文化庁

国立映画アーカイブでは、本年度の「ユネスコ『世界視聴覚遺産の日』記念特別イベント」として、「発掘された映画たち―小宮登美次郎コレクション PART 2」を10月4日(土)に開催します。
1990年度に当館に寄贈された小宮登美次郎コレクションは、ヨーロッパの無声映画を主として、『さらば青春』(1918、A・ジェニーナ)をはじめ、『除夜の悲劇』(1924、L・ピック)や染色版『燈台守』(1929、J・グレミヨン)など、世界で唯一の現存もしくは最良のプリントが多々含まれている貴重な映画遺産です。1991年の企画上映「発掘された映画たち―小宮登美次郎コレクション」にて62作品余をお披露目後、世界各国で上映されてきました。
このたび、イタリアのチネマ・リトロバート映画祭と2021年に共催した「映像の迷宮:小宮登美次郎コレクション」での調査もふまえ、これまで未上映だった作品をあらたに紹介いたします。
見どころ
◇世界的なヨーロッパの無声映画遺産「小宮登美次郎コレクション」から、これまで未上映だった作品を16本、35mmフィルムでお披露目上映します。
本イベントでは、同コレクションの未公開プリントから厳選し、【Aプログラム】に世界初公開となる8本を、【Bプログラム】には、イタリアのチネマ・リトロバート映画祭と2021年に共催した「映像の迷宮:小宮登美次郎コレクション」の上映作品から8本を上映します。いずれも日本では初めての上映となります。
◇世界で唯一の現存もしくは最良の可能性が高いと思われる35mmプリントが10本含まれています。
上映作品リストに★をつけている10本は、2021年のチネマ・リトロバート映画祭での調査と上映後も未だ現存情報を確認できていないフィルムです。
◇文献でしか知ることがなかなかできないヨーロッパ無声映画のスターや監督の作品を鑑賞することができます。
無声映画史に必ず登場する以下の監督や俳優の作品を上映します。
フランス:[監督]ミシェル・カレ、ジェラール・ブールジョワ、フェルディナン・ゼッカ、ルネ・ルプランス、[俳優]ジョルジュ・ヴィンター
イタリア:[監督]マルセル・ファーブル、マリオ・カゼリーニ、アウグスト・ジェニーナ、エドゥアルド・ベンチヴェンガ、[俳優]ジジェッタ・モラーノ、マリオ・ボンナルド、フェボ・マリ、マリー・クレオ・タルラリーニ
ドイツ:[監督]ハリー・ピール、[俳優]ルートヴィヒ・トラウトマン
◇ヨーロッパ無声映画の染色、ステンシルなど、多様な映画フィルムの色彩を楽しむことができます。
上映する16作品中、14本のプリントが各場面ごとにさまざまな染色や彩色、調色、白黒など、当時のフィルム技術を活かした色彩表現をしています。

神様の仲立
ステンシル

臆病狼
染色

フロンティニャック家の最後の男
染色

立派な金剛石
染色
◇トリック映画、喜劇、活劇、人間ドラマなど多様な作品をすべて日本語字幕・ピアノ伴奏つき(伴奏:柳下美恵)付で上映します。

神様の仲立
トリックによる魔法映画

熊狩り
イタリアの初期喜劇映画!

空中のブラウン
当時大人気の探偵活劇

自殺倶楽部
人間ドラマ調の喜劇
◇現存プリントに由来する不完全な作品の上映と鑑賞から、映画保存の重要性を学ぶことができます。

密計者
本来60分超の作品。現存する22分を見るだけでも、様々に展開する景観と人間ドラマの巧みな演出に、失われた部分が惜しまれる。

再び海の彼方へ(登録題名)
現存は29分。有名な俳優が出演し、内容も演出も素晴らしいが、イタリアの映画史家でも作品を同定できずに居る作品。

立派な金剛石
イタリア無声映画史上の監督の一人アウグスト・ジェニーナの大作で本来は80分程。冒頭部にあたる現存の13分だけでも、スケールの大きさがわかる。

アトラス
曲芸団を経て映画界入りしたM・グァイタの「アトラス」シリーズ。現存する15分だけでも超人的な活躍で見る者の目を奪うが、資料が少なく全貌が掴めない。
上映作品(2プログラム、計16作品)
[Aプログラム] 13:00-15:00
1.臆病狼 La louve(1910、仏、M・カレ)A・テサンディエ、11分
2.ワンテーの夢 Le songe de Nick Winter(1911、仏、G・ブールジョワ)G・ヴィンター、7分
3.自殺倶楽部 Il bivio della morte(1912、伊、不明)G・モラーノ、M・ボンナルド、23分★
4.密計者 La Leçon du gouffre(1913、仏、F・ゼッカ、L・ルプランス)L・アレクサンドル、22分★
5.母の命日 L’anniversario(1914、伊、R・トレンティーノ)ルイジ・キエサ、21分★
6.悪魔の眼 Das Teufelsauge(1914、独、H・ピール)ルートヴィヒ・トラウトマン、11分★
7.盗まれた泥棒 The Biter Bit(1910、仏、不明)T・セルネ、G・カユザック、G・サイヤール、9分
8.神様の仲立 原題不明(1900、仏)、9分★
[Bプログラム] 16:30-18:30
1.薄馬鹿大将ダム君 Robinet innamorato di una chanteuse(1911、伊、M・ファーブル)、M・ファーブル、7分
2.フロンティニャック家の最後の男 L’ultimo dei Frontignac(1911、伊、M・カゼリーニ)M・C・タルラリーニ、10分★
3.空中のブラウン Schatten der Nacht(1913、独、H・ピール)L・トラウトマン、23分
4.再び海の彼方へ(登録題名) 原題不明(1913、伊、不明)F・マリ、M・C・タルラリーニ、29分★
5.立派な金剛石 La fuga dei diamanti(1914、伊、A・ジェニーナ)F・コッツィ・ケネディ、13分★
6.アトラス Atlas. Episodio 2: accusa D’ oltre Tomba(1920、伊、M・グァイタ)M・G・アウソニア、15分★
7.熊狩り Caccia all’orso(1912、伊、不明)D・シルヴェストリ、7分★
8.羊飼の夢 Se fossi Re!(1912、伊、E・ベンチヴェンガ)M・ヴォレー・ブッツィ、9分
開催概要
企画名:ユネスコ「世界視聴覚遺産の日」記念特別イベント
発掘された映画たち―小宮登美次郎コレクション PART 2
英語題名:In Celebration of UNESCO World Day for Audiovisual Heritage
Cinema: Lost and Found
From the Collection of Komiya Tomijiro Part 2
日時:2025年10月4日(土) [Aプログラム] 13:00-15:00 / [Bプログラム] 16:30-18:30
*開映後の入場はできません。
会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU
料金:一般1,050円、高校・大学生・65歳以上840円、小・中学生600円、障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)無料、キャンパスメンバーズ(教職員)500円、キャンパスメンバーズ(学生)400円
チケット:オンライン販売は9月9日正午から各上映回の開映15分前まで*当館HPより販売。
窓口販売(1F)は各上映回の開映1時間前から5分前まで若干数
定員:299席(各回入替制・全席指定席)
主催:国立映画アーカイブ
協力:株式会社橋本ピアノ
HP:https://www.nfaj.go.jp/event/unesco2025/
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)