一般社団法人日本再生医療学会
一般社団法人日本再生医療学会(東京都中央区、理事長:西田幸二、以下JSRM)は、2025年7月20日、国際細胞外小胞学会(アメリカ・ニュージャージー、President:Dr. Kenneth W. Witwer、以下ISEV)と、細胞外小胞(EV: extracellular vesicle)およびセクレトーム(secretome)分野における国際的な連携強化を目的とした覚書(Memorandum of Understanding: MOU)を締結いたしました。
本MOUは、細胞外小胞およびセクレトームの科学的・臨床的応用の推進に向けた研究協力、国際的な規制の調和や標準化の推進、そして社会に向けて積極的に情報を発信し、理解と信頼を高めていくことも含めた、包括的な協力体制の構築を目的としています。
主な協力内容:
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細胞外小胞・セクレトーム分野における国際共同研究および産業化の支援
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科学・臨床・規制等に関する情報共有と知識交換
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国際的なガイドラインや標準化に向けた協働
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学会・フォーラム等の共催による産学官の対話促進
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社会に向けた発信活動を通じた理解と信頼の醸成
本会は, 細胞外小胞等の健全な臨床応用を目指し、関連機関と連携し、“エクソソーム等の調製・製造に関する考え方”(国内公開2021年3月、英文2022年5月)および“細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス”を作成しました(国内公開2024年4月、英文公開2025年3月)。本MOUの締結を通じて、細胞外小胞・セクレトームを含む再生医療分野における国際連携、国際標準化をさらに広げ、革新的な研究成果の創出と社会への実装に継続して取り組んでまいります。
【用語解説】
細胞外小胞(EV: extracellular vesicle)
細胞から放出される、脂質二重層によって区切られかつ自己複製できない(すなわち、機能的な核を含まない)粒子。「エクソソーム(exosome)」や「エクトソーム(ectosome)」は特定の生合成経路に由来するとされるがその証明が難しく誤用されやすいため、ISEVは通常、一般的な用語「EV」の使用・活用を推奨している。
[出典:Welsh JA, et al. Minimal information for studies of extracellular vesicles (MISEV2023): From basic to advanced approaches. J Extracell Vesicles. 2024;13(2):e12404. Erratum in: J Extracell Vesicles. 2024;13(5):e12451.]
セクレトーム(secretome)
細胞から細胞外へ分泌される全ての種類の分子および生物学的因子の集合。セクレトーム成分は「可溶性因子」(成長因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素)と「細胞外小胞」(脂質、タンパク質、RNA/DNAのサブタイプの輸送に関与)に大別される。
[出典:Daneshmandi L, et al. Emergence of the stem cell secretome in regenerative engineering. Trends Biotechnol. 2020;38(12):1373-1384.]
日本再生医療学会(JSRM)について
JSRMは、世界最大規模の再生医療に関する学会であり、約6,000人の会員を擁し、基礎医学・臨床医学、組織工学、細胞生物学などの自然科学分野から、生命倫理学、規制科学、法学、医療経済学といった人文社会科学分野まで、多岐にわたる研究者が参加しています。JSRMは、学術界、産業界、政府などの多様な分野における関係者が一堂に会し、再生医療に関する課題について議論を行う唯一無二のプラットフォームとして認識されています。
国際細胞外小胞学会(ISEV)について
ISEVは、細胞外小胞(EV)研究の国際的なリーダーとして、標準化、教育、知識の共有、応用推進を通じて本分野の発展を牽引しています。2011年に設立され、現在は米国ニュージャージー州に本部を置き、世界中に1,700名を超える会員を有しています。年次大会やオープンアクセス学術誌の刊行などを通じて、EV研究者のグローバルなネットワークと科学的進展を支えています。ISEVは、EV研究の標準化と再現性向上のためのポジションペーパー/ガイドラインとしてMISEV(Minimal Information for Studies of Extracellular Vesicles)を定期的に発出し、世界をリードしています。(2014年、2018年、2024年に発出。最新版はMISEV2023と呼ばれています。)