株式会社帝国データバンク
「製氷業界」動向調査(2024年度)

株式会社帝国データバンクは、全国の「製氷」市場について調査・分析を行った。
SUMMARY
2024年度の製氷市場は691億円で、前年度比2.9%増加し、4年連続で拡大した。記録的な暑さで「冷やす」ニーズが急増し、家庭用のかちわり氷やコンビニコーヒー向けの氷需要が拡大。観光客やインバウンド客の増加で飲食店向け需要も上向いた。「高級かき氷」やカクテル用の品質の高い氷など新たな需要も発生し、2025年度も市場拡大が見込まれる。
[調査対象] 食用・産業用の氷を製造・販売する企業
[注] 業績等のデータについては、2025年8月時点における帝国データバンクが保有する企業概要ファイル(COSMOS2、約149万社収録)、および企業信用調査報告書(CCR、約200万社収録)、外部情報などを基に集計した。
なお、製氷企業の業績データは一部推定・予想値を含む
製氷市場、2024年度は691億円 4年連続で拡大
日本各地で記録的な暑さを背景に、冷たい「氷」の売り上げが好調だ。一般家庭や飲食店向けの「かちわり氷」や、鮮魚店向けの「水産氷」、工業用途の氷を含めた2024年度の製氷市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比2.9%増の691億円だった。コロナ禍で大幅に需要が落ち込んだ2020年度(589億円)以降、4年連続で前年度を上回るなど、市場は回復傾向が続いている。

近年は記録的な猛暑の影響で「冷やす」ニーズが急増し、製氷市場は規模拡大の追い風が続いている。各社の業績動向をみると、2024年度は製氷企業の4割近くが前年度から「増収」を確保した。家庭用では、夏場の「かちわり氷(ぶっかき氷)」をはじめとする袋詰め氷の需要に加え、近年は定番商品となった「コンビニコーヒー」向けの氷需要が拡大している。
コロナ禍以降は「家飲み」スタイルも定着し、自宅で氷にもこだわったドリンクを楽しむ層が拡大したこともあり、かちわり氷のほかに「アイスボール」など付加価値の高い氷の需要が家庭用で伸長し、販売単価が上昇したことも好材料となった。また、観光客やインバウンド客の増加で飲食店や宿泊業向け需要の拡大が目立ったほか、夏祭りなど各種イベントがコロナ禍前並みに回復し、特にかき氷店や露店からの引き合いが増えるなど、業務用途の製氷需要が大幅に増加したことが製氷市場を大きく押し上げた。そのため、近年は閑散期の冬季にも工場を稼働させ、夏季出荷用の氷を備蓄するといった対応もみられた。

一方で、損益面では前年度から「減益」となった企業が約4割を占め、コロナ禍で需要が急減した2020年度(41.4%)に並ぶ高い水準で推移した。製氷各社では電力料金や人件費など製造コストに加え、段ボールやビニールなど包装資材、冷凍輸送といった各種コストの上昇に加え、工場の老朽化に伴う設備更新の必要性に迫られている企業もあり、販売価格の引き上げなどの対応に迫られている。ただ、過年度に複数回の値上げを行ったため再度の大幅な価格転嫁が難しく、結果的に製氷各社では「増収減益」となる傾向が目立った。
足元では、フルーツをふんだんに使った「高級かき氷」向けの氷や、カクテル用の品質の高い氷など多様な需要に対応した氷製品も登場し、「氷需要」は拡大傾向が続いている。効率的なコスト管理など課題はあるものの、今夏の猛暑も背景に、2025年度の市場規模も前年度を上回る推移が見込まれる。