関東工業自動車大学校
若者の車離れは本当か?20代が抱く「所有したい気持ち」と「シェアで十分」という価値観の二極化をアンケートで検証
2025年8月に関東工業自動車大学校では、車未所持者の100名を対象にアンケートを行い、車の購入に関する意識調査を行いました。
https://kanto-koudai.com/blog/20s-car-survey/
車の所有についての考えを教えてください

62%が「自分で所有したい」と回答しており、若年層の間でもマイカー志向は依然として根強いことがわかりました。車を持つことで自由に移動できる安心感や、自分だけの空間を所有する満足感が背景にあると考えられます。
一方で「カーシェアやレンタルで十分」と答えた人も22%おり、必要なときだけ利用するという合理的な価値観も広がっています。さらに16%は「所有したくない」と回答しており、駐車場代や保険料など維持費用の高さが所有を敬遠する理由になっていると推測されます。
全体としては「所有したい派」と「必要時だけ派」の二極化が進んでおり、モビリティサービスの多様化を裏付ける結果となりました。今後は、ライフスタイルに応じて所有とシェアを柔軟に選択できる仕組みが求められるでしょう。
車を持つとしたら、一番の目的は何ですか?

「レジャー・旅行」が35%で最多、次いで「買い物・生活」が28%、「通勤・通学」は22%にとどまりました。20代にとって車は日常の必需品というより、余暇や生活の利便性を高めるツールとして位置づけられていることが見て取れます。公共交通が発達している都市部では特に通勤・通学での必要性が低下しており、その分「休日の楽しみ」や「大きな買い物の利便性」が所有理由を押し上げていると考えられます。
さらに「デート・交友」9%、「家族のため」6%といった回答も一定数あり、ライフステージに応じて利用目的が変化していくことがうかがえます。メーカーや販売側にとっては、「日常の快適性」と「非日常の体験」を両立できる車種の提案や、レジャー向けのアクセサリー・装備を強調した訴求が効果的だといえるでしょう。
車を選ぶ際に最も重視するポイントは何ですか?

最も多かったのは「価格」で34%、続いて「燃費・維持費」が28%と、6割以上がコスト面を最重要視していることが明らかになりました。「デザイン」17%、「安全性」16%と、外観や安心感を重視する層も一定数いますが、「最新技術(自動運転など)」や「環境性能(EVなど)」はほとんど選ばれていません。
これは、20代の多くが“車を買えるか、維持できるか”という現実的な視点を優先していることを示しています。収入が安定する前の若い世代にとって、燃費や保険、税金を含めたトータルコストは特に大きな懸念です。したがって、販売やマーケティングの場面では、単純な車両価格だけでなく、3年間や5年間での総支払額をシミュレーションし、維持費まで含めた「コストパフォーマンスの良さ」を具体的に提示することが、購入意欲を高めるポイントになるでしょう。
車にかかるコストの中で、最も気になるものはどれですか?

「購入費用」が24%で最多でしたが、「駐車場代」21%、「ガソリン代」21%、「車検費用」20%とほぼ同水準で続いており、単一の負担ではなく“全体的な出費感”が所有をためらう要因になっていることがわかります。「自動車保険料」は12%で相対的に低めですが、決して無視できる数字ではありません。若者にとっては車の価格だけでなく、購入後に毎月・毎年積み重なっていくコストが心理的なハードルとなっています。
この結果から見えてくるのは、車に関わる費用が多岐にわたるため、予測可能性と分かりやすさが重要であるということです。残価設定ローンやカーリース、維持費込みの定額制サービスなどは、この不安を和らげる有効な手段になり得ます。つまり「総額でどれくらいかかるのか」を見える化する工夫が求められています。
EV(電気自動車)や自動運転車についてどう思いますか?

「興味はあるがコストが不安」と回答した人が65.7%と圧倒的多数を占めました。「積極的に使いたい」は13.1%にとどまり、「あまり使いたくない」が19.2%、「全く使わない」はごく少数でした。若年層にとってEVや自動運転は魅力的な存在である一方で、購入価格の高さや充電インフラの不足、維持費やバッテリー寿命といった要素が大きな懸念材料となっていることが伺えます。
つまり「興味」と「現実」の間に大きなギャップがある状態です。メーカーや販売側は、補助金や残価設定ローンを含めた実際の負担額をわかりやすく提示する必要があります。また、短期リースやカーシェアでEVを体験できる機会を提供することで、導入の心理的ハードルを下げることも有効です。普及には“身近に感じられる価格設計と体験”が不可欠です。
調査結果まとめ
今回の調査から、20代のカーライフ観は「所有への憧れ」と「必要な時だけで十分」という二極化が進んでいることが明らかになりました。車は通勤手段というよりもレジャーや生活利便性を高める存在として捉えられていますが、購入価格や維持費、駐車場代といったコストへの懸念が大きく、実際の購入をためらう要因となっています。
また、EVや自動運転といった新技術には高い関心がある一方で、コストやインフラ不足が普及の壁となっており、「興味」と「現実」の間にギャップが存在します。今後は、若年層が納得できるコスト提示や体験機会の提供が、自動車業界の成長の鍵となるでしょう。