株式会社光文社
外山薫、行成薫、岩井圭也、似鳥鶏、石持浅海、河邉徹、カツセマサヒコが描く、家族のかたち、最前線
「イクメン」という言葉が死語になり、当たり前に家事育児を行う令和のパパたち。2024年の男性の育休取得割合は40%を超え、過去最高となりました。産後パパ育休制度なども始まり、変化を続けているパパを取り巻く環境ですが、その心の裡が語られることはまだ少ないのが現状。
そんな令和パパたちがどんな思いで日々を送っているのか、実際に育児中の7名のパパ作家たちが物語に描いてくれました。

同じ会社で働く妻が出世したことにより、閑職に追いやられた夫。娘の小学校のPTA活動に参加するも、うまくなじめず葛藤を抱えるパパの姿を描いた外山薫さんの「ダディトラック」。
夜間の授乳で細切れ睡眠に苦しむ妻を見て、自分も授乳ができたらいいのに・・・・・・と思い悩む夫。妻と比べ、なかなか親になりきれない自分にふがいない思いを抱くパパの迷走ぶりがおかしくも切ない行成薫さんの「俺の乳首からおっぱいは出ない」。
ふとしたきっかけで、老いた母親の部屋で見つけた自分の保育園時代の「連絡帳」。そこにはいないはずの「父」の筆跡があり、数十年越しに自らの幼年期を振り返る岩井圭也さんの「連絡帳の父」。
息子が愛してやまないトミカのひとつが紛失してしまい、どこを探しても見つからない。多くの子育て層が経験する状況を、さすがのミステリーに仕立ててくれた似鳥鶏さんの「世界で一番ありふれた消失」。
息子が地方の国立大学に進学することになり、二人でアパート探しの旅に出る父子。久しぶりに向き合った息子の思わぬ成長に、胸がいっぱいになる石持浅海さんの「息子の進学」。
不器用な俺は、娘の髪をうまく結べない。保育園から頼まれた夏祭りの景品作りもうまくできず、父親に向いていないなと凹むパパを、思わず応援したくなる河邉徹さんの「髪を結ぶ」。
共働きのハードさに疲れ、妻が専業主婦になることを選択した夫婦。同僚との飲み会でそのことを激しく非難されて、傷つくパパ。それぞれの家庭の事情があるのだと考えさせられるカツセマサヒコさんの「そういう家族がそこにある」。
七名七様のパパの奮闘が描かれ、令和の家族の実像が浮かび上がってくるようなアンソロジーになりました。
現役のパパママはもちろん、これから子供を持つ可能性のある読者の方たちにもぜひ読んでいただきたい作品集です。
★パパ書評家、ママ雑誌編集長も絶賛!
「親世代の価値観は通用しないと言われるようになった社会で、親になった子どもたち。たくさん失敗し、傷付き、心を軋ませるあなたたちの頑張りが、子育ての新しいロールモデルになる。これは、小さな英雄譚だ」(吉田大助・書評家)
「パパの生きづらさを描くことは、ママの生きづらさを描くことと同じくらい大切だと思います」(羽城麻子・VERY編集長)

★パパ作家座談会も必読!
8月22日発売の「小説宝石9月号」(小社刊)では、岩井圭也さん×行成薫さん×河邉徹さん、外山薫さん×似鳥鶏さん×カツセマサヒコさんによるパパ作家座談会も掲載!令和パパたちの赤裸々な心の裡がさらに語られます。
【書誌情報】
『パパたちの肖像』
2025年8月18日発売
外山薫/行成薫/岩井圭也/似鳥鶏/石持浅海/河邉徹/カツセマサヒコ
四六判ソフトカバー 304p
2000円+税
【著者プロフィール】
外山薫(とやま・かおる)1985年生まれ。2023年『息が詰まるようなこの場所で』でデビュー。ほかに『君の背中に見た夢は』がある。タワマン文学の旗手。
行成薫(ゆきなり・かおる)1979年生まれ。2012年「名も無き世界のエンドロール」で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。同作は映画化もされた。近著に『ジンが願いをかなえてくれない』など。
岩井圭也(いわい・けいや)
1987年生まれ。2018年「永遠についての証明」で野性時代フロンティア文学賞を受賞してデビュー。’24年『われは熊楠』で直木賞候補。近著に『サバイブ!』など。
似鳥鶏(にたどり・けい)
1981年生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で鮎川哲也賞佳作入選。’23年『育休刑事』がドラマ化された。近著に『みんなで決めた真実』など。
石持浅海(いしもち・あさみ)
1966年生まれ。2002年『アイルランドの薔薇』でデビュー。『扉は閉ざされたまま』『君の望む死に方』がドラマ化。近著に『夏休みの殺し屋』など。
河邉徹(かわべ・とおる)
1988年生まれ。元バンドWEAVERのドラマー。2018年『夢工場ラムレス』で小説家デビュー。’20年『流星コーリング』で広島本大賞受賞。『ヒカリノオト』が第8回未来屋小説大賞にノミネート。
カツセマサヒコ
1986年生まれ。2020年『明け方の若者たち』でデビュー。同作は映画化もされ話題に。近著に『わたしたちは、海』『傷と雨傘』など。