東宝東和株式会社
世界最高峰の英国ロイヤル・バレエの舞台が映画館で楽しめる「英国ロイヤル・オペラ・バレエ&オペラ in シネマ」。映画館の大スクリーンと迫力ある音響で最高峰の公演を堪能できる、至極の体験をお届けします。
四部作『ニーベルングの指環』の第1日『ワルキューレ』
アントニオ・パッパーノ×バリー・コスキーによる新演出でスクリーンに登場!
ジャーナリスト/音楽・映画・ミュージカルナビゲーターの
石川了氏の解説とともに見どころを一挙ご紹介!

19世紀の巨匠リヒャルト・ワーグナーが26年の歳月をかけて完成させた四部作『ニーベルングの指環』。その第2作にあたる『ワルキューレ』が、英国ロイヤル・オペラによる新制作としてスクリーンに登場する。
神々、人間、そして地底に住むニーベルング族が織りなす本作は、権力、愛、裏切りが複雑に交錯する壮大な叙事詩だ。石川氏は、J.R.R.トールキンの「指輪物語」との類似点や相違点にも言及しながら、文学と音楽の両面に通底する普遍的テーマ性に光を当てている。
石川氏は「初めて観る方はもちろん、前作『ラインの黄金』を観ていなくても全く問題なく楽しめる」と語る。禁断の愛、家族の葛藤、別れなど、感情に訴えるドラマが鮮烈に描かれており、ストーリー展開も明快。中でも「ワルキューレの騎行」をはじめとする音楽は、劇的かつ感動的で、観る者の心を揺さぶる。
また、「ワーグナーはライトモティーフという手法を使って音楽ドラマを描いた」と石川氏は解説する。ライトモティーフとは、感情や状況、登場人物などを象徴する短い旋律で構成され、それが繰り返し登場することで、観客は「どこかで聴いたことがある」と無意識に気づき、物語の理解が深まっていく仕組みだ。映画「スター・ウォーズ」シリーズの音楽にも通じるこの手法により、音楽は過去・現在・未来の時間軸や人間関係のつながりまでも表現し、極めて革新的な音楽ドラマを実現している。
本作の音楽監督を務めるのは、英国ロイヤル・オペラ史上最長の22年間にわたってその地位を担い、2025年5月には初の「桂冠指揮者」の称号を授与されたアントニオ・パッパーノ。彼の指揮は、歌手の声を最大限に引き立てるテンポ設定と、オーケストラとの精緻なバランス感覚、そして音楽に込められた圧倒的な推進力に定評がある。
演出を手がけるのは、世界的に活躍する演出家バリー・コスキー。今回の舞台は、彼がテレビで目にした故郷オーストラリアの山火事にインスピレーションを得て構想されている。環境が破壊された終末的な世界を、大地の母神エルダ(ブリュンヒルデの母)の視点から描くことで、新たな解釈を提示している。石川氏も「この『ワルキューレ』でも、冒頭の嵐の音楽からブリュンヒルデが炎に包まれるラストまで、緊張感が持続する音楽のドラマにスクリーンから目が離せない」と賞賛を送っている。
キャストは、パッパーノとコスキーが時間をかけて選び抜いた実力派たちが集結した。ヴォータン役には、「パリ・オペラ座 INシネマ2025」の『蝶々夫人』(9月12日公開)でシャープレス役を務めるクリストファー・モルトマン。ブリュンヒルデ役には、2025年1月新国立劇場『さまよえるオランダ人』でゼンタを歌ったエリザベート・ストリッド。フリッカはバイロイト音楽祭でも活躍するベテランのメゾ・ソプラノ、マリーナ・プルデンスカヤが名を連ねる。さらに、ジークムント役には、叙情的ヘルデンテノールとして注目されるフランス人テノール、スタニスラス・ド・バルベラク。そして、ジークリンデ役には急遽代役として抜擢されたナタリア・ロマニウが登場。石川氏は「オペラはこのようなスター誕生のドラマが生まれるから、やはりRBOシネマシーズンは常にチェックしておきたい」と語り、劇場で観る臨場感あふれる映像体験を強く勧めている。
石川 了(ジャーナリスト/音楽・映画・ミュージカルナビゲーター)
『ワルキューレ』解説全文はコチラ
https://tohotowa.co.jp/roh/news/2025/09/01/kaisetsu_die_walkure2024/

【STORY】
不幸な結婚をしているジークリンデのもとに、敵に追われた男ジークムントが逃げ込んでくる。二人はすぐに惹かれ合うが、彼は彼女の生き別れとなっていた双子の兄だった。ジークリンデは夫フンディングに眠り薬を盛り、ジークムントは家にあるトネリコの木に突き刺さった剣を引き抜く。こうして兄妹は、禁断の愛で結ばれる。この展開は元々、神々の長ヴォータンが意図したことであったが、結婚の女神であり、ヴォータンの妻であるフリッカの猛烈な反対に遭う。ヴォータンは戦乙女ワルキューレである愛娘ブリュンヒルデが彼の命令に背いてジークムントの命を救おうとしたことを罰して、彼女を炎で囲んで眠りにつかせる。
《ワルキューレ》(全3幕)
音楽・台本:リヒャルト・ワーグナー
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:バリー・コスキー
美術:ルーフス・デイドヴィスス
衣裳:ヴィクトリア・ベーア
照明:アレッサンドロ・カルレッティ
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
コンサートマスター:マグヌス・ジョンストン
映像監督:ピーター・ジョーンズ
〈キャスト〉
ヴォータン:クリストファー・モルトマン
ブリュンヒルデ:エリザベート・ストリッド
ジークリンデ:ナタリア・ロマニウ
ジークムント:スタニスラス・ド・バルベラク
フンディング:ソロマン・ハワード
フリッカ:マリーナ・プルデンスカヤ
ヘルムヴィーゲ:マイダ・フンデリング
オルトリンデ:ケイティ・ロウ
ゲルヒルデ:リー・ビセット
ヴァルトラウテ:クレア・バーネット=ジョーンズ
ジークルーネ:キャサリン・カービー
ロスヴァイセ:アリソン・ケトルウェル
グリムゲルデ:モニカ=エヴェリン・リーヴ
シュヴェルトライテ:ロンダ・ブラウン
俳優:イローナ・リンスウェイト
2025年5月14日上演作品
上映時間:5時間12分

©2025 Monika Rittershaus
9/5(金)~9/11(木) TOHOシネマズ 日本橋 ほか1週間限定公開!
■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/
■配給:東宝東和
