一般社団法人横河武蔵野スポーツクラブ
8月からイングランドで開催される女子ラグビーワールドカップに日本代表候補として横河武蔵野アルテミ・スターズから7人選出された。今回はその壮行会の模様をインタビューを交えレポートしていく。
8月からイングランドで開催される女子ラグビーワールドカップに出場する日本代表候補メンバーに、横河武蔵野アルテミ・スターズから7人が選出された。
選手たちの健闘を祈り、7月4日に三鷹市内でクラブ主催の壮行会が行われた。
今回、候補メンバーに選ばれたのは、フォワードでは加藤幸子、左高裕佳、川村雅未、谷口琴美、櫻井綾乃の5選手。バックスでは津久井萌、小林花奈子の2人がメンバー入りを果たした。

この壮行会にはクラブ、スポンサー関係者、選手の家族のほか、彼女たちが普段働いている企業の関係者が参加し、選手たちを温かく激励した。
司会者の選手紹介とともに一人ひとりが壇上に上がると、会の冒頭では横河武蔵野スポーツクラブの吉川光代表理事があいさつ。
「全員が選ばれるということを祈っておりますし、もし選ばれた場合には、最高のパフォーマンスでグループリーグを突破していただきたい。ぜひ、頑張ってください」とエールを送った。
また、クラブのお膝元である武蔵野市の伊藤英穂副市長と三鷹市の河村孝市長が来賓代表としてあいさつ。続いて学校法人 三幸学園 東京リゾート&スポーツ専門学校の陶山毅副校長がスポンサー代表として、乾杯の音頭を取った。


しばしの歓談の間には、アルテミ・スターズの藤戸恭平ヘッドコーチがMCを務めたトークセッションを実施。藤戸コーチの軽妙なトークで選手の意外な素顔が引き出されるなど、会場は大いに盛り上がった。


また会の途中では日本代表のレスリー・マッケンジー ヘッドコーチと、前回大会のキャプテンである南早紀さんからのビデオメッセージがサプライズで流される場面も。選手たちは驚きの表情を浮かべながらも、愛情溢れるメッセージを神妙に聞き入っていた。


壮行会の最後には、選手ひとり一人が来場者の前に立ち、感謝の言葉と大会への意気込みを述べた。
最後にあいさつを行った櫻井は、これまでの苦労と感謝の想いを涙ながらに語っている。

「今回のワールドカップイングランド大会は、私にとって人生の節目となる大会になると思います。
前回のニュージーランド大会では出場できず、悔しい思いをしました。
あの瞬間からずっと、今回のワールドカップ出場を目指して3年間努力を積み重ねてきました」
「ただ、その道のりは決して順風満帆ではなくて、特に一昨年の9月、2度目の膝の怪我をした時は本当に大きな挫折を味わいました。
復帰まで1年かかると告げられて、正直、日本代表やラグビーも諦めようと思ったこともあります。
それでも、いつも支え、応援してくださる皆さんにもう一度プレーをしている姿を見せたいという想いが私の大きな原動力となりました」
「そして、またこうして代表としてこの場に戻ってくることができたこと、大変嬉しく思っております。
改めて感謝の気持ちを伝えさせてください。
日頃からラグビーに全力で取り組める環境を整えてくださっているスポンサーの皆様。
どんな時も温かく力強い応援を送ってくださる地域の皆様、ファンの皆様。
私がうまくいかない時も変わらず支え、居場所を与えてくださったNTTファシリティーズの皆様。
そして、どんな時もそばで見守ってくれた両親。
本当に、本当にありがとうございます」
「そして最後に、アルテミ・スターズの選手、スタッフの皆様。
長いリハビリ期間中プレーでチームに貢献できない私を変わらず支えてくれました。
このチームのおかげで、今またラグビーに全力で打ち込めています。
心から感謝しています。
ワールドカップという舞台で皆様に恩返しができるよう精一杯プレーしていきます。
本日は本当にありがとうございました」
声を詰まらせながら決意を語る櫻井の姿に、他の選手ももらい泣きをするなど、会場は大きな感動に包まれた。
櫻井だけではなく、それぞれの選手が並々ならぬ想いを背負い、世界最高の舞台に挑む。7月下旬に行われるスペインとのテストマッチを経て、彼女たちはメンバーに残ることができるのか。7人全員のワールドカップでの活躍を期待したい。
■横河武蔵野アルテミ・スターズ日本代表選出メンバー7名と
各選手雇用企業様からのコメント
■左高 裕佳選手
自分はチームの中で身体が一番大きいので、この身体を生かしたボールキャリーだったり、相手を仰向けするようなディフェンスに自信を持っています。あとはフォワードなので、セットプレーの精度のところですね。低いスクラムや、ラインアウトで早く上げるというところを見てほしいなと思います。
チームの目標は、プール戦を勝ち抜いてベスト8に行くことです。個人としては前回、大会前に怪我をしてしまって、リハビリでほぼ終わってしまったので、今回は怪我なく、チームに貢献できるようにしたいと思います。


■関西オートメイション株式会社 柏木 豊様
私は彼女が会社に来るようになって、ラグビーを覚え始めました。試合も見に行きますが、彼女のプレーを見るとかっこいいなと思いますし、相手を蹴散らして突進していくところが爽快ですね。
彼女がメンバーに選ばれたら、応援しにイングランドに行きたい気持ちもあるんですけど、なかなか難しいので、彼女の勇姿をパブリックビューイングで見たいと思っています。
これからの1か月、ぜひ怪我なく過ごしていただいて、最終メンバーに選ばれてほしいですね。前回の忘れ物がありますから、それを取りに行ってもらいたいなと思います。

■川村 雅未選手
私はフランカーとして一番タックルに行ける位置にいる選手なので、そのタックルとラインアウトでしっかりボールを取るところを見てほしいなと思います。
選ばれたら前回に続いて二度目の出場になりますが、一度目は緊張しすぎて、自分のプレーを出せず、試合にはほとんど出られませんでした。前回はロックでしたが、今回は違うポジションでの出場になると思います。新しいチャレンジになりますが、今回は試合に出るだけではなく、しっかりと結果を残すところまでやっていきたいと思います。


■学校法人三幸学園 陶山 毅様
とにかく走り回って、タックルをいっぱいして、テレビにたくさん映るような大活躍をしていただきたいなと思っています。
一度、彼女が子どもたちを指導する現場を見学に行ったんですけど、会社で働いている時とは目の輝きがまるで違っていて、やっぱりトップアスリートなんだなって、その時に改めて実感しました。
最後まで諦めず、悔いのないようにやり抜いてください。期待しています。

■谷口 琴美選手
私は今回選ばれれば2回目の出場になるので、少しはチームを引っ張っていきたいなと思っています。個人的なプレーとしてはまだまだ課題があるんですけど、フォワードとしてセットピースの精度が上がっているので、そこに注目していただきたいです。
私のポジションは、ラインアウトではボールを投げ入れる役割で、スクラムでは最前列の真ん中で組んで、ボールを後ろに蹴り出す役です。どっちも重要な役割を担っているので、それを頑張りたいと思います。
チームとしては、3月からいろんな準備をしてきたので、やってきたことをすべて発揮して、予選プールを突破したいと思います。
前回は代表歴も浅かったですし、ワールドカップも初めてだったので、気持ちは入っていたんですが、余裕はありませんでした。そもそもメンバーに入れたことが嬉しくて、そこで満足してしまった部分もあったかもしれません。2回目の今回はもう少し余裕があると思いますし、もっとチーム全体のことを考えてプレーしたいですね。


■エヌケイエス株式会社 今村 尚利様
もともと目立つプレーヤーではなく、職人的な動きをずっとしている選手だと思っています。やっぱりそういう人がいないとチームは勝てないと思いますし、そこが彼女の特長ですから、大会でもその強みを出してもらいたいですね。
職場ではいじられキャラで、社員のみんなに可愛がられる存在です。彼女がワールドカップに出ることで社員の士気も上がっていますし、彼女としても関係者全員の支えがあってこそ、ここまで来られたと思います。とはいえ、あまりそういうことは気にせず、自分のパフォーマンスを全力で出し切って、楽しんでプレーしてほしいなと思います。

■津久井 萌選手
私の強みはパスの正確性とディフェンスです。パスの正確性については、2020年からずっと今のヘッドコーチの藤戸さんに鍛えられてきました。当時はコロナで、私は地元の群馬にいたんですけど、群馬までわざわざ来てもらって、教えていただきました。5年間かけて練習してきたパスなので、そこに注目してください。
ワールドカップではニュージーランド、アイルランドと格上のチームと対戦します。すべの試合で自分たちのベストパフォーマンスを出し切らなければ勝つことは難しいと思うので、最高のパフォーマンスを出せるように頑張りたいと思います。これだけ長い合宿をやってきたので、自信はあります。


■株式会社リベスト 荒井 伸吉様
怪我なくプレーしてほしいですが、でも怪我を恐れずに全力でぶつかってほしいという気持ちです。本人も言っていましたがパスのスピード、正確性というものが武器ですから、素晴らしいパスをたくさん出して、勝利に導いてほしいというふうに思います。
怪我を恐れていると反対に怪我をしちゃうので、とにかく全力で頑張ってほしいだけです。だけど親心としては、怪我をしないように。そう祈っています。

■櫻井 綾乃選手
私の強みはハードワークです。あと目の前を見て、どこに仕事があるかっていうのを常に探し続けているので、そういうところを見ていただけたらと思います。
今度のワールドカップは自身のキャリアにとって本当に大きな節目となる大会だと思っています。そこに向けて少しでもチームに貢献したい。プレーはもちろん、プレー以外のところでもやるべきことはたくさんあるので、そこをしっかりとやっていきたいと思います。

■株式会社NTTファシリティーズ 長谷川 和巳様
彼女は怪我ですごく苦しんだ時期がありましたが、そういう逆境の中でもしっかりと前を向いてラグビーにも、仕事にも真摯に取り組んでくれていました。そういう姿勢に社員一同、すごく勇気づけられてきたと思っています。ワールドカップでもはつらつとしたプレーを見せてもらって、社員を勇気づけてもらいたいなと期待しています。
国内での最後のテストマッチでも全力でプレーして、ワールドカップで活躍できるように頑張ってください。
■株式会社NTTファシリティーズ 友部 一弥様
長い期間、悔しい想いをしてきたと思うので、それを全部吹き飛ばすようなプレーを全力でやってもらえたらなと思います。もう、頑張ってとしか言うことはないですね。悔いのないよう全力で頑張って、社員に勇姿を見せてください。



■加藤 幸子選手
前回大会の結果も良くなかったので、正直、あまり期待されていないかもしれません。でも、自分たちの実感として、どこの国よりもハードワークをしてきた自負がありますし、きついことをやってきたと思っています。今までやってきたことを大会でも出すことができたら、結果も残せると思っているので、みんなのハードワークする姿を見ていただきたいです。
ひとつでも多く勝って、日本の女子ラグビーってこんなにすごいんだって思ってもらえるように、頑張りたいと思います。

■小林 花奈子選手
私はフォワードらしいバックスなので、相手に当たるインパクトだったり、コンタクトプレーのところを注目してほしいです。
海外でプレーしていた分、外国人選手に負けたくない想いも強いです。私がいたのは国際色豊かなチームだったので、いろんな国の選手がいましたし、ワールドカップで再会しようとも話していました。彼女たちと対戦するのは楽しみですし、もちろん負けたくはありません。
しっかりとチームに貢献して予選突破することが最低限の目標です。それができれば日本の女子ラグビーの歴史が変わると思うので、一戦一戦、集中して頑張りたいと思います。

■横河武蔵野アルテミ・スターズ藤戸恭平ヘッドコーチからのコメント
私は日体大でコーチをしていた時期があるので、その当時から教えていた選手もいますし、2017年のワールドカップの時にはバックスコーチとして帯同したんですが、その時のメンバーである津久井が今回も選ばれています。これまでのことを考えれば、特別な想いがありますし、今回選ばれた7人はチームでもレベルアップしてきたメンバーなので、今回しっかりと選ばれたことは本当に嬉しいですし、彼女たちを尊敬もしています。
代表と所属チームの強化は別物で、あくまで私はアルテミ・スターズとのヘッドコーチとして彼女たちのレベルアップのお手伝いをしてきました。ただ、世界的に見てもそうですけど、フィジカルのところが大きくレベルアップしているので、ここ数年で環境だったり、やり方っていうのを一から見直して、フィジカル強化に取り組みました。
しっかりと筋トレして、身体を作って、フィジカルを世界水準にもっていくことは、我々のチームだけではなく、どのチームも取り組んでいること。そこが上手くいっているからこそ、今の日本は世界でも戦えるチームになってきていると思います。
戦い方や戦術というのは、私も外から見ているだけなので分かりませんが、個人的には前回大会よりも、いい試合ができるんじゃないかなと見ています。ニュージーランドはちょっとレベルが上ですが、アイルランドとスペインには勝つチャンスは大いにあると思っています。次のスペインとのテストマッチでどのくらいの状態にあるかが少し分かると思うので、楽しみですね。
まだ彼女たちは候補メンバーではありますが、実力に関しては日本代表の中でもしっかりと自信を持ってできるレベルだと思うので、必ず選ばれると思っています。
大事なのはコンディションですね。怪我をせずに大会までしっかりとビルドアップして、コンディションを持っていくということが、女子も男子も一番難しいところ。直前での離脱というのはこのスポーツではよくあることですから。激しいトレーニングをこなしながらも、怪我をせずにメンバーに残り続けることが、大会までの期間で一番大事になってくると思うので、そこにしっかりフォーカスして、取り組んでほしいですね。

(ライター:原山裕平)
■横河武蔵野スポーツクラブに関するリンク
横河武蔵野スポーツクラブのパートナーシップにご興味のある方は、
以下関連リンクからお問い合わせいただけると幸いです。