公益財団法人日本ユニセフ協会

【2025年9月11日 ニューヨーク発】
最新の調査結果によると、8月にガザ地区で栄養不良検査を受けた子どものうち、急性栄養不良に陥っていると確認された割合が過去最高を記録しました。同地区で栄養不良に苦しむ子どもが驚くべき速度で増え続けている事態を受けて、ユニセフ(国連児童基金)は、全ての当事者に対し即時停戦と国際法の遵守をあらためて強く要請しました。
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ガザ全域で行われた検査で急性栄養不良が確認された子どもの割合は、7月の8.3%から8月には13.5%に増加しました。先月、総合的食料安全保障レベル分類(IPC)の分析によって飢きんが確認されたガザ市は、栄養不良で治療を受けた子どもの割合が特に高く、7月の16%から19%に上昇しました。
ガザ地区で栄養支援を行うユニセフのパートナーによる最新データの絶対数を見ると、8月に急性栄養不良と確認された子どもの数は1万2,800人に上ることが明らかになりました。しかし、避難命令と軍事作戦の拡大によりガザ市とガザ北部にある10の外来栄養治療センターが閉鎖されたことから、8月の子どもの検査総数は、減少しています。はるかに多くの検査を行うことが可能な体制があり、また検査の受診を妨げる軍事活動が大幅に少なかった7月に、急性栄養不良と確認された子どもは1万3,000人でした。

最も脆弱な立場にある人々の状況は、悪化の一途をたどっています。治療を受けている子どものうち、最も命を落とす可能性が高い重度急性栄養不良(SAM)と診断される子どもの割合は増加を続けており、年初から急激に上昇しています。8月には治療を受けている子どもの23%が重度急性栄養不良でしたが、これは6カ月前の12%から大幅に増加した数値です。
ユニセフ事務局長キャサリン・ラッセルは次のように述べました。「8月時点で、ガザ市の子どもの5人に1人が急性栄養不良と診断され、ユニセフが提供する命を守る栄養支援と保健医療ケアを必要としていました。ガザ地区への物資供給は増加しています。しかし、戦闘のさらなる拡大により、ガザ市で約12カ所の栄養センターが閉鎖を余儀なくされ、子どもたちはさらに脆弱な状態に置かれています。ガザ市およびガザ全域で、栄養サービスは保護されなければなりません。支援を安全に届けられることができれば予防も、治療も可能である栄養不良に、子どもたちが苦しむことがあってはならないのです」
ユニセフは、ガザ市における軍事攻撃の激化がもたらす危険性を強調し続けています。避難場所や支援が限られているか、ほとんど存在しない状況下で、戦闘が激化し続けることはすでに民間人に不釣り合いな被害をもたらしており、子どもが生き延びるために必要な残りのライフラインのすべてを崩壊させつつあります。これにより子どもは、診断や治療といった命を守るために必要なサービスから切り離されています。
幼い子どもに加え、妊婦や授乳中の女性も、食料不足の影響を特に強く受けています。医療従事者が彼女らへの栄養支援を縮小せざるを得ず、継続的な支援がほとんどないことから、母親たちとその乳児たち、双方にとってリスクが極めて高い状態です。すでにガザ地区では、5人に1人の赤ちゃんが早産または低体重で生まれています。

ユニセフは、栄養支援に取り組むパートナーと連携し、地区内の約140カ所の拠点で栄養に関する基本的な物資の搬入量拡大と配布に取り組んできました。直近では「すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)」の在庫が増え、年末までに発生すると推定される、子どもの重度急性栄養不良(SAM)症例数を治療するのに十分な量となりました。しかしガザ地区内の乳児、妊婦、授乳婦のための、その他の重要な栄養物資の量は現時点で十分ではありません。栄養不良の発生を未然に防ぐため、栄養価の高い食べ物に加え、予防のための備蓄の拡充がただちに必要です。
ガザ地区への商業物資の限定的な流入再開を受け、市場で販売される食料品が増加し、価格は極端な水準から徐々に低下しています。しかし、多くの必需品は依然として、とりわけ最も厳しい状況に追いやられた世帯にとって、価格的に手が届かなかったり、そもそも入手ができなかったりします。
ユニセフは、食料支援の量を増やすとともに、その供給、配分、入手可能性を大幅に改善することについて、緊急の必要性を強調しています。栄養に関する物資や住処、燃料、調理用ガス、食料を生産するためのあらゆる資源についても、同様です。保健医療システムの復旧を支援し、プライマリ・ヘルスケアを含む必要不可欠な保健医療サービスを維持、再開し、保健医療物資をガザ地区外から供給し、ガザ地区内で提供することが極めて重要です。大規模な商業流通、市場システム、生きるために必要不可欠な基本サービス、そして現地での食料生産を回復させることも、飢きんによる最悪の結果を回避するためには不可欠です。

ユニセフは全ての当事者に対し、停戦を再開し国際法上の義務を尊重するよう求めています。国際人道法に基づき、民間人、および民間人が頼みにする病院、避難所、栄養センター、水道システムなどの重要インフラは、常に保護されなければなりません。避難命令下にある家族を含む民間人は、保護され、安全な場所へ自由に移動できる権利が保障され、決して移動を強制されてはなりません。イスラエルは、十分な人道支援物資がガザ地区へ、迅速かつ妨げなく搬入されること、そして人道支援従事者が安全かつ安定して持続的に、命を守る支援を必要な場所に届けられるようにすることを、確保しなければなりません。ユニセフはまた、ハマスおよびその他の武装勢力に対し、残る人質全員の即時解放を要請します。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )