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野菜から野菜を育てる資源循環の実現と養鶏業界の課題解決へ。野菜未利用部と鶏糞を組み合わせた堆肥でリン酸化学肥料と同等の効果を確認 ― 野菜未利用部のアップサイクルを目指して ―

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キユーピー株式会社

9月17日(水)~19日(金)に開催の日本土壌肥料学会でポスター発表

キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:髙宮 満、以下キユーピー)は、学校法人東京農業大学(理事長:江口 文陽)、株式会社ウエルクリエイト(本社:福岡県北九州市、代表取締役:松尾 康志)との共同研究で、野菜未利用部に鶏糞を組み合わせることで肥料としての効果が高まることを確認しました。本研究成果について、2025年9月17日(水)~19日(金)に開催された日本土壌肥料学会 2025年度新潟大会※1でポスター発表しました。

目次

■本研究の目的

キユーピーグループでは、パッケージサラダを製造・販売するグループ会社のサラダクラブや、惣菜を製造・販売するデリア食品を中心に、製造過程で発生する野菜未利用部を飼料や堆肥に活用する取り組みを進めています※2。本研究では、野菜未利用部の有機肥料としての可能性を探るため、肥料成分が豊富な鶏糞と組み合わせた堆肥(野菜鶏糞堆肥)で、植物の生育への効果について検証しました。

■結果の概要

・野菜鶏糞堆肥は、野菜だけの堆肥に比べて窒素やリン酸など肥料成分の濃度が高いことが分かりました。

・コマツナの栽培において、野菜鶏糞堆肥は100%のリン酸肥効率※3を示し、化学肥料と同等の収量が得られました。

・野菜鶏糞堆肥と化学肥料を混合施用することで、化学肥料由来のリン酸の利用率が向上することが確認されました。

コマツナ栽培試験(㊧化学肥料、㊨野菜鶏糞堆肥)

本研究から、野菜鶏糞堆肥が化学肥料と同等レベルの効果を有する有機リン酸肥料として利用できる可能性が示されました。さらに研究を続け、将来的には新たな有機肥料の開発を目指します。

キユーピーグループでは、サステナビリティに向けた重点課題として「資源の有効活用・循環」を掲げ、それに紐づく2030年までの目標(サステナビリティ目標)に「野菜未利用部の有効活用率90%以上」を設定しています。キユーピーグループ全体で野菜から野菜を育てる資源循環の実現を目指すとともに、鶏糞活用の新たな可能性を探ることで養鶏業界の課題解決にも貢献していきます。

サステナビリティサイト 資源の有効活用・循環

https://www.kewpie.com/sustainability/eco/

※1 日本土壌肥料学会 2025年度新潟大会 https://www.jssspn.org/2025

※2 キユーピー公式note「kewpie standard」_FILE 02「循環する人と地球へのやさしい気持ち サラダクラブが野菜でつくる食の未来」 https://note.kewpie.co.jp/n/n56e4dad8fe3e

※3 肥効率とは、堆肥などに含まれる肥料成分が、化学肥料と比べて植物の生育にどれだけ効果があるかを示す指標です。肥効率が100%の場合、植物に対する肥料成分の効果が化学肥料の効果と等しいことを示します。

<研究背景>

日本では、農業に欠かせない化学肥料の原料のほとんどを海外から輸入しています。そのため、国際情勢の影響を受けやすく、価格変動や高騰が農業経営の大きな負担になっています※4。また、年間約464万トン発生している食品ロスも日本の社会課題の一つであり、その半分(約231万トン)が事業活動に伴い発生する事業系食品ロスです※5。

キユーピーグループは、食品ロスを有効活用する取り組みを推進しています。グループ会社のサラダクラブやデリア食品では、製造過程で発生する野菜未利用部の飼料・堆肥への活用を進めてきました。野菜未利用部で作った堆肥は炭素(C)を多く含み、炭素によって土壌中の微生物が活発化し植物の生育に必要な窒素(N)が不足する(N飢餓)ことから、化学肥料と併用するのが一般的です。

一方キユーピーグループは、日本で生産される鶏卵の約1割(約25万トン)を取り扱っています。鶏卵が産み出される過程において、鶏卵の約2倍量の鶏糞が発生すると言われており、養鶏業界ではすでに鶏糞の肥料への活用が進んでいるものの、発生する量の多さ、におい、処理コストなどが養鶏業者の負担になっています※6。

これらを背景に、野菜と鶏卵を多く扱うグループとして、本研究は野菜未利用部の利用価値を高めるとともに、鶏糞についてもさらなる用途拡大の可能性を探ることを目指して実施しました。

※4 農林水産省 令和7年8月「肥料をめぐる情勢」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/index.html

※5 環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)の公表について」https://www.env.go.jp/press/press_00002.html

※6 農林水産省 令和7年7月「畜産環境をめぐる情勢」https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/attach/pdf/index-203.pdf

<研究概要>

■試料

パッケージサラダ工場で発生した野菜未利用部を原料に、微生物発酵により堆肥化しました(野菜堆肥)。鶏糞は株式会社花園たまや(養鶏場)の鶏糞堆肥を使用し、野菜堆肥と鶏糞堆肥を4:6で混合、発酵したものを野菜鶏糞堆肥として試験に使用しました。

■試験1:野菜鶏糞堆肥の化学性を明らかにする

【試験内容】

植物の生育に必要な成分である、窒素(N)、リン酸(P2O5)の濃度を測定しました。また、炭素率(C/N比)※7についても算出しました。

【結果】

野菜堆肥に比べ、野菜鶏糞堆肥は窒素やリン酸の肥料成分が多く、炭素率(C/N比)が低いことが分かりました。(表1)

表1 野菜鶏糞堆肥の分析結果

※7 堆肥に含まれる炭素と窒素の量の比率です。炭素は主に微生物のエサとなり、窒素は微生物が増えるための栄養分になります。C/N比が高いと、微生物は窒素を消費しながら活動するため、植物が窒素不足に陥ることがあります(N飢餓)。

■試験2:野菜鶏糞堆肥のリン酸肥料としての可能性を明らかにする

【試験内容】

野菜鶏糞堆肥の施用量を段階的に変えることで、単位面積当たりのリン酸施用重量が異なる4試験区の土壌を作製しました。それぞれでコマツナを栽培し、29日後のコマツナの収量とリン酸吸収量を比較しました。それぞれの試験区は化学肥料で窒素・カリウム量を統一し、野菜鶏糞堆肥由来のリン酸量に基づく効果を比較しました。

【結果】

対照(化学肥料)とリン酸量が同じテスト2(リン酸量100%)の試験区で、化学肥料と同程度の収量が得られました(図1、グラフ1)。これより、野菜鶏糞堆肥のリン酸肥効率※3は100%であることが分かりました。

一方、リン酸の植物への吸収量はリン酸量を減らしたテスト3・テスト4で大きく低下することが分かりました(グラフ2)。追加試験で、野菜鶏糞堆肥と化学肥料を混合してコマツナを栽培したところ、計算上のリン酸肥効率が100%以上となることが分かりました(グラフなし)。野菜鶏糞堆肥が土壌へのリン酸吸着を抑制させていることに加えて、化学肥料由来のリン酸の利用率を向上させていると推察されます。

図1 野菜鶏糞堆肥の施用量を変えたときのコマツナの生育(29日間)

グラフ1:コマツナの収量
グラフ2:リン酸(P2O5)吸収量


【共同研究者・加藤 拓教授からのメッセージ】

我が国には、食品ロスを含む多くの未利用資源があります。その中でも、事業系廃棄物は、まとまった量の廃棄物が継続的・安定的に供給されることから、原料となる未利用資源の回収コストを低く抑えることができます。また、再資源化した資材を企業グループ内や原料発生地域内で使用することで、運搬コストの抑制が期待されます。本研究では、キユーピーグループ内企業および関連企業から出る野菜の未利用部分や鶏糞を利用した堆肥の肥料効果を明らかにしました。今後さらに野菜鶏糞堆肥の肥料効果と土壌改良効果の研究を進めながら、社会に求められる新しい有機質資源の創出を目指していく予定です。

東京農業大学 応用生物科学部 農芸化学科 土壌肥料学研究室 加藤 拓 教授

出典:PR TIMES

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企業プレスリリース詳細へ (2025年9月30日 11時00分)

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