文化庁
複数の視点から日本で生まれた多様な美術表現に光をあてる 国立新美術館と香港 M+による初の協働企画
国立新美術館と香港M+は、現代美術への関心と情熱を共有し、2024年3月にパートナー提携を結びました。日本の美術史を再検証する構想は3年前に始まり、このたび両館の協働により「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現1989-2010」として2025年9月3日に開幕いたしました。

1989年から2010年までの21年間は、昭和から平成への移行、冷戦終結、グローバル化の進展など、社会が大きく変動した時代です。本展は、そうした変化と移動と転換の中で、日本でどのような美術が生まれ、どのような表現が発信されたのか。日本というプラットフォームを複数の視点から見つめ、本展では国内外の50名/組を超えるアーティストの実践を検証します。
本展は数年にわたる両館の対話と協力の成果であり、M+が長年培ってきた日本美術への深い理解に基づき協働キュレーションが実現しました。日本の芸術文化は多くの外的影響を受けてきました。近年では、日本の現代美術は国境を越えて多くの創造的で好奇心旺盛な人々に広く受け入れられています。この開かれた、多孔的で、国際的な気質を最重要視し、本展は企画されました。
2025年は第二次世界大戦の終結から80年を迎える年です。また時代を特徴づけた1970年の初回から55年を経て、第2回目の大阪・関西万博が開催された年でもあります。こうした歴史的な出来事が相次ぐことにより、国籍や文化の違いを超えてつながり、越境することの重要性にあらためて気づかされるのではないでしょうか。本展は相互につながり、国境のない世界観が疑われ始めている現在、グローバリズムの価値をささやかに肯定するものです。本展をご覧になった方々が、現状からの前進は記憶や熟慮と同じように、対話と理解に基づくと信じる私たちに賛同いただけることを願っています。
出品作家
会田誠、マシュー・バーニー、蔡國強、クリスト、フランソワ・キュルレ、ダムタイプ、福田美蘭、ドミニク・ゴンザレス=フォルステル、デイヴィッド・ハモンズ、ピエール・ユイグ、石内都、ジョーン・ジョナス、笠原恵実子、川俣正、風間サチコ、小泉明郎、イ・ブル、シャロン・ロックハート、宮島達男、森万里子、森村泰昌、村上隆、長島有里枝、中原浩大、中村政人、奈良美智、西山美なコ、大竹伸朗、大岩オスカール、小沢剛、フィリップ・パレーノ、ナウィン・ラワンチャイクン、志賀理江子、島袋道浩、下道基行、曽根裕、サイモン・スターリング、ヒト・シュタイエル、トーマス・シュトゥルート、束芋、高嶺格、フィオナ・タン、照屋勇賢、リクリット・ティラヴァニャ、椿昇、フランツ・ヴェスト、西京人、山城知佳子、やなぎみわ、柳幸典、ヤノベケンジ、米田知子、ほか、および関連資料
※姓アルファベット順
Curators’ comments
国立新美術館との今回のコラボレーションは、私たちM+の国際性に富んだコレクションや企画において、今後日本の現代美術をより広く、より深く扱うための重要な節目となるでしょう。
「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989–2010」が焦点を当てるのは、日本の文化と社会が大きな変革を迎えた、グローバル化の最初の20年です。現代アートが実り多い交流と対話の場として機能していたこの時期に対して、私たちは自信を持って新たな視点を提示します。国家という枠組みを超えた豊かな国際性の歴史を再提示するとともに、21世紀においてもより広い世界の中で対話を続けることの重要性について、考え直す機会を皆さまに提供したいと思っています。
ドリアン・チョン (M+アーティスティック・ディレクター、チーフ・キュレーター)
日常に向けた眼差しを投射する、社会政治的なメッセージを帯びたアーティストたちの実践が、日本で、日本から、力強く独自性に富んだ美術表現を生みだした時代を、振り返ります。
このチャレンジを、香港・M+、東京・国立新美術館、アジアの2都市に根差す美術館の対話によって試み、複数の視点から、私たちをとりまく社会、政治、経済、テクノロジーがダイナミックに変化した、複雑な時代に立ち現れた美術表現を捉えます。
神谷幸江 (国立新美術館 学芸課長)
関連イベント
アーティスト・トーク
2025年9月13日(土) 14:00-17:00
会場:国立新美術館 3階講堂
参加費:無料 ただし、本展の観覧券(半券可)が必要です。
出演:森村泰昌、風間サチコ、フィオナ・タン、西京人(小沢剛、ギムホンソック)
「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現1989-2010」展の開幕を記念し、参加アーティストによるアーティスト・トークを開催します。本展の構成にしたがって、「過去という亡霊」「自己と他者と」「コミュニティの持つ未来」の3つの章(キュレトリアル・レンズ)と、本展の導入にあたる「イントロダクション:新たな批評性」から3名と1組のアーティストが登壇します。
国立新美術館学芸課長 神谷幸江(かみや・ゆきえ)と主任研究員 尹志慧(ゆん・じへ)がナビゲーターとして、各アーティストとともにお話を進行します。出品作品の制作と発表の背景、またその時代に作家は何を経験し実践していたのか、さまざまな視点から時代とアーティストたちの表現を検証します。
マシュー・バーニー《拘束のドローイング9》特別上映
2025年10月25日(土)
① 10:30-12:55/ ②13:30-15:55/ ③16:30-18:55 各回入れ替え制
会場:国立新美術館 3階講堂
参加費:無料 ただし、本展の観覧券(半券可)が必要です。
「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現1989-2010」展に関連し、本展出品作家マシュー・バーニーの映像作品《拘束のドローイング9》 (2005)を上映します。
2005年、金沢21世紀美術館にて開催された個展でプレミア上映された本作は、日本を舞台に制作されました。捕鯨や茶道などさまざまな日本の文化をモチーフに、解放と変貌のラブストーリーが展開されます。なお、本展会場内では、3点組の写真作品《拘束のドローイング9:ミラーポジション》(2005)を御覧いただけます。
シンポジウム
2025年11月7日(金) 15:00-17:00
会場:国立新美術館 3階講堂
参加費:無料 ただし、本展の観覧券(半券可)が必要です。
登壇者:趙純恵(森美術館 アソシエイト・キュレーター)、橋本梓(京都国立近代美術館/国立国際美術館 主任研究員)、山本浩貴(文化研究者、実践女子大学 准教授)、ドリアン・チョン(M+ アーティスティック・ディレクター、チーフ・キュレーター)イザベラ・タム(M+ ビジュアル・アート部門キュレーター)、尹志慧(国立新美術館 主任研究員)
※日本語と英語の同時通訳をご利用いただけます。
※内容や日時は変更になる場合がありますので、ご了承ください。
※詳しくは美術館ホームページをご覧ください。
国立新美術館について

国立新美術館は、あらゆる国や地域の人々がさまざまな芸術表現を体験し、学び、多様な価値観を認め合うことができるアートセンターとして活動しています。国内最大級の展示スペースを生かした多彩な展覧会の開催や、美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、さまざまな教育普及プログラムや国際文化交流の実施に取り組んでいます。
M+について

M+はアジアの現代視覚文化(ヴィジュアルカルチャー)のグローバルミュージアムです。香港の西九龍文化地区(WestK)に位置し、20—21世紀の視覚芸術、デザイン、建築、映像、香港の視覚文化の作品の収集、展示、インタープリテーションに専念しています。ビクトリア湾のランドマークであるM+は、世界的に有名な建築事務所ヘルツォーク&ド・ムーロンが、TFPファレルズとアラップと提携して設計しました。延床面積65,000平方メートルの館内には33のギャラリーのほか、ラーニングハブ、映像センター、リサーチセンター、屋上庭園、その他のイベントやプログラムのためのスペースがあり、M+ファサードは世界最大級サイズのLEDスクリーンで、コミッション作品を中心とした映像プログラムを香港のスカイラインに映し出しています。M+はアジア各地およびそれ以外の地域からの作品を含む学際的なパーマネント・コレクションを保存管理しており、中でもハイライトは世界最大級の規模を誇る中国現代美術を集めたM+シグ・コレクションです。M+は現代視覚文化の研究と発表の拠点として思考と好奇心を触発します。
【開催概要】
展覧会名 時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989–2010
英文表記 Prism of the Real: Making Art in Japan 1989–2010
繁体字表記 時代的稜鏡:日本的藝術實踐 1989–2010
主催 国立新美術館、M+、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
共催 日本経済新聞社
企画 キュレーションチーム
助成 モンドリアン財団
キュラトリアル・ディレクター ドリアン・チョン(M+アーティスティック・ディレクター、チーフ・キュレーター)、
キュレーター イザベラ・タム(M+ビジュアル・アート部門キュレーター)、尹志慧(国立新美術館主任研究員)
コーディネーティング・キュレーター 神谷幸江(国立新美術館学芸課長)
展覧会アドバイザー 逢坂恵理子(国立新美術館長)、林寿美(インディペンデント・キュレーター)
会期 2025年9月 3日(水) ~ 2025年12月 8日(月)
休館日 毎週火曜日*ただし9月23日(火・祝)は開館、9月24日(水)は休館
開館時間 10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
会場 国立新美術館 企画展示室1E(〒106-8558東京都港区六本木7-22-2)
観覧料 2,000円(一般)、1,000円(大学生)、500円(高校生)
一般の方のお問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)