さんだからこそ見える言語の本質がここにある
■発売にあたって――著者コメント
1年半前に宣言した「30歳になるまでに、単著を出したい」という約束を果たせました。2年間社交を捨ててじっくりリサーチを進め、言語学を学んで自分がどう変わったか、世界がどう見えるようになったのか、等身大の言葉で書き綴りました。これまでの著作とまったく違う一冊になったので、ぜひ手に取ってみてください! 本書にかける思いと、印税を使って行なう「言語学の大学院生への奨学金」については、「ゆる言語学ラジオ」で詳しく話しています。
★ゆる言語学ラジオ「死ぬ気で書いた本が予約開始! 印税は人にあげます。」
★積読チャンネル「話し方に悩むすべての人へ」
■目次
まえがき
第一章 コミュニケーション上手になるための「語用論」
第二章 ことばには”奥行き”がある
第三章 あなたは「ネコ」の意味さえ説明できない
第四章 言語化の隠れた立役者たち
終章 世界は広い! 驚きのコミュニケーション
あとがき
■著者紹介:水野太貴(みずの・だいき)
1995年生まれ。愛知県出身。名古屋大学文学部卒。専攻は言語学。出版社で編集者として勤務するかたわら、YouTube、Podcastチャンネル「ゆる言語学ラジオ」で話し手を務める。同チャンネルのYouTube登録者数は36万人超。著書に『復刻版 言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』(バリューブックス・パブリッシング)、『きょう、ゴリラをうえたよ 愉快で深いこどものいいまちがい集』(KADOKAWA)がある。
■書籍データ
【タイトル】会話の0.2秒を言語学する
【著者名】水野太貴
【発売日】8月27日
【造本】四六版
【定価】1760円(税込)
【ISBN】978-4-10-356431-7