三菱電機株式会社
低価格化と供給力強化を通じて、衛星サプライチェーン強化に貢献

三菱電機株式会社は、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(以下 JAXA)が実施する宇宙戦略基金(※1)第一期の公募テーマの一つである「衛星サプライチェーン構築のための衛星部品・コンポーネントの開発・実証」(分野:衛星等)において、技術開発課題「国産太陽電池セル・カバーガラスおよび搭載アレイの開発」(以下、本技術開発)の代表機関に選定され、今回JAXAと契約を締結しました。
近年、低軌道衛星コンステレーション(※2)をはじめとした衛星市場拡大に伴い、衛星に搭載される宇宙用太陽電池セルと、宇宙放射線から太陽電池セルを守るカバーガラスの需要が増加し、世界的な供給不足による価格高騰・長納期化が課題となっています。
当社は本技術開発で、太陽電池セル分野で高い専門性を有する国内のサプライヤーとの連携により、低価格かつ量産可能な太陽電池セルを開発します。また、地上製品に使われるガラスの宇宙環境への適用性を検証し、低価格なカバーガラスの量産化に取り組みます。さらに、開発した太陽電池セル、カバーガラスを搭載する太陽電池アレイも新たに開発し、太陽電池セルから太陽電池アレイまで一貫した国内生産を可能とすることで、太陽電池アレイとその部品の低価格化と供給力強化を実現し、国内の衛星サプライチェーン強化に貢献します。
特に重要な部品である太陽電池セルの開発では、太陽電池セル分野で最先端の技術を有し、次世代光電変換素子(※3)であるペロブスカイト構造(※4)やCIGS(※5)の研究開発を行う株式会社PXP(本社:神奈川県相模原市、代表取締役社長 栗谷川 悟)と連携し、ペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池セル(※6)の宇宙環境での実用化に向けた検討を行います。ペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池セルは、従来品(※7)と同等の変換効率を持ち、従来品よりも宇宙放射線への耐性が高いため、変換効率の劣化を回避し、効率を維持できると期待されています。また、ペロブスカイト太陽電池セル、CIGS太陽電池セルは、それぞれ従来品と比較して容易に製造できる点から、低価格化、量産化に適しています。同社の高度な太陽電池セル製造技術と当社の多岐にわたる衛星システムの開発・製造技術を組み合わせることで、宇宙空間においても高い信頼性と変換効率を維持できる太陽電池セルの、低価格化・量産化実現に向けた開発に取り組みます。
■関係者コメント
研究代表者(三菱電機株式会社 鎌倉製作所 衛星機器第二部 技術第四課長)浅野 なつき コメント
「このたび、宇宙戦略基金の代表機関に選定されたことを非常に嬉しく思います。低価格と高性能を両立し、宇宙環境への耐性・量産性を備えた国産太陽電池セル・国産カバーガラスを搭載した太陽電池アレイの社会実装を通じて、日本の衛星サプライチェーンの強化と宇宙産業の国際競争力強化に貢献してまいります。」
■本研究開発の概要

実施期間 |
2025年5月~2031年3月(※8) |
研究代表者 |
三菱電機株式会社 鎌倉製作所 衛星機器第二部 技術第四課長 |
研究開発内容 |
・国内サプライヤーと連携し、太陽電池セルの光電変換素子に、製造コストを抑制しやすいペロブスカイト構造とCIGSを採用することで、太陽電池セルの国産化、低価格化、量産化を実現する技術を確立 ・高い変換効率を持つペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池セルを宇宙用途に適用するとともに、高い放射線耐性を持つCIGSの特性を生かすことで、宇宙空間においても高い変換効率を維持できる太陽電池セルを開発 ・国内の地上製品のガラス製造技術を用いて開発されたカバーガラスの宇宙環境への適応性、耐性を検証し、低価格で量産可能な国産カバーガラスの宇宙用途への適用を実現 ・本研究開発で新規開発した国産の太陽電池セル、カバーガラスに適合する太陽電池アレイの実装設計と過酷な宇宙環境への耐性検証を行うとともに、太陽電池アレイの供給増に対応可能な技術を確立 |
■今後の予定・将来展望
本研究開発において開発した太陽電池セル、カバーガラスおよび太陽電池アレイを当社が開発・製造する衛星をはじめとした多様な国産衛星向けに供給することで、日本の宇宙産業の自律性や競争力を支えるとともに、活発化する宇宙開発へのより一層の貢献を目指します。
■株式会社PXPについて
株式会社PXP(本社:神奈川県相模原市、代表:栗谷川悟)は、太陽光パネル分野で豊富な実績を持つ技術者により2020年に設立された日本発のグリーンテック系スタートアップ企業です。次世代太陽電池セルとして期待される、ペロブスカイト太陽電池セルとカルコパイライト太陽電池セルの技術を融合し、地上だけでなく宇宙にも展開可能な、超軽量で柔軟かつ割れない太陽光パネルの研究開発と量産化を進めています。
■三菱電機の宇宙システム事業について
三菱電機は、JAXAが推進する国内衛星開発プロジェクトを中心に国内外の衛星開発・製造を通じて、日本の宇宙開発におけるリーディングカンパニーの地位を築いてきました。
今後も保有する先端技術を強化し、宇宙システム事業の更なる継続的発展に向けた挑戦を通じて、持続的でレジリエントな社会および豊かな未来の実現に貢献していきます。
■三菱電機グループについて
私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。社会・環境を豊かにしながら事業を発展させる「トレード・オン」の活動を加速させ、サステナビリティを実現します。また、デジタル基盤「Serendie®」を活用し、お客様から得られたデータをデジタル空間に集約・分析するとともに、グループ内が強くつながり知恵を出し合うことで、新たな価値を生み出し社会課題の解決に貢献する「循環型 デジタル・エンジニアリング」を推進しています。1921年の創業以来、100年を超える歴史を有し、社会システム、エネルギーシステム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、デジタルイノベーション、半導体・デバイスといった事業を展開しています。世界に200以上のグループ会社と約15万人の従業員を擁し、2024年度の連結売上高は5 兆5,217 億円でした。詳細は、www.MitsubishiElectric.co.jpをご覧ください。
※1 内閣府、総務省、文科省、経産省が資金を拠出しJAXAに設置した、民間企業や大学の宇宙分野における先端技術開発、技術実証、商業化を支援する基金
※2 地球の低軌道(高度約200~2000キロメートル)に多数の小型衛星を配置し、連携して機能するシステム
※3 光を電気に変換する効率や性能が従来の技術よりも優れた新しいタイプの素子。太陽電池セルや光センサーなどの分野で使用され、エネルギー変換効率の向上や新しい機能の実現が期待される
※4 化合物の結晶構造の一種で、ペロブスカイト(灰チタン石)と同じ結晶構造を持つ。ペロブスカイト構造の化合物は、高い変換効率と低コスト、柔軟性などの特性から、次世代太陽電池セルの材料として注目される
※5 銅(Copper)、インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、セレン(Selenium)を主成分とする化合物半導体材料の略称。太陽電池セルの材料として使用される
※6 ペロブスカイト太陽電池セルとCIGS太陽電池セルを組み合わせた太陽電池セル
※7 現在主流のIII-V族太陽電池セル
※8 当初契約期間は、契約締結日から、最初のステージゲート評価が終了する日の属する年度の末日まで
<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 防衛・宇宙システム事業本部 宇宙システム事業部
〒100-8310 東京都千代田区丸の内二丁目7番3号