河出書房新社
プーチン、トランプ、メルケルら、G8元首脳の異形のクローンを引き連れて、医師ガーリンは核攻撃を避けるため北に向かう……。『青い脂』に連なる新たな巨篇、誕生!

株式会社河出書房新社(本社:東京都新宿区 代表取締役:小野寺優)は、ウラジーミル・ソローキン著『ドクトル・ガーリン』(松下隆志訳)を2025年8月27日に発売いたします
ソローキンは、世界文学のポストモダンな挑発者であり、過激な風刺家であり、完璧なエンターテイナーである。
──ニューヨーク・タイムズ
国家が分裂し断片化した近未来世界。
ウラジーミル(プーチン)、ドナルド(トランプ)、アンゲラ(メルケル)、シンゾー(アベ)など、“尻”のような異形の姿をした元G8首脳のクローン(pb=政治的存在)たち。様々な精神疾患を抱えている彼らを治療するサナトリウム院長ドクトル・ガーリンは、アルタイ共和国への核攻撃をきっかけに、彼らを引き連れて北へ向かうことを決意する。
旅の道中に現れる、身の丈3メートルを超すバイオ巨人、バービー人形のような女神を信奉する〈自由〉という名のアナーキストキャンプ、帝政期ロシアの貴族のように暮らす伯爵一族、カザフスタンから来る麻薬販売キャラバン、多種多様な人間的存在が登場する見世物サーカスなど。そして日常化する戦争。
戦禍に巻き込まれ、愛する人を失い、さらにはミュータントたちの収容所に囚われるガーリンは、過酷な環境の中であらゆる希望を失いそうになるが、アルビノの女性と、ひょんなことから入手していた「白いオオガラス」への崇拝を記した本によってそれらを乗り越える。そしてその先に待ち受ける物語のラストとは……。
本書は、世界で評価の高まる怪物作家ウラジーミル・ソローキンの新境地にして、マルチバース的な近未来を圧倒的な想像力で描く愛の物語です。
■目次
第一部 サナトリム〈アルタイ杉〉
第二部 北へ
第三部 バルナウル
第四部 マトリョーシカ
第五部 空を向く目
第六部 白いカラス
第七部 白いオオガラス
訳者あとがき
■著者のウラジーミル・ソローキンについて

ウラジーミル・ソローキン(Vladimir Sorokin)
1955年ロシア生まれ。70年代後半からモスクワのコンセプチュアリズム芸術運動に関わる。85年、当時のソ連を象徴する風景を戯画化した作品『行列』を発表し、欧米で注目を集める。以後『マリーナの三十番目の恋』(82-84)、『ロマン』(85-89)、『四人の心臓』(91)、『青い脂』(99)のほか、『氷』(2002)、『ブロの道』(04)、『23000』(05)と続く〈氷三部作〉や、『親衛隊士の日』(06)、『砂糖のクレムリン』(08)、『吹雪』(10)などを発表し、2010年には『氷』でゴーリキー賞、『吹雪』でNOS賞受賞。さらに長篇『テルリア』(13)、長篇『マナラガ』(17)、短篇集『白い正方形』(18)、『ドクトル・ガーリン』(21)などを発表。英語圏などでも高く評価され、2014年度国際ブッカー賞最終候補。2020年には『吹雪』でスーパーNOS賞受賞。
■訳者紹介
松下隆志(まつした・たかし)
1984年生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。岩手大学准教授。著書に、『ロシア文学の怪物たち』(書肆侃侃房)、『ナショナルな欲望のゆくえ──ソ連後のロシア文学を読み解く』(共和国)、訳書に、V・ソローキン『青い脂』(共訳、河出書房新社)、『親衛隊士の日』、『氷』『ブロの道』『23000』とつづく『氷三部作』、『テルリア』『マリーナの三十番目の恋』『吹雪』(いずれも河出書房新社)、E・ザミャーチン『われら』(光文社古典新訳文庫)、Yu・マムレーエフ『穴持たずども』(白水社)など。
■書誌情報
書名:ドクトル・ガーリン
著者:ウラジーミル・ソローキン
訳者:松下隆志
仕様:四六変型判/上製/472ページ
初版発売日:2025年8月27日
定価:5,720円(本体5,200円)
ISBN:978-4-309-20932-6
