株式会社ナリス化粧品
化粧品技術の最も権威ある国際学会IFSCC Congress 2025 Cannesで発表。シミ改善の新アプローチとして金銀花エキスで老化細胞を除去。

株式会社ナリス化粧品(本社:大阪市福島区、代表取締役社長:村岡弘義)は、肌のシミ部でメラニンが消えずに残る原因として、老化ケラチノサイトがメラニンを活発に取り込み、ため込む性質を発見しました。この発見をもとに、メラニンをため込んだ老化ケラチノサイトを選択的に取り除く新しいシミ改善アプローチが有効であると考え、老化細胞除去効果のある成分を探索。その結果、ツル科の植物から抽出した「金銀(きんぎん)花(か)エキス」にその効果を見出し、この研究成果を2025年9月15日~18日にフランス・カンヌで開催された化粧品技術者の国際学会 IFSCC Congress 2025 にて発表しました。IFSCC Congressは、世界中の化粧品技術者が最新の研究成果を発表・討論する国際的な学術大会です。
■研究の背景
シミは多くの人が抱える代表的な肌悩みです。特に「老人性色素斑」は、一度できると自然に消えることはなく、年齢とともに濃く、大きく広がっていくことが知られています。これまでのシミ改善研究では、メラニンを作る細胞の「メラノサイト」に着目し、その数や活性を抑える方法が提案されてきました。しかしながら通常の顕微鏡では見えない細胞内部を電子顕微鏡で詳しく調べたところ、シミ部の表皮基底層では表皮の大部分を構成する細胞の「ケラチノサイト」にメラニンが集中して存在していることが明らかになりました。そこで当社ではメラニンを多く含むケラチノサイトに着目し、シミの原因解明と新たな改善方法の開発に取り組みました。

■研究内容
ケラチノサイトにメラニンを加えて培養した結果、大きな細胞にメラニンが集中して蓄積することがわかりました。さらに、AIソフトで細胞の輪郭を抽出・解析した結果、細胞が大きくなるほどメラニン量が増え、細胞老化※が進行していることが確認できました。加えて時間経過に沿って老化ケラチノサイトを観察したところ、まるで掃除機のようにモデルメラニンを集め取り込む様子が見られました。また老化ケラチノサイトではメラニンの取り込みに関わる受容体 PAR-2 の発現量が増加しており、PAR-2によってメラニンの取り込みが活性化している可能性が示されました。これらの結果から、シミ部で長期間メラニンが沈着するのは、今回発見した老化ケラチノサイトの「メラニンを積極的に取り込み細胞内に蓄積する性質」と、老化細胞の一般的な性質である「組織から除去されにくい性質」が組み合わさっていることが原因であると考えられます。※細胞老化とは、加齢や酸化ストレス、DNA損傷などにより分裂できなくなった状態の細胞を指します。

▶動画 老化細胞がモデルメラニン(蛍光ビーズ)を取り込んでいる様子
https://www.youtube.com/watch?v=uq2X_JOcDYg

■新しいアプローチ
今回の発見をもとに、老化細胞を除去することができる化粧品成分の探索に取り組みました。100種類以上の成分を調べた結果、ツル科植物「金銀花(スイカズラの花蕾)」から抽出した金銀花エキスが、老化細胞を選択的に除去する効果を持つことを確認しました。この金銀花エキスは、シミ部に長く残る老化細胞を取り除き、皮膚内のメラニン蓄積を解消するという革新的なアプローチで、シミの改善効果が期待できます。



■発表タイトル:Senescent Keratinocytes as‟Melanin Vacuums“:Targeting the Melanin-accumulated Cells for Advanced Skin Brigtening
和文:「メラニンを掃除機のように吸い込む」老化ケラチノサイト:メラニン蓄積細胞を標的とした次世代美白剤の開発
■発表者:株式会社ナリス化粧品 山﨑浩子
研究者プロフィール
山﨑 浩子(やまざき ひろこ)

株式会社ナリス化粧品 研究開発部 研究開発課 基盤技術研究グループ
〈略歴〉
名古屋大学大学院生命農学研究科 応用生命科学科卒業
2009年株式会社ナリス化粧品入社
〈職務経歴〉
入社後、研究開発部 基礎研究グループに配属。
シミ・シワ・毛穴等・幅広く皮膚トラブルに関する研究を行う。