一般社団法人 コンサベーション・インターナショナル・ジャパン
インドネシア、マレーシア、フィリピンが連携し、スールー・スラウェシ海域の保全と気候変動に強い沿岸地域の生計支援に向けた共同イニシアチブが始動
~ 日本にとっても重要な海洋の安定と持続可能性に貢献 ~

世界的に重要な海洋生態系であり、地球上で最も多くのサンゴ種が生息するスールー・スラウェシ海域を保護するための新たな地域イニシアチブが始動しました。
「SEACONNECT/シーコネクト」は、地球環境ファシリティ(GEF)から600万米ドルの資金提供を受け、コンサベーション・インターナショナルが今後5年間のプロジェクトを主導します。本プロジェクトは、インドネシア、マレーシア、フィリピンの沿岸地域において、海洋ガバナンスの強化、持続可能な生計の支援、そして気候レジリエンスの構築を目指します。
スールー・スラウェシ海域は、フィリピンのミンダナオ島、マレーシアのサバ州、インドネシアの北スラウェシ州を結ぶ国境を越えた100万平方キロメートル以上にわたる海洋回廊を含んでいます。この海域には、世界のサンゴ種の76%以上、サンゴ礁に生息する魚類の37%が確認されており、生物多様性、食料安全保障、気候変動への適応において極めて重要な役割を果たすホットスポットです。
また、この取り組みは、日本にとっても大きな意味を持ちます。スールー・スラウェシ海域は、日本の水産業にとって重要な漁場とつながるコーラルトライアングルの一部であり、マグロやサンゴ礁魚類など、日本の食卓に欠かせない海産物の供給源でもあります。日本は長年にわたり、コーラルトライアングル・イニシアチブ(CTI-CFF)への支援や、海洋保全に関する技術協力を通じて、地域の持続可能な開発に貢献してきました。また、気候変動による海洋資源の減少や異常気象の影響は、日本を含むアジア太平洋地域全体に波及するため、この海域の健全性は日本の食料安全保障や経済安定にも直結しています。
SEACONNECTでは、以下のような具体的な成果を2030年までに達成することを目指しています:
〇 20万ヘクタール(2千平方キロメートル)の海洋生息地の管理体制を改善
〇 3,000人以上の漁業者および沿岸地域住民に直接的な恩恵を提供
〇 600トン以上の過剰漁獲された海洋資源の回復を支援
〇 「30by30」への貢献
プロジェクトの実施にあたり、コンサベーション・インターナショナルがGEFの実施機関を務め、コーラルトライアングル・イニシアチブ(CTI-CFF)地域事務局およびクイーンズランド大学が実行機関として技術支援を提供します。
SEACONNECTは、以下の5つの柱を通じて成果をもたらします。
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気候変動に対応した海洋資源管理と地域連携の強化
科学的根拠に基づく、持続可能で気候に強い方法を用いて海洋資源の管理体制を整備し、国境を越えた協力体制を構築
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持続可能な観光・漁業によるレジリエントな「ブルー経済」の推進
環境と調和した経済活動の活性化と、地域社会の持続的な成形手段を確保する
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知識共有と人材育成の拡大
コーラルトライアングル諸国間での研修や知見の交換を通じて、地域全体の技術力とガバナンスを向上させる
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成功事例の他地域への展開
効果が実証された取り組みを他の海洋生態系にも応用し、広域的な海洋保全に応用
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ジェンダーに配慮した進捗評価とインパクト測定
すべての活動において包摂性を確保し、透明性のある成果測定を行う
SEACONNECTは、単なる保全プロジェクトではなく、世界有数の海洋生物多様性ホットスポットであるコーラルトライアングルにおける協働的な海洋ガバナンスの設計図です。コンサベーション・インターナショナルはパートナーと共に、各国の取り組みを地域の目標と連携させて、人びと、生物多様性、そして気候に持続的な恩恵をもたらすことを目指します。
■コンサベーション・インターナショナル(CI)について
すべての人々のウェルビーイング達成のために、自然保護を通じて持続可能な社会の実現を目指す国際環境NGO。現地コミュニティから政府まで、多様なパートナーシップを軸に、科学的知見に基づく戦略と革新的な手法を組み合わせ、世界70以上の国と地域で実践活動を続けている。CIジャパンはグローバルネットワークの一員として、1990年より国内での活動を開始し、保全事業の形成から実施、また途上国の持続可能な支援、企業のサステナビリティ戦略のアドバイスなどを行っている。
■地球環境ファシリティ(GEF)について
開発途上国が複雑な環境問題に対応し、国際的な環境目標の達成に向けて前進することを支援するために、複数の国際的な資金メカニズムが連携し、地球規模の喫緊の課題に統合的に取り組むための枠組み。過去30年間、GEFは主に助成金として260億米ドル以上の資金を提供し、さらに1,480億米ドルを超える追加資金を動員して、各国主導の優先プロジェクトを後押ししている。