ポーラ・オルビスHD
感触・安全性・安定性など処方設計を多面的に支援するAIシステムを開発
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、化粧品開発支援AIシステム「AIM POLAR(エイム ポーラー)」を開発しました。AIとの共創で、よりクリエイティブかつスピーディなモノづくりを実現し、先駆的な製品の研究開発を推進していきます。
ポーラ化成工業の独自AIが進化、クリエイティブかつスピーディなモノづくりへ
ポーラ化成工業では創業以来、化粧品づくりにおいて使い心地に直結する「感触」を大切にしています。近年では、未来を先取りした新しい感触や、お客様一人ひとりが望む感触を提供するパーソナライズ化粧品の実現など、独創的かつ先駆的なモノづくりを極めたいと、独自AIの研究開発に取り組んできました(※1)。
この度、「目標の感触を実現する最適な成分組成(処方)」を予測するAIを構築しました。本AIは、化粧品の開発者が行うモノづくりと同じように、実現したい感触をもとに処方例を予測する機能とともに、カギとなるであろう成分を提示するように設計されています。開発者は自身のアイデアに、膨大なデータに基づくAIの予測結果を組み合わせたり、的確に有力な処方を絞り込み試作の回数を減らしたりして、クリエイティブかつスピーディに最適な処方を創出することができます。
さらに、化粧品の開発に必要不可欠な「品質を予測するAI」も構築し、これまでに構築したAIをすべて統合してAIシステム「AIM POLAR(エイムポーラー)」を完成させました(図1、補足資料1)。
※1 参考リリース:
「感触づくりAI」を構築、化粧品開発にブレイクスルー AIとの共創で”狙い通りの感触”を速やかに実現 (2021年7月29日)
ヒトとAIによる化粧品の共創 感触づくりAIにより化粧品づくりの発想を広げる (2022年9月15日)
共創パートナーとなるAIを構築、長年の処方設計ノウハウを「AIM POLAR」に
急速に多様化する化粧品へのニーズに応えるため、ポーラ化成工業は先駆的な製品をいち早く生み出し続けたいと考えています。先駆的なモノづくりをスピーディに進めるためには、開発者の個性やクリエイティビティに溢れる発想の他、製品に関する知識や長年のノウハウに紐づくデータを整理し上手く活用する必要があります。
「AIM POLAR」には、ポーラ化成工業が保有する数百種類もの製品に関するデータ(処方や感触、品質など)を学習させ、代々連綿と紡いできた処方設計の独自ノウハウを凝縮しました。これにより、ポーラ化成工業が長年大切にしてきた、使い心地の良いこだわりの詰まった感触や、安全性や安定性などの品質を総合的に考慮した“ポーラ化成工業らしい”処方例を瞬時に提示することができます。このように、「AIM POLAR」は先駆的なモノづくりの強力な共創パートナーとなります(補足資料2)。
なお、本開発は株式会社SBX(本社:東京都品川区、社長:北野宏明)(補足資料3)と共同で実施しました。

人とAIの共創により先駆的な製品の研究開発を推進(補足資料4)
「AIM POLAR」の活用は、既存のモノづくりの範疇には留まりません。アイデアの壁打ち相手として開発者のクリエイティビティを刺激し、創造力を引き出すツールとしても活躍します。また、開発者に短期間で多様な処方設計に触れる機会を与えることができるため、スキルアップツールとしても活用できると期待しています。
「AIM POLAR」を活用することで、まだ実現できていない新感覚の感触など、お客様に楽しんでいただける、わくわくするような新製品の創出につなげたいと考えています。
【補足資料1】AIシステム「AIM POLAR(エイム ポーラー)」の名称
「AIM POLAR」という名称には、「化粧品開発における究極の地を目指す」という意味を込めました。人とAIの共創により、最果てにある未踏の領域に挑み新たな価値を拓くことで、製品の先駆性・革新性を高めようという意思を反映しています。
また、ポーラ化成工業の英字ロゴに用いられる“POLA R&M”と、“AI”を組み合わせたアナグラムにもなっています。

【補足資料2】「AIM POLAR」の活用事例
これまでの感触設計は、多種多様な原料を組み合わせた処方について、試作・評価を繰り返すことで最適な処方を決定していました。これに対し、「AIM POLAR」ではその検討の大半を机上のみで実施できるため、試作回数を大幅に減らしてよりスピーディに進めることができます。さらに、試作回数が減ることで廃棄物が削減され、環境負荷の低減にも貢献できます。
ここでは、「AIM POLAR」の活用事例として、AI予測による化粧品の感触設計についてご紹介します。「AIM POLAR」は、感触をレーダーチャートにより視覚化することができます。ある目元専用クリームの開発では、お客様のニーズの変化に合わせ、従来品の「なめらかにのび、しっとりうるおう」感触を一新し、「クリームがしっかり目元に密着し、うるおいとハリを実感できる」感触を目指すこととしました。そこで、しっかりした密着感につながる“かたさ”“被膜感がある”を向上させ、うるおいとハリの実感のため“しっとり”は維持しつつ“ハリがある”を向上させる目標スコアを設定、「AIM POLAR」にそれを実現する処方を提示させました。さらに、品質の予測結果から問題のない処方を絞り込み、開発候補品として選定しました。
開発候補品のレーダーチャートからは、目標を満たす処方例を設計できていることが分かります(図3)。実際に試作して感触を評価したところ、特徴的な4つの感触を狙い通り実感することができました。数名の開発者による使用テストでは、「クリームを塗り広げると目元にしっかり密着し、うるおいが続きハリを感じることができる」との評価結果でした。
このように、「AIM POLAR」を活用した机上検討により候補を絞り込み、有力な処方のみを実際に試作・評価することで、製品開発をスピーディに進めることができます。「AIM POLAR」による感触設計は、実際の製品開発でも活用を広げています。

【補足資料3】株式会社SBXについて
株式会社SBXは、Create an Engine for Scientific Discoveryをヴィジョンに掲げ、バイオメディカル分野を中心にさまざまな課題のソリューションに取り組む企業です。2011年、NPO法人システム・バイオロジー研究機構(SBI)の基礎研究の成果を社会実装するための架け橋として設立されました。バイオメディカル分野で培った豊富な研究経験・専門知識をベースに、創薬、臨床、ヘルスケア、さらに広範な分野でのサイエンスを支援する高度なインテリジェントサービスを提供しています。SBXは、独自のAIとデータ分析・自然言語解析のプラットフォーム(Gandhara, Taxila)、さらに自動化とIoTプラットフォーム(Garuda)などを駆使し、新たなサイエンスの地平を拓くグローバルリーダーとの強固なパートナーシップを構築しています。
【補足資料4】「AIM POLAR」との共創による価値創出
「AIM POLAR」には、ポーラ化成工業が長年蓄積してきた膨大なデータ・ノウハウが集約されています。「AIM POLAR」を活用することで、開発者は目標とする化粧品に最適な処方をいち早く見出せるだけでなく、時には予測結果から自身のアイデアにはないまだ見ぬ感触や処方のヒントを得ることもあります。将来的には、開発者のアイデアやセンスと掛け合わさることで、製品の先駆的・革新的な発想が生まれるきっかけとなると考えています。例えば、これまで実現をなしえなかった未知の感触などが生まれると期待しています(図4左)。
化粧品開発には、科学的な専門知識の他、豊富な原料情報や多岐に渡るノウハウが不可欠であるため、開発者はそれらを習得するために長い開発経験を要していました。「AIM POLAR」は、多様な化粧品に対応しており、目標とする化粧品に合わせた最適な処方を提示できるため、開発者が処方設計ノウハウを多面的・効率的に学ぶツールとしても活用されています。「AIM POLAR」を用いた机上での疑似的な開発経験を通して短期間で知識・ノウハウを蓄積することにより、開発者の加速度的なスキルアップが期待されます(図4右)。
