大日本印刷(DNP)
区役所職員と住民を巻き込んで自治体のDXを推進
大日本印刷株式会社(DNP)は東京都文京区と共同で、同区の職員向けに実践型「サービスデザイン」研修を2024年8月〜2025年3月に実施しました。この研修では、外国人留学生の収入申告など、住民と職員双方の負担が大きい行政サービスの課題に対し、現場の声を踏まえ職員とともに解決策を出し合い、行政サービスの質の向上をめざしました。研修を通じて創出した計画やアイデアは、2025年8月以降に順次、業務の中で実施されていく予定です。
自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)については従来、既存のシステム導入や外部委託が多かったのに対して、本研修では「職員自身がサービスの在り方を見直し、現場で実践する」ことを重視しています。生活者ニーズを起点とし、課題の本質から解決していく「デザイン思考」と、短期間で改善を重ねる開発手法の「アジャイル」の理論を活かし、自治体職員が自ら公共サービスを改善する実践機会を提供して、DX人材の育成にもつなげました。

実践型「サービスデザイン」研修の背景と狙い
経済産業省は、自治体のDX推進に不可欠な基本知識として「サービスデザイン」の重要性を示していますが、現場への定着が進んでいないのが実情です。特に、自治体職員に対する教育や実践機会の不足により、住民と職員の双方に価値あるサービスを提供するための人材や体制が整っていないという課題があります。
この課題の解決に向けてDNPは今回、文京区情報政策課と協働して、職員向けに実践型「サービスデザイン」研修を提供しました。住民と職員双方の視点から行政サービスを見直し、その質の向上とDX人材の育成を同時に推進します。今回の研修は、単なるシステム導入や業務改善にとどまらず、サービスの担い手である職員が住民の視点で課題を捉え、自ら考え、解決に向けて仕組みや制度等を再設計できる“人づくり”に重点を置きました。
実践型「サービスデザイン」研修の取り組み内容
外国人留学生の申告勧奨
○顕在化した問題:国民健康保険料に関する外国人留学生からの問い合わせが窓口の繁忙期に急増し、長時間待たせてしまうといった問題が発生していました。
○真の課題:住民税を正しく申告することで、収入に応じて減額された国民健康保険料の通知を受けることができます。しかし、外国人留学生は区役所からの住民税申告通知の郵送物を見ておらず、制度自体も理解できていないということがインタビューから判明しました。その結果、国民健康保険料の通知段階で問い合わせが殺到していました。加えて、自治体通知物の日本語が丁寧すぎて、外国人留学生にとっては逆に分かりにくいということもわかりました。
○解決策:日本語学校の先生によるSMSの登録・活用促進
問題を解決するには、国民健康保険料の計算に必要な「住民税の申告」について外国人留学生が正しく理解することが重要だとわかりました。内容を理解して自発的に行動できるように、留学生のメリットが高くシンプルな表現の情報をSMS(ショートメッセージサービス)で配信するサービスを企画しました。日本語学校の先生が生徒である留学生にこのSMSの登録を促し、理解を深めてもらうことで、留学生の収入に合った保険料通知をはじめから受け取ることができ、問い合わせる必要が無くなる効果が得られると想定しています。今後は、次回の申告時期に向けて、より効果的なメッセージ送信サービスの検討を進めていきます。

■東京都文京区・小林篤史氏からのコメント: 今後も、サービスデザイン思考の実践的な研修を継続し、実務での成功事例を積み重ねることで、職員に浸透させていきたいと思っています。そして、文京区職員の状況に適した、サービスデザイン思考のガイドラインを作成し、外部の専門家に頼らず、自走できる組織を目指してまいります。
今後の展開
DNPは引き続き、自治体のDXに向けて「サービスデザイン」実践力の向上と、職員の自律的なマインドの醸成・形成と、住民のニーズへの迅速な対応につながる新たな価値の創造を支援します。
※ サービスデザイン・ラボについて → https://lp.dnp.co.jp/servicedesignlab/
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