株式会社コーピー

株式会社コーピー (代表取締役:山元 浩平 以下、「コーピー」)とトヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:佐藤 恒治)は、共同で取り組んできた多変量時系列データの新しい解析手法に関する研究成果を発表いたしました 。本成果は、2025年7月に開催された第29回統計物理学国際会議「STATPHYS29」でのポスター発表に加え 、8月末にアトランタで開催された第31回ITS世界会議「ITS World Congress 2025」においても発表が行われました。
研究の背景と概要
近年、都市の交通システムは、車両や道路網が複雑に絡み合う極めて動的なネットワークを形成しています。渋滞緩和や安全な交通環境の実現のためには、交通データから地点間相互の関係性を正確に読み解く必要がありますが、従来の解析手法では、計算コストが膨大になったり、結果の解釈が難しかったりといった課題がありました。
本共同研究では、これらの課題を解決するため、「Reduced Auto-Regressive (RAR)モデル」*に着目しました。RARモデルは、多数の過去データの中から未来の予測に本当に必要な変数だけを自動的に選択する能力に優れています。さらに、このRARモデルは多変数時系列間の関係性抽出も可能であることが示されています**。このモデルを交通量データに適用すれば、複数の地点の交通量データから、地点間の影響度を示す本質的な関係性のみを効率的に抽出できることになります。本共同研究では、この手法を実際に交通量の多い新宿周辺のデータに適用し、どの地点の交通量が、どのくらいの時間の後に、他のどの地点に影響を与えているかを明確な関係性ネットワークとして可視化することに成功しました。
*) K. Judd and A. Mees, Physica D, Volume 82, pp. 426-444, 1995.
**) T. Tanizawa and T. Nakamura, Front. Netw. Physiol., Sec. Systems Interactions and Organ Networks, Volume 2, 2022.
本研究の意義
本研究の意義は、交通解析の分野に、軽量かつ解釈性の高い新たな解析手法を提案した点にあります 。このアプローチは、AIの説明性(Explainable AI)を重視する現代的な潮流にも合致するものです。本手法の利点は以下の通りです。
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軽量な計算コスト: ディープラーニングのような大規模な計算資源を必要とせず、迅速な分析が可能です。これにより、リアルタイムに近い交通状況の把握や、シミュレーションへの応用が期待できます 。
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高い解釈性・説明性: 「ある地点の交通量が増加した要因は何か」という問いに対し、影響元となった地点やその度合いを具体的に示すことができます。このことにより、交通管制官や都市計画担当者が、データに基づいた的確な意思決定を行う上で強力な支援となることが期待されます。
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汎用性: 本手法の考え方は、交通データに限らず、工場のセンサーデータ、金融市場、気象データなど、様々な要素が相互に影響し合うあらゆる多変量時系列データの解析に応用可能です。
今後の展望
本研究では、各地点の交通量とその時間的な関係性の分析に注力しました。今後の展開として、各地点の交通量に加え、個々の車の速度など、その他のデータとの関係性をより深く分析することで、渋滞発生のメカニズム解明などの複雑な都市交通データ解析に繋げていくことを目指します。
当社は、今後も先進的なデータ解析技術を通じて、より安全で快適な社会インフラの実現に貢献してまいります。
■コーピー(Corpy&Co.)について
日本とフランスをベースに「先端AI技術で人命を救い、平等を拡張する」ことをミッションに、失敗の許されないミッションクリティカル領域におけるAI導入を目指し、サービスを展開している東京大学・仏Inria発AIスタートアップです。AIの実運用で必須となる品質保証に焦点を当て、XAI(説明可能AI)技術を用いた説明性向上や、QAAI(AI向け品質検証)技術を用いた実環境における頑健性・脆弱性検証などを行う包括的アルゴリズムの開発とソリューション提供を行っています。
また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「AIセーフティ強化に関する研究開発」事業において、生成AIを適切に管理・利用するために必要となるAIセーフティ基準の策定・普及とAIセーフティ評価・管理技術の開発に取り組んでいます。
会社名:株式会社コーピー(Corpy & Co., Inc.)
設 立:2017年 3月
本社所在地:東京都千代田区神田神保町1-44-11
代表取締役: 山元 浩平
ウェブサイト:https://corpy.co.jp/
■本プレスリリースに関するお問い合わせ
株式会社コーピー 広報担当:pr@corpy.co.jp