東京海上ディーアール株式会社
国内外の原子力政策・産業に関する最新動向
東京海上ディーアール株式会社は、2024年10月から調査研究プロジェクト「GXの産業界への影響と対応」を実施しています。このたび研究成果として、「国内外の原子力政策・産業に関する最新動向」を発行いたしました。詳細は本プロジェクトの概要ページをご覧ください。
レポート概要
近年、世界的なエネルギー情勢の変化の中で、原子力発電に対する注目が高まっています。国際原子力機関(IAEA)によると、2025年8月現在、世界31か国が原子力発電所を導入しており、合計で439基(約396GW)の原子炉が運転しています(うち23基・約20GWは運転中断中)。国別にみると、米国の94基(約97GW)、フランスの57基(約63GW)、中国の57基(約55GW)の3か国で世界の原子力発電設備容量の54%を占めていますが、既設炉の多くは先進国に集中しています。なお、発電電力量でみると、原子力発電は世界の発電電力量の約10%をまかなっています。日本では、33基(約32GW)の原子炉のうち、14基(約13GW)が福島第一原子力発電所事故後に策定された新規制基準の適合審査に合格し、営業運転を再開しました。
世界初の原子力発電は1951年に米国で開始され、1973年の石油危機を経て、各国で原子力発電の開発が進められました。しかし、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故(米国)、1986年のチョルノービリ原子力発電所事故(旧ソ連、現ウクライナ)の発生を受け、世界の原子力利用は停滞します。2000年以降、原油価格の高騰と温室効果ガス排出削減への関心の高まりから、先進国や新興国(中国やインド)で新規建設が進められました。その後、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、改めて脱原子力の方針を示した国や、引き続き原子力を利用する国など、各国の立場はそれぞれのエネルギー需給をめぐる状況などを踏まえて異なっていました。
本稿では、エネルギー安全保障、気候変動対策、将来の電力需要の拡大の観点から、特にロシアによるウクライナ侵略が起きた2022年以降の国内外における原子力政策、産業動向について概説します。
「GXの産業界への影響と対応」研究プロジェクト概要
GX(Green Transformation)とは、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のことを指します。
現在の産業・社会構造は化石燃料の使用を前提に最適化されたものです。従って、GXは、単なるエネルギー政策の転換にとどまらず、社会の様々な分野に変化をもたらし産業界にも大きな影響を及ぼします。
本プロジェクトは、そのようなGXの与える影響をエネルギー、産業・競争、金融・資本市場、貿易・通商、技術、等の多様な観点から分析し、産業界に必要な対応を検討します。
研究の成果については当社ホームページにレポートとして発信する他、セミナー等も予定致しております。