市原市
「更級日記」の作者・菅原孝標女が帰京のため、上総国府(現在の千葉県市原市)を出発した1020年から数えて、千年の節目に当たる2020年に、市原市では『更級日記千年紀文学賞』を創設しました。
この度、第5回更級日記千年紀文学賞の受賞作が決定しましたので発表します。
今回も、市原市内、千葉県内はもちろん、全国各地、さらには海外から、多くの優れた作品が集まりました。

応募総数
3,000点(過去最多)
一般の部
207点(小説143点、エッセイ(紀行文を含む)64点)
小中学生の部
2,793首(「山」をテーマとした短歌:小学生2,044首、中学生749首)
選考委員
一般の部
選考委員長:椎名 誠(作家)
選考委員:加賀美 幸子(エッセイスト、元NHKアナウンサー)、岸本(下尾)静江(作家、市内在住)、竹下 亜紀(小学館編集者)
小中学生の部
市原歌人会
受賞作品の閲覧
受賞作品は、更級日記千年紀特設サイトで公開します。
https://sarashina-sennenki.com/
授賞式
日時:令和7年11月15日(土)13時30分から
場所:市原市市民会館小ホール
出席者:椎名誠選考委員長、市長、教育長
受賞作品・受賞者・講評
<一般の部:小説>(敬称略)
▼大賞
「シアーライン」 青山 祐一郎(あおやまゆう いちろう)(千葉県船橋市)
▼優秀賞
「コスモス」 栗原 知子(くりはら ともこ)(千葉県千葉市)
▼選考委員特別賞
「素泊りの客」 相良 文雄(さがら ふみお)(神奈川県)
「市原の父」 佐藤 勉(さとう つとむ)(京都府京都市)
<一般の部:エッセイ(紀行文を含む)>(敬称略)
▼大賞
「冷凍庫のワカサギ」 田村 奈実(たむら なみ)(埼玉県三郷市)
▼優秀賞
「干し娘物語」 鶴岡 和歌(つるおか わか)(千葉県市原市)
「回廊をわたる風」 義田 葵(よしだ あおい)(ニュージーランドネルソン市)
▼選考委員特別賞
「父の誤算」 丸 房代(まる ふさよ)(千葉県市原市)
<講評:椎名誠選考委員長>
五回目を数える本賞も年数を重ねることによってすぐれた作品が集まり、質のいい文学賞に育ってきている。今回の小説の大賞受賞作は「シアーライン」。昔、「五井のはまぐり」を料理する店で修行した主人公が、はまぐりの料理と触れ合うエピソードが語られる。全体に落ち着いた筆致と、郷土色豊かなテーマがうまく作用しあって、味わいの良い短篇になっている。この他「素泊りの客」、「コスモス」などテーマと味わいのそれぞれ質感の異なる作品が並んで、本賞における短編小説の現代的なスタイルがここにしっかり揃ってきたような印象を受けた。
エッセイも素晴らしい作品が集まったが、とりわけ「冷凍庫のワカサギ」は人間の喜びと悲しみをストレートに取り込んだすぐれた作品で、この賞の満票を得た。「回廊をわたる風」は外国生活から里帰りした女性の故郷をメランコリックに旅する話で、心地の良い完成度だった。
<小中学生の部:小学生>(敬称略)
▼大賞
「山道で見つけた花にこっそりと名前をつけた秋の遠足」
田中 玲奈(たなか れな) 東京都日野市 日野市立日野第六小学校4年
▼優秀賞
「山の中自然の音がなりひびく雨がふる音木がゆれる音」
神田 七海(かんだ なみ) 千葉県市原市 市原市立東海小学校5年
「山白く風におされて通学路春はまだかと見つめる彼方」
菊池 美瀬(きくち みらい) 岩手県奥州市 奥州市立岩谷堂小学校4年
▼佳作
「山さんぽせせらぎに耳すましたら小湊線の汽笛きこえた
東田 創佑(とうだ そうすけ) 千葉県市原市 市原市立清水谷小学校5年
「会いたいな山梨にいるじじとばば山の字を見て思い出す夏」
長谷川 夕夏(はせがわ ゆうか) 千葉県市原市 市原市立湿津小学校4年
「夏の山一度でいいからのぼりたい雲より上だと言ってみたい」
花岡 俊彦(はなおか としひこ) 千葉県市原市 市原市立辰巳台東小学校6年
※「花」は草冠が『+ +』と離れている異体字です
<小中学生の部:中学生>(敬称略)
▼大賞
「里山よりすべり降りてきた夏風がアロハシャツ着た祖父の背ぬける」
横道 玄(よこみち ひかる) 山口県光市 山口大学教育学部附属光中学校2年
▼優秀賞
「人々がすすめていくよおんだんか山よたすけて山をたすけて」
大友 煌月(おおとも こうが) 千葉県市原市 市原市立姉崎東中学校2年
「山よりも高い私の夢はまだ登山途中だ いざ、頂上へ」
冨田 彩貴(とみた さき) 長崎県佐世保市 佐世保市立日野中学校3年
▼佳作
「さわやかな緑を包む山からのおいしい空気体にチャージ」
伊藤 咲柔(いとう さや) 千葉県市原市 市原市立菊間中学校2年
「家々の灯りは山のネックレス星の童話に耳傾ける」
染谷 春花(そめや はるか) 茨城県土浦市 常総学院中学校3年
「良い時もつらい時こそ帰りたい静かな山の奥に有る我家」
辻 彩可(つじ あやか) 千葉県市原市 市原市立南総中学校1年
※「つじ」はしんにょうの点が1つです。
<講評:市原歌人会>
五回目となりました更級日記千年紀文学賞小中学生の部(短歌)のテーマは「山」でした。応募数は小学生2,044、中学生749で過去最高の2,793首でした。学校単位での応募の多い中、今年も市原市のホームページ等を通じて個人の応募が各地から有り、短歌への関心の深さに高齢化が危惧される現在の短歌界に明るい未来のある事を確信致しました。
今回、「山」という大きなテーマですが実在する山だけでなく文字からのイメージで生まれた作品や自身の目標を山に例えた作品も多く、また地球温暖化による災害に心を込めた作品など社会詠にも目がとまりました。
選歌は例年通り、基本を踏まえ自身の言葉で表現されているかなどを基に選考委員10人が一次から三次まで選考、更に話し合いを重ね視点がはっきりとしていて個性的な表現であり、読み手にその感動が伝わってくる作品を絞り込み、最終選考では小学生・中学生ともにそのレベルの高さから選考委員の大半の支持をもって大賞に決定いたしました。