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“危険な空き家”の最新動向を詳細分析 ~東京は再開発が難しい区部外周部で問題物件が目立つ~

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株式会社グローバル・リンク・マネジメント

グローバル都市不動産研究所 第33弾(都市政策の第一人者 市川宏雄氏監修)

 

 投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(本社:東京都渋谷区、以下GLM)は、(1)東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、(2)不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授 市川宏雄 氏を所長に迎え、「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」を2019年1月1日に設立しました。

▼過去のレポート一覧はこちら

 同研究所では、第31弾レポート「これからどうなる? 東京の空き家 ~23区別の空き家数・空き家率の傾向を詳細分析~」の続編として、将来的な危険度の高い腐朽・破損のある空き家について、全国と東京都、23区別の増減実態を分析した結果と今後の予測を紹介します。

【01】 全国における腐朽・破損のある空き家の最新動向

・腐朽・破損のある「危険な空き家」の数 ここ10年は減少傾向
・それでも腐朽・破損のある空き家数は160万戸、空き家全体の2割弱を占める

 第31弾レポート「これからどうなる?東京の空き家」では、東京都の空き家率は近年ほぼ横ばいで推移しているものの、2023年時点の空き家数は約89.7万戸に昇り、全国の空き家数の約1割を占めること、維持管理が不全となるおそれのある空き家(「賃貸や売却用、別荘などを除き、長期にわたって居住者が不在の空き家」。第31弾レポートと同様、「その他空き家」と称します)が世田谷区、江戸川区、台東区等を中心に急増していることを分析しました。

 こうした空き家の中でもっとも深刻な問題となるのが、適切な維持管理がされず、腐朽・破損が進んでいる空き家の存在です。周辺の景観や治安、衛生等に悪影響を及ぼすだけでなく、そのまま放置すれば倒壊するおそれもあり、将来的に危険な状態になり得る空き家といえます。

 そこで、総務省「住宅・土地統計調査」では、2008年から、空き家のうち「腐朽・破損あり」の住宅数についても調査・公表されるようになっています(「住宅・土地統計調査」における「腐朽・破損あり」の説明は【図表1】のとおり)。

 今回のレポートでは、空き家全体のうち、腐朽・破損が進んでいる空き家が全国にどのくらい存在するのか、東京都や東京23区内ではどのような状況にあるのか、について分析していきます。

 はじめに全国の動向をみると、空き家数は2008年(756.8万戸)から2023年(900.2万戸)にかけて一貫して増加する一方で、「腐朽・破損あり」の空き家数は、2013年の213.1万戸をピークに、2023年には158.5万戸へと減少しています。空き家に占める「腐朽・破損あり」の割合も、 2013年の26.0%から2023年の17.6%へと減少しています【図表2】。

  2015年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空き家法)が全面施行され、周辺へ著しい悪影響や危険等をもたらす空き家への改善指導、取り壊しなどの対策が進み始めたこともあって、「腐朽・破損あり」の空き家数は減少しつつあるようです。それでもいま現在、「腐朽・破損あり」の空き家数は160万戸近くあり、空き家全体の2割弱を占めていることが分かります。

 この「腐朽・破損あり」の空き家数を種類別にみると【図表3】、2023年の総数158.5万戸のうち、「賃貸用空き家」は62.2万戸、「その他空き家」は89.5万戸であり、「その他空き家」の方が上回っています。「腐朽・破損あり」の割合も、「賃貸用空き家」(14.0%)より「その他空き家」(23.2%)の方が大きく上回り、「その他空き家」ではおおよそ4戸のうち1戸に腐朽・破損がある状況がみてとれます。

 また、2013年から2023年までの「腐朽・破損あり」の空き家数の推移でみると、「賃貸用空き家」は36.0%減少(97.2万戸→62.2万戸)した一方で、「その他空き家」は15.1%減少(105.5万戸→89.5万戸)にとどまり、「その他空き家」の腐朽・破損割合の減少率の方が大きく下回っています。こうしたデータからみても、「その他空き家」は、「賃貸用空き家」に比べて腐朽・破損の割合が高い上に、その数も減少しにくいという実態を示しています。


【02】 東京都における腐朽・破損のある空き家の最新動向

・腐朽・破損のある空き家は「賃貸用空き家」6.3万戸、「その他空き家」3.8万戸
・木造の一戸建だけでなく、非木造の共同住宅でも腐朽・破損の問題が進行

 東京都の空き家数は2013年(81万7,100戸)から2023年(89万6,500戸)にかけて増加して
いる一方で、「腐朽・破損あり」の空き家数は、2013年の16万1,500戸から2023年の10万5,000戸へと減少し、 「腐朽・破損あり」の割合も19.8%から11.7%へと減少しています。ただし、「腐朽・破損あり」の空き家数は、2013~2018年の5年間は大きく減少したものの(16万1,500戸→11万8,700戸、26.5%減)、2018~2023年の5年間の減少数は低下傾向にあります(11万8,700戸→10万5,000戸、11.5%減)【図表4】。

 「腐朽・破損あり」の空き家数を種類別にみると【図表5】、2023年の総数10万5,000戸のうち、「賃貸用空き家」は6万3,200戸、「その他空き家」は3万7,500戸であり、東京都の場合は「賃貸用空き家」の方が上回っています。ただし「腐朽・破損あり」の割合は、やはり全国同様に「賃貸用の住宅」(10.0%)より「その他空き家」(17.5%)の方が大きく上回り、「その他空き家」では6戸のうち1戸に腐朽・破損がある状況になっています。

 2013年からの「腐朽・破損あり」の空き家数の推移でみると、「賃貸用空き家」は41.9%減少(10万8,800戸→6万3,200戸)した一方で、「その他空き家」は12.8%減少(4万3,000戸→3万7,500戸)にとどまり、全国の状況と比較して、「賃貸用空き家」はより減少率が高く、「その他空き家」はより減少率が低いことが分かります。つまり、東京都は全国と比べて、腐朽・破損のある「賃貸用空き家」数は大きく減少しているものの、「その他空き家」数はそれほど減少していない状況にあることが分かります。

 2023年の「腐朽・破損あり」の空き家数とその割合(種類別)を都道府県別にみた場合、「腐朽・破損あり」の割合ランキングで東京都は「賃貸用空き家」「その他空き家」のいずれもほぼ最下位に位置していますが、「腐朽・破損あり」の空き家数でみれば、東京都は全体で2位、「賃貸用空き家」で2位、「その他空き家」で3位であり、やはりその実数は極めて多いことが分かります【図表6】。 

さらに、2023年の全国と東京都の空き家の状況を、建て方(一戸建、長屋建、共同住宅)別に比較してみると【図表7】、「賃貸用空き家」については、共同住宅が全国で89.0%、東京都で97.6%と圧倒的な割合を占めており、その「腐朽・破損あり」の割合はそれぞれ12.4%、9.8%と、1割程度の住宅に腐朽・破損が生じていることが分かります。東京都の「腐朽・破損あり」の共同住宅5万9,900戸について建物構造別の内訳をみると、木造2万5,700戸、鉄筋・鉄骨コンクリート造2万2,500戸、鉄骨造1万1,500戸であり、木造アパートのほか、非木造のアパート・マンション等でも腐朽・破損の問題が進行している状況がみてとれます。

 一方、「その他空き家」については、全国では一戸建が73.9%を占めているのに対し、東京都では一戸建が34.8%にとどまり、共同住宅が62.7%の割合になっています。一戸建はその大半が木造であることから、「腐朽・破損あり」の数は2万1,100戸に昇ります。また、共同住宅の「腐朽・破損あり」の割合こそ全国で14.5%、東京都で11.4%と低くとどまりますが、東京都ではもともと共同住宅の空き家数が多いことから、「腐朽・破損あり」の数は1万5,300戸にも昇っています。この1万5,300戸の建物構造別の内訳をみると、木造4,800戸、鉄筋・鉄骨コンクリート造7,900戸、鉄骨造2,500戸であり、ここでも木造のほかに非木造のアパート・マンション等で腐朽・破損が進み、深刻な問題になっている状況がみてとれます。

 なお、東京都の「腐朽・破損あり」の共同住宅数は、「賃貸用空き家」で全国の12.3%、「その他空き家」で全国の12.4%と高い割合を占め、問題のある共同住宅の空き家を多く抱えていることが分かります。


【03】東京23区別にみた腐朽・破損のある空き家の状況

・都市のスプロール化で大量に住宅供給された区部外周部で問題物件が目立つ
・区部外周部では再開発や建替えが進まず、腐朽・破損の問題が深刻化 

 次に、東京23区別に2023年の「腐朽・破損あり」の空き家の状況についてみていきます【図表8、図表9-1~9-3】。

 「腐朽・破損あり」の空き家全体の数では、練馬区(7,710戸)、足立区(6,770戸)、板橋区(6,640戸)、世田谷区(5,670戸)、大田区(4,810戸)など区部外周部の区が目立っています。 1960~70年代に都市のスプロール化によって多くの住宅供給がされた区で、建築から50年以上を経て、腐朽・破損の進む空き家がより顕在化している状況がみてとれます。これらの区で「賃貸用空き家」での腐朽・破損の住宅数を多く抱えているのは、都心区ではこうした空き家の再開発が比較的容易に進むのに対し、区部外周部では放置され、腐朽・破損が進行している状況にあると考えられます。また、「その他空き家」についても、足立区(2,980戸)、板橋区(2,670戸)、江戸川区(2,180戸)、世田谷区(2,160戸)、練馬区(1,990戸)など区部外周部の区で腐朽・破損の住宅数が目立っており、賃貸用住宅と同様に多くの分譲住宅やマンション等が供給された区で相続後の家屋の放置などが進んでいる状況がみてとれます。 

 腐朽・破損のある住宅の割合に目を転じると、「賃貸用空き家」についてはいずれの区もおおむね10%台を下回る数値に収まっていますが、「その他空き家」については中野区(44.3%)、墨田

区(42.6%)、新宿区(31.1%)などで極めて高い数値を示しています。これらの区は区全体では腐朽・破損のある空き家数は比較的少ないものの、一部の地域で住宅の密集や細街路、古い住宅の存置等により腐朽・破損のある空き家が集積しやすい状況にあるものとみられます。

・対策が遅れれば、2040年には東京23区だけで空き家数は100万戸に
・腐朽・破損のある「危険な空き家」は15万戸にのぼる恐れも

 今後、東京23区別に空き家がどの程度増えていくかを、建築時期別の住宅総数【図表10】から予想すると、2040年時点で建築時期が50年以上となる住宅数(建築時期が1990年以前の住宅で建築時期不明のものも含む。取り壊し等がないと仮定)は、世田谷区で約19万戸、足立区で約15.5万戸、練馬区と大田区で約15万戸、杉並区と板橋区で約14万戸、江東区で約11万戸など、特別区全体で約200万戸に昇り、仮にその半数が空き家化すると想定した場合には世田谷区で9~10万戸、足立区、練馬区、大田区、杉並区、板橋区で7~8万戸、特別区全体で約100万戸の空き家(うち10~15万戸程度が腐朽・破損のある空き家)が生じることになります。さらにグラフからも分かるように、東京の各区(とくに区部外周部)では1991年以降も多くの住宅が供給されており、2040年以降もこれらのうち一定量が空き家として次々と積み上がっていくことが想定されます。 

 東京都内では、今まで供給された住宅ストック量(総住宅数)が極めて膨大です。まだ利活用可能な空き家を中古住宅としていかに流通させていくか、空き家を適切に維持管理することで腐朽・破損をいかに防いでいくか、腐朽・破損した空き家をいかに撤去し再開発していくか、いずれの対策も早期に着手することが重要といえます。


【04】都市政策の第一人者 市川宏雄所長による分析結果統括

・「危険な空き家」は減少しつつあるが区部外周部では問題物件が目立つ
・利活用可能な空き家の流通、維持管理、再開発など速やかな着手が必要

 空き家全体のうち、腐朽・破損が進んでいるものが全国と東京都ではどのような状況にあるのか。

 全国の空き家数は2008年(756.8万戸)から2023年(900.2万戸)で増加する一方、「腐朽・破損あり」の空き家数は、2013年の213.1万戸をピークに、2023年には158.5万戸へと減少しています。空き家の腐朽・破損割合は17.6%です。 2015年5月の「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空家法)施行で、空き家への改善指導、取り壊しなどの対策が「腐朽・破損あり」の空き家数は減少しつつあります。

 東京都の空き家数は2013年(81万7,100戸)から2023年(89万6,500戸)に増加し、「腐朽・破損あり」の空き家数は、2013年の16万1,500戸から2023年の10万5,000戸となり、 その割合も19.8%から11.7%へと減少しています。

 「腐朽・破損あり」の割合は、全国同様に「賃貸用の住宅」(10.0%)より「その他空き家」(17.5%)の方が大きく上回ります。

 建て方(一戸建、長屋建、共同住宅)別に比較してみると、東京都で「賃貸用空き家」については、共同住宅が97.6%と圧倒的で、その「腐朽・破損あり」の割合は9.8%で6.3万戸、 「その他空き家」は3.8万戸で17.5%と高くなっています。

 これを23区別でみてみると、区部外周部では放置され、腐朽・破損が進みつつある賃貸用住宅が多く見受けられますが、こうした空き家の再開発が比較的容易に進む都心区とは異なる状況にあるのが原因です。また、「その他空き家」についても、足立区、板橋区、江戸川区、世田谷区、練馬区などで、賃貸用住宅と同様に相続後の家屋の放置などが進んでいます。

 対策が遅れれば、2040年には東京23区だけで空き家数は100万戸になり、腐朽・破損のある「危険な空き家」は15万戸にのぼる恐れもあります。まだ利活用可能な空き家を中古住宅としていかに流通させていくか、空き家を適切に維持管理することで腐朽・破損をいかに防いでいくか、腐朽・破損した空き家をいかに撤去し再開発していくか、速やかな着手が必要です。


取材可能事項

本件に関して、下記2名へのインタビューが可能です。

ご取材をご希望の際は、グローバル・リンク・マネジメントの経営企画室 広報担当までお問い合わせください。

・氏名 :市川 宏雄(いちかわ ひろお)

・生年月日 :1947年 東京生まれ(77歳)

・略歴 :早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士。

世界の都市間競争の視点から大都市の将来を構想し、東京の政策には30年間にわたり関わってきた東京研究の第一人者。

現在、明治大学名誉教授、日本危機管理防災学会・会長、日本テレワーク学会・会長、大都市政策研究機構・理事長、日本危機管理士機構・理事長、森記念財団都市戦略研究所・業務理事、町田市・未来づくり研究所長、Steering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)in Switzerlandなど、要職多数。

・氏名   :金 大仲(きむ てじゅん)

・役職  :株式会社グローバル・リンク・マネジメント 代表取締役社長

・生年月日 :1974年 横浜生まれ(50歳)

・略歴 :神奈川大学法学部法律学科卒業。新卒で金融機関に入社。その後、家業の飲食店を経て大手デベロッパー企業に転職し年間トップセールスを達成。そこでの経験を経て30歳の時に独立し、グローバル・リンク・マネジメントを設立。


会社概要

会社名 :株式会社グローバル・リンク・マネジメント

会社HP :https://www.global-link-m.com/

所在地 :東京都渋谷区道玄坂1丁目12番1号渋谷マークシティウエスト21階

代表者 :代表取締役社長 金 大仲

設立年月日 :2005年3月

資本金 :5億82百万円(2024年12月末現在)

業務内容 :不動産ソリューション事業(投資用不動産の開発、販売、賃貸管理)

出典:PR TIMES

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