株式会社帝国データバンク
TDB景気動向調査(全国)― 2025年8月調査 ―

株式会社帝国データバンクは、2万6,162社を対象とした2025年8月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表いたしました。
■調査結果のポイント
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2025年8月の景気DIは前月比0.5ポイント増の43.3となり、3カ月連続で改善した。国内景気は、米国の関税政策に不確定要因が残るものの、猛暑による川上から川下までの特需や全国の建設需要がけん引し、上向き傾向が続いた。今後の国内景気は、実質賃金の行方を見極めつつ、当面は横ばい圏での推移が見込まれる。
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『製造』『建設』『小売』など9業界で改善、『サービス』のみ悪化した。規模別では、「大企業」「中小企業」「小規模企業」が2024年9月以来11カ月ぶりにそろって改善した。「大企業」は『製造』や『小売』がけん引し、4カ月連続で上向いた。地域別では10地域中8地域が改善、各地の建設需要などがプラス材料となった。
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[今月のトピックス] 飲食関連の景況感は、お盆休み期間の賑わいや季節需要などから川上から川下まで幅広い業種で改善した。
次回発表日は10月3日(金)13時30分を予定しております。
< 2025年8月の動向 : 改善傾向 >
2025年8月の景気DIは前月比0.5ポイント増の43.3となり、3カ月連続で改善した。国内景気は、米国の関税政策に不確定要因が残るものの、猛暑による川上から川下までの特需や全国の建設需要がけん引し、上向き傾向が続いた。
8月は、記録的猛暑の影響で飲食関連や熱中症対策商材、エアコンなどに特需が生じ、幅広い業種に波及した。日経平均株価が過去最高値を更新するなど、金融市場は活況だった。公共工事の発注が続き建設需要も堅調に推移したほか、旅行関連は好材料。一方でトランプ関税をめぐる日米合意後の混乱は外需の逆風となったほか、屋外レジャーの低迷や価格転嫁の遅れも下押し要因だった。

< 今後の見通し : 横ばい傾向 >
今後は、実質賃金と手取り収入の改善、そしてインフレ対策が個人消費に与える影響が焦点となる。AI関連の設備投資と訪日客の増加は景気の下支え要因である。他方、米国の関税措置では自動車関連の引き下げ時期の確定が急がれ、貿易取引におけるルールの明確化が不可欠となる。人手不足と物価高は引き続き重しとなり、追加利上げの時期も注視が必要だ。
国内景気は、実質賃金の行方を見極めつつ、当面は横ばい圏での推移が見込まれる。

業界別:10業界中9業界が改善、お盆休みの賑わいなどが好材料に
『製造』『建設』『小売』など9業界で改善、『サービス』のみ悪化した。お盆休み期間の賑わいなどから飲食関係は川上から川下まで幅広く改善した。また、季節需要や全国各地の建設需要も景気を押し上げた。加えて、運輸関係は貨物・旅客輸送ともに一定の需要を確保した。他方、人材確保が難しく技術者の不足や物価上昇の圧力に対して価格の転嫁が進まない点などは悪材料だった。

『製造』(39.6)…前月比0.7ポイント増。3カ月連続で改善。「飲食料品・飼料製造」(同1.5ポイント増)は、飲食店や食品スーパーなどで需要が増え2カ月連続で改善した。建設部材の需要などが押し上げ「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同1.2ポイント増)は、低水準ながら4カ月連続で上向いた。また、「化学品製造」(同0.9ポイント増)も同じく2カ月連続で改善した。
他方、「輸送用機械・器具製造」(同1.6ポイント減)は、自動車関税の引き下げ時期が決まらず各社の負担感が増すなか、一部メーカーの低迷なども重なり3カ月ぶりに悪化した。
『小売』(39.4)…同0.5ポイント増。3カ月連続で改善。「飲食料品小売」(同0.4ポイント増)は、お盆休みの賑わいなどから4カ月ぶりに上向いた。また、熱中症対策や日焼け止めなど季節需要が好調な「医薬品・日用雑貨品小売」(同1.4ポイント増)は4カ月連続で改善した。加えて、猛暑によりエアコン販売が好調といった声が複数寄せられた「家電・情報機器小売」(同0.1ポイント増)は、3カ月連続で40台を維持した。
『金融』(46.5)…同0.3ポイント増。2カ月ぶりに改善。月後半に日経平均株価が最高値を更新するなか、「資金流入傾向が続いている。世界的な株高も好影響」(証券投資信託委託)などといった声もあり、良好な投資環境などが押し上げ要因となった。また、貸出金の利回り改善から利息収入の増加といった声も聞かれ、銀行などの景況感が改善した。
『サービス』(48.2)…同0.1ポイント減。3カ月ぶりに悪化。連日の猛暑から屋外レジャーの利用減少が景況感を下押しした「娯楽サービス」(同1.8ポイント減)は、2カ月ぶりに落ち込んだ。「広告関連」(同1.5ポイント減)も、猛暑のため、屋外イベントが減っているといった声があがり4カ月ぶりに悪化した。また、「人材派遣・紹介」(同1.6ポイント減)は、派遣先の減産や人材確保の課題により再び下向いた。
他方、夏休みで家族連れの利用が増えたなどの声が寄せられた「飲食店」(同1.2ポイント増)は、3カ月連続で改善した。
規模別:11カ月ぶりに全規模がそろって改善、「大企業」は4カ月連続で上昇
「大企業」「中小企業」「小規模企業」が2024年9月以来11カ月ぶりにそろって改善。『製造』や『卸売』など6業界が全規模で上向いた。「大企業」は『製造』や『小売』がけん引し、4カ月連続での改善となった

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「大企業」(47.8)…前月比0.5ポイント増。4カ月連続で改善。2カ月連続でDIが50台を維持した「電気機械製造」など『製造』がリードしていた。「物価高騰から売り上げが増加」という声が聞かれた『小売』も改善した。
「中小企業」(42.6)…同0.6ポイント増。2カ月連続で改善。『卸売』は猛暑による飲料や製氷の好調が寄与した「飲食料品卸売」など9業種中8業種が上向いた。DIが50台に迫った「精密機械、医療機械・器具製造」を含む『製造』もけん引した。
「小規模企業」(41.7)…同0.8ポイント増。2カ月ぶりに改善。『農・林・水産』は、「養鶏」や「米作農」で商品相場が上昇したとの声が聞かれ大幅に上向いた。「繁忙期が続いている」などのコメントが寄せられた『建設』も全体を押し上げた。
地域別:10地域中8地域が改善、各地の建設需要などがプラス材料に
『北海道』『近畿』など10地域中8地域が改善、『北関東』が悪化、『九州』が横ばい。都道府県別では33都道府県が改善、13県が悪化。各地の建設需要などがプラス要因だった一方で、一部の自動車関連の低迷が押し下げ要因となった。

『北海道』(43.9)…前月比0.2ポイント増。2カ月ぶりに改善。10業界中5業界が上向いた。米価や乳価の上昇などを背景に『農・林・水産』が大幅に改善した。「飲食料品・飼料製造」など『製造』も好調で、けん引役となった。
『近畿』(42.7)…同1.2ポイント増。5カ月ぶりに改善。域内6府県中5府県が上向いた。夏休み期間の大阪・関西万博による人流増加をあげる声が聞かれた。建築工事が好調だった『建設』は同2.2ポイント増加し、地域景気を後押しした。
『北関東』(41.0)…同0.3ポイント減。3カ月ぶりに悪化。域内5県中3県が下向いた。暑さにより人の動きが鈍かったことで大幅に悪化した『サービス』や、自動車関連の低迷による影響を受けた『製造』が全体を押し下げた。
【今月のトピックス】
飲食関連の景況感に関する動向
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飲食関連の景況感は、お盆休み期間の賑わいや季節需要などから川上から川下まで幅広い業種で改善した
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東京都の猛暑が家計消費支出に与える影響、『食料』は「外食」や「飲料」ほかアイスなどの「菓子類」が伸び、約192億円増加と推計

【調査先企業の属性】.
1.調査対象(2万6,162社、有効回答企業1万701社、回答率40.9%)
2.調査事項
景況感(現在)および先行きに対する見通し
経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
3.調査時期・方法
2025年8月18日~8月31日(インターネット調査)
【景気動向指数(景気DI)について】
■TDB景気動向調査の目的および調査項目
全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万6千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。
■調査先企業の選定
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。
■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。
景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。
■企業規模区分
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。
■景気予測DI
景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している
【地域別はこちら】
北海道(道東・日胆)
東海(岐阜・静岡・愛知・三重)
東北 (青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)
近畿(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)
北関東(茨城・栃木・群馬・山梨・長野)
中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)
南関東(埼玉・千葉・東京・神奈川)
四国(徳島・香川・愛媛・高知)
北陸 (新潟・富山・石川・福井)
九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)
【TDB景気動向調査ご協力企業さま募集】
当調査は全国で2万7千社を超える企業にご協力いただいている、月次の景況調査では国内最大の統計調査です。
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