株式会社Athena Technologies
世界中の食卓に欠かせない調味料「しょうゆ」を製造・販売するキッコーマン株式会社。同社は国内だけでなく、グローバルに事業を展開し、日本の食文化を世界に広めています。1950年代に北米に本格進出して以来、欧州、アジアに次いで、近年では南米、インドなど新市場の開拓に取り組んでおり、特に、今後より開拓を進めていくインドにおいて、現地の食文化に根差した新たな市場開拓が重要なテーマとなっています。
その戦略を加速させるため、キッコーマン様はAI開発のパートナーとして弊社Athena Technologiesを選定し、食材と調味料の複雑な相性を解明・予測する共同研究プロジェクトを発足させました。本プロジェクトでは、キッコーマン様が持つ発酵・醸造学の深い知見と、弊社が持つ高度なAI技術を融合させています。
この取り組みでは、食材と調味料の膨大な組み合わせの中から、人々が「おいしい」と感じる最適なペアリングを予測するAI開発に取り組みました。
今回は、この挑戦的なプロジェクトの裏側について、キッコーマン株式会社 研究開発本部の今村様、山田様にお話を伺いました。また、弊社Athena Technologiesからは、本プロジェクトで技術支援を担当した松田、代表取締役の阿部が同席いたしました。

― はじめに、キッコーマン様の事業内容と、今回お話を伺う皆様の役割について教えていただけますでしょうか。
今村氏: 弊社はしょうゆを中核として、豆乳やトマト製品などの食品事業、さらに診断用酵素に代表されるバイオ関連事業まで、多角的に展開しています。グローバルではしょうゆ事業がメインですが、実は日本食材を中心とする東洋食品の卸売事業も利益の約4割を占める大きな柱です。私たちの部署は、グローバルな食品開発を支援するため、製品の「おいしさ」や「健康」といった価値を測定・評価する技術を開発しています。
山田氏: 私はR&Dグループに所属し、「おいしさ」という評価軸でデータの解析などを行っています。海外事業がメインとなることも多く、グローバルな視点を取り入れながら、社内外問わず多くの方々と技術交流をさせていただいています。
― ありがとうございます。次に、本プロジェクトを担当した弊社松田の役割についてご紹介します。
松田: Athena Technologiesでは創業メンバーとして、主に技術面の責任者を務めています。全プロジェクトを横断して技術的なアドバイスを行ったり、プロジェクトマネージャーとして方針決定などを担当したりしています。
― AI活用の背景を教えてください。
今村氏: 弊社のグローバル事業には2つの戦略があります。一つは北米や欧州など、すでにある程度しょうゆが浸透している成熟エリア・成長エリアでNo.1の地位を盤石にすること。もう一つが、インド、南米、アフリカといった新興国市場に、これからしょうゆを浸透させていくことです。
この2つ目の戦略が非常に難しい。これまで北米などでは、「しょうゆと肉の相性の良さ」をアピールし、バーベキュー文化を通じて自然にプロモーションができていました。しかし、ご存知の通りインドには牛肉や豚肉を食べる文化がほとんどありません。つまり、今までの成功モデルが通用しないのです。
知らないものをいきなり食卓で使ってもらうのは難しい。そこで、インドで日常的に食べられている食材としょうゆが合うことを科学的に示すことで、お客様の心理的なハードルを下げ、しょうゆを浸透させたい。これが、今回のプロジェクトを始めたきっかけです。
― Athena Technologiesに依頼した理由を教えてください。
今村氏: 今回のプロジェクトは3社によるコンペでした。その中でAthenaさんに決めた理由は大きく3つあります。
1つ目は、ご提案いただいた内容に新しい発見が多く、挑戦する価値があると感じたことです。「ここなら知らないことも学べそうだ」という期待感がありました。
2つ目は、コミュニケーションが非常にスムーズだった点です。他社さんとは何度も打ち合わせを重ねても、なかなか私たちの意図が伝わらないことがありました。しかし御社は、たった1回のヒアリングで「そう、そこなんです!」という的確なご提案をしてくださいました。
そして3つ目は、そのクオリティに対する価格です。これなら手が届く、という納得感がありました。

― プロジェクトにおけるAthena Technologiesのサポートはいかがでしたか?
山田氏: 今回はモデル構築だけでなく、データ収集段階のコンサルティングから深く関わっていただきました。私たちが「こういうことがやりたい」と希望を伝えると、松田さんはそれを実現可能な形で、たくさんのアイデアを出してくれました。データ共有も非常に迅速で、半年という期間でできる限りの最大限の結果が出せたと感謝しています。
今村氏: 本当にすごかったです。毎回、打ち合わせが終わるたびに、山田と「今日もすごかったですね」と話していました(笑)。こちらが断片的な知識で「こんなことできますか?」と相談しても、それを1〜2週間でプログラムに落とし込んで結果を返してくださるスピードには、本当に驚きました。

― プロジェクトを推進する上で技術的に苦労した点や課題はありましたか?
松田: やはりデータの扱い、特にアンケートデータの質には難しさがありました。情報科学の分野に「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れたらゴミしか出てこない)」という言葉があります。これを機械学習に置き換えると、教師データの質が悪いと、どんなに高度なアルゴリズムを使っても良いモデルは作れない、ということです。
今回のプロジェクトでも、人によって評価の基準が異なるアンケートデータを扱う上で、この原則を改めて体感しました。今後は、より客観的な回答を得るためのアンケート設計を追求していく必要があると感じています。今回は、取得したデータに対して丁寧な前処理を加えることで、一定の改善は見られましたが、モデル開発においてデータの質は最も重要だと再認識しました。
― 今後の展望について教えてください。
山田氏: 以前、松田さんが「言語化できるものは全てAIで実現できる」とおっしゃっていたのが印象的でした。これまでは、私たち自身がデータを十分に解釈し、言語化できていなかった部分があったと反省しています。
今村氏: プロジェクト終了後、いただいた知見をもとに山田が改めて生データを解析したところ、データをセグメントして分析することで新しい発見がありました。今回教えていただいた手法を応用して、たとえ一部でも事業に役立つモデルが構築できればと考えています。
今村様、山田様、貴重なお話をありがとうございました!
キッコーマン株式会社
会社名: キッコーマン株式会社
本社所在地: 千葉県野田市野田250
事業概要: しょうゆ、食品、飲料、酒類などの製造・販売
企業サイト: https://www.kikkoman.co.jp/
株式会社Athena Technologies
会社名: 株式会社Athena Technologies
事業概要: AIセキュリティプラットフォーム「Athena Platform」の開発・提供、及び最先端AI技術を用いた研究開発・コンサルティング
所在地:
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東京オフィス:東京都文京区本郷6丁目25番14号 HONGOEGG
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大阪オフィス:大阪府大阪市都島区東野田町4丁目15番82号 NTT WEST i-CAMPUS QUINTBRIDGE 3F
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京都オフィス:京都府京都市左京区田中門前町 百万遍ビル3F
企業サイト: https://athenatech.jp/
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