日揮HD
-日本コンソーシアムと協力して米国CFS社へ出資-
日揮ホールディングス株式会社(代表取締役会長兼社長CEO 佐藤 雅之)は、国内EPC事業会社である日揮株式会社(代表取締役社長執行役員 山口 康春、以下「日揮」)が、フュージョン(核融合)エネルギー発電の商業化を目指す米国コモンウェルス・フュージョン・システムズ(Commonwealth Fusion Systems LLC、以下「CFS社」)へ出資を行いましたので、お知らせします。
本出資は、CFS 社が将来的な世界展開を見据えて日本企業との連携を企図するなか、三井物産・三菱商事をリーダーとする日本コンソーシアム※1の一員して出資に参画するものであり、日揮はCFS社に対して日揮グループの米国子会社を経由して、出資を行いました。
※1:日揮のほか三井物産株式会社、三菱商事株式会社、関西電力株式会社、株式会社JERA、株式会社商船三井、株式会社日本政策投資銀行、NTT株式会社、株式会社フジクラ、株式会社三井住友銀行、三井住友信託銀行株式会社、三井不動産株式会社(合計12社)で構成
フュージョンエネルギー発電は、その発電過程で二酸化炭素を排出しないことから、エネルギー需要への対応と脱炭素社会の実現を両立させる次世代エネルギー源と期待されています。一方でフュージョンエネルギー発電炉は、現状ではまだ研究段階であり、商用化に向けては超高温・高圧のプラズマ状態を維持し、安定的に核融合反応を継続させるための制御技術や、核融合反応に必要なトリチウムの取り扱いが重要な課題です。
CFS社は、磁場閉じ込め方式(トカマク型)※2によるフュージョンエネルギー発電炉の設計・開発を進める、業界のリーディングカンパニーです。CFS社は、世界初となる商業用フュージョンエネルギー発電炉「ARC(アーク)」を米国バージニア州に建設する計画を発表しており、2030年代前半の運転開始を目指しています。
日本コンソーシアムは、CFS社が米国で推進する商用化プロジェクトから、政策・規制、ARCの開発・建設・運転・保守に係る技術的・商業的な知見を獲得します。更に、各社が有するノウハウや専門性を持ち寄り、日本におけるフュージョンエネルギー発電の早期商用化・産業化を目指します。日本コンソーシアムとCFS社の連携は、日米両国によるフュージョンエネルギー発電の開発と商業化を加速するための共同パートナーシップ※3に沿うものであり、両国における商業化の早期実現に向けた強い意志と機運の高まりを体現しています。
※2 ドーナツ状(トーラス)の形状で、強力な磁場を使って超高温プラズマを閉じ込める核融合装置
※3 盛山文部科学大臣とターク米国エネルギー省(DOE)副長官による共同声明
https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2024/20240409_2.html
日揮は、CFS社が推進する世界初のARCの実現に向けて、次の事項について今後CFS社と協議を進めていく予定です。
(1)日揮は過去にNIFS※4およびQST※5向けにプラント規模のトリチウム除去設備の国内唯一のEPC(設計・調達・建設)コントラクターとして受注・遂行した実績を持つ。このEPCプロジェクト実績を通じて得た知見・経験をベースにARCの実現に向けたトリチウム除去設備の設計・建設における協力。
※4:自然科学研究機構 核融合科学研究所
※5:国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
(2)ARCの実現に向けて、フュージョンエネルギー発電炉及び同関連(周辺)設備を発電所として効率的に機能させるための全体インテグレーション、EPC、オペレーション&メンテナンス(O&M)等に関するサポートを提供。特にARC では、フュージョンエネルギー発電炉の重要付帯設備であるブランケット(核融合熱取出し設備)やこれに接続される熱交換設備などが、世界で初めて発電プラントとして建設されることから、当社グループが長年携わってきた高温高圧条件下のプロセスプラントや、原子力発電における低レベル廃棄物処理プラントの設計・建設業務で培った技術や技術の統合力、知見を活用した協力が可能。
日揮グループは、CVCファンド「JGC MIRAI Innovation Fund」を通じて、核融合炉の加熱装置や熱取出し装置で先進的な技術を有するスターアップ企業「京都フュージョニアリング株式会社」や、核融合炉の燃料の一つである希少鉱物資源ベリリウムを低コストかつ省エネルギーで精製する技術を持つスタートアップ企業「株式会社MiRESSO」に出資しています。また、1970年代から約50年以上に亘って、国内の使用済核燃料再処理施設や放射性廃棄物処理・処分施設などのEPC事業や関連する技術の研鑽・獲得を行ってきました。
今後、世界的に化石エネルギーから水素・アンモニアや再生可能エネルギーといった二酸化炭素を排出しないエネルギーへの転換、さらに夢のエネルギーともいわれるフュージョンエネルギー発電へのエネルギー転換が進んでいくなかで、当社グループはこれまでに幅広いエネルギー・化学分野で培ってきた技術力、そして技術統合力をベースに、既存エネルギーの低・脱炭素化だけでなく、地球の持続可能性に資する次世代エネルギーの実現に向けて、引き続き積極的に取り組んでいく所存です。