日科技連

デミング賞委員会(委員長 筒井 義信)は,10月1日(水)14時から経団連会館(東京・大手町)において委員会を開催し,2025年度デミング賞各賞の受賞者を決定しました.
2025年度のデミング賞各賞の審査は,デミング賞委員会の各委員会において本年3月から9月にかけて行われてまいりましたが,本年10月1日開催のデミング賞委員会において以下のとおり受賞組織ならびに受賞者が決定いたしました.
本年度授賞式は,11月12日(水)17時20分から東京・大手町の経団連会館において行われ,授賞式の様子をライブ配信することで広くご視聴いただく形式とします.
授賞式に引き続き,18時35分から同会館にて受賞記念祝賀会が行われます.
また,授賞式に先立って,11月12日(水)13時00分から,受賞者による受賞報告講演会が同会場で行われます.
▋受賞者
1.2025年度デミング賞本賞
大橋 徹二 氏
株式会社小松製作所 特別顧問
[受賞理由]
大橋徹二氏は1977年小松製作所に入社,2013年代表取締役社長,2019年代表取締役会長を経て現在特別顧問を務めている.氏は長年にわたり建設機械業界,経済界,国際社会で要職を担い,TQMモデルの進化の一形態を現実の企業経営で示した経営者である.
2015年に開始した「スマートコンストラクション」では,ICT建機とデジタル技術を活用し施工全体を最適化するもので,四万件超に導入し安全性と生産性を高めた.国土交通省「i-Construction」と連携し業界全体の生産性向上を実現するとともに,日本建設機械工業会会長として市場の透明性向上に尽力した.さらに経団連副会長として労使交渉の指針を示し歴史的な賃上げを実現,国際社会ではカンボジアでの地雷除去や学校建設を推進した.その根底には,顧客課題の解決・社員の価値創造・社会への貢献を掲げ,五つの戦略により具現化した理念がある.氏の歩みはTQMの深化と社会的価値創出を体現し,次代を導く品質経営の羅針盤である.

2.2025年度デミング賞特別功労・実践賞
安藤 之裕 氏
一般財団法人日本科学技術連盟 国際事業参与
[受賞理由]
安藤之裕氏は,1981年電気通信大学大学院修了後,日本科学技術連盟でTQMの普及に従事し,現在は安藤技術事務所代表,日本科学技術連盟国際事業参与として活躍している.
長年にわたり,デミング賞や日本品質奨励賞の審査,品質経営度調査の立上げ,数多くのセミナーの企画・講義,研究会運営,学会活動を通じて,TQMの普及と発展に大きく貢献してきた.また,QCサークル活動に30年以上携わり,人材育成と地域活動の振興に尽力した.ISO 9004改正やJIS Q 9004制定など国際標準化にも参画し,国際的普及にも寄与した.さらに,国内外で59社に及ぶ企業指導の実績があり,29社をデミング賞受賞に導いた功績は顕著である.出版・講演も豊富で,日経品質管理文献賞をはじめ数多くの表彰を受けており,安藤氏の功績は,デミング賞特別功労・実践賞の理念に合致するものである.

David Hutchins 氏
デビッド・ハッチンス氏
Chief Executive, David Hutchins Innovation Limited
[受賞理由]
デビッド・ハッチンス氏(デビッド・ハッチンス・イノベーション社会長)は英国の自動車部品などの製造業で生産,開発,品質管理に従事し,1969年に英国の品質管理専門家に認定された.その後,品質コンサルタントとして今日まで英国及び欧州の産業界においてTQMを指導し,その普及に尽力してきた.この間,1976年にバーミンガム大学大学院で修士号を取得した.
同氏は,1970年代に英国に初めて日本的品質管理,特にQCサークルを導入し,日常管理,方針管理などに加えQCサークルを中核にした全員参加の経営を推進した.また,1990年代初めには日本でのISO 9000の教育・支援に貢献した.さらに1990年代には英国初のIAQ(国際品質アカデミー)正会員に選出され,TQMに関するすぐれた著書を多数刊行し,英国及び欧州のTQMの発展に大きく貢献している.

3.2025年度デミング賞
Global Indian International School, Tokyo
グローバル・インディアン・インターナショナル・スクール,トウキョウ
代表者名:Mr. Sumit Mishra, Country Director
カントリーディレクター スミット ミシュラ 氏
所在地:東京都江戸川区西葛西8-3-13
TEL:03-6631-0441
事業内容:教育
売上高:19億1,500万円
従業員数:150名
[受賞理由]
同組織は,Global Schools Foundationにより創設されたインターナショナルスクールである.同組織の設立は2006年であり,東京都江戸川区に4つの校舎がある.幼稚園から高校までのクラスがあり,インドカリキュラムだけでなく多様な国際カリキュラムを提供している.生徒数は1,394名,教職員は150名,売上高は19億1,500万円である.
同組織は,品質管理の強化,システムの改善などを目指し,2013年にTQMを導入した.「2030年までに都内最大のインターナショナルスクールになる」などの目標を明示し,顧客満足度向上の視点からTQM活動を推進してきた.
この間,教職員,生徒,保護者などを巻き込んだ全員参加の改善活動と,QCサークル,ITシステムを活用した多様な関係者間の情報共有など,教育産業にTQM活動を展開している.
その結果,QCサークルの改善件数は増加し,生徒の学業成績のスコアは目標を達成し,生徒や保護者の満足度関連スコアも目標を達成している.そして,生徒数も増加しており,TQMを活用した効果が出ている.
Tata Autocomp Hendrickson Suspensions Private Limited(インド)
タタ・オートコンプ・ヘンドリクソン・サスペンションズ株式会社
代表者名:Mr. Ravinder Guleria, Chief Executive Officer
最高経営責任者 ラビンドラ グレリア 氏
所在地:Plot No. D-236/5, Chakan Industrial Area, MIDC, Phase – II,
Village – Varale, Chakan, Tal-Khed, Pune, Maharashtra – 410501,
INDIA(インド)
TEL:+91-72-4924-4401
事業内容:サスペンションシステムの設計開発・製造・供給
売上高:公開不可
従業員数:243名
[受賞理由]
同組織は,インドTata Autocomp System社と米国Hendrickson社により2006年に設立され,中型・大型商用車及びEVバス向けのサスペンション,並びにサスペンション用の部品を開発・製造している.従業員数は243名である.
同組織は,Tata Motor社への依存度が高く,新事業の売上が期待通りに伸びないこと,品質問題が多いことなどを踏まえて,2018年にTQMを導入している.
この間,変化が激しい事業環境の中で中期計画を4年ごとに策定し,TQMを活用することでその達成に必要な組織能力の向上に取り組んできた.そして,日常管理・改善活動を通して全員参加を実現し,体系的に人材の育成を図ってきた.また,市場の動向に基づいて新製品・新規顧客の開拓と需要を満たす生産能力の向上に積極的に挑戦してきた.
その結果,市場補償金額を削減できるとともに,市場シェアが拡大し,新規事業を含めた売上高,既存製品の新規顧客を確保・拡大できている.
▋日経品質管理文献賞 受賞者
デミング賞委員会は,本年10月1日開催のデミング賞委員会において,2025年度日経品質管理文献賞の受賞者を下記のとおり決定いたしました.
授賞式は,11月12日(水)17時20分から東京・大手町の経団連会館においてデミング賞授賞式とあわせて行われます.
受賞文献 3件(書籍名五十音順)
「実践 方針管理 革新戦略推進のフレームワーク」
日本科学技術連盟 方針管理研究会 編
発行所:株式会社日科技連出版社
出版:2024年7月

「自動車産業を支え続けて100年 黒子のモノづくり」
長谷川 士郎 著
発行所:株式会社幻冬舎メディアコンサルティング
出版:2024年10月

「JSQC選書38 慢性期医療の品質マネジメント 人生に伴走する医療の確立に向けて」
一般社団法人日本品質管理学会 監修
進藤 晃 著
発行所:一般財団法人日本規格協会
出版:2025年5月
