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9000人のリアルな声から考える「性と恋愛」『性と恋愛に関する意識調査2025』を通じて語られた日本の性教育の課題

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公益財団法人ジョイセフ

国際協力NGOジョイセフ(東京都新宿区)は、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)の啓発プロジェクト「I LADY.」の一環として、2025年8月27日にトークイベント「『性と恋愛に関する意識調査』2025 ~9000人の#性と人生のホンネ 性別間、世代間、そこに見えた意識の差は?」を開催しました。

本イベントには、調査の監修者であるジョイセフ理事で法学者の谷口真由美氏と産婦人科医・医学博士の宋美玄氏、I LADY.ピア・アクティビストの松田七海氏、順天堂大学教授の西岡笑子氏、びわこんどーむプロジェクト代表で立命館大学大学院先端総合学術研究科 一貫制博士課程に在籍する清水美春氏が登壇。研究者・医療従事者・若者アクティビストが一堂に会し、調査結果をもとに日本の性教育とSRHRの課題や可能性を語り合いました。

本イベントは、9月の「世界性の健康デー」「世界避妊デー」「国際セーフアボーションデー」に先駆けて実施。15~29歳の若者4,958人、30~64歳の大人4,060人、あわせて約9,000人を対象に行った意識調査の結果を発表し、世代や性別ごとの意識の違いを起点に、性教育やSRHRの今後を考える場となりました。

目次

第1部:「性と恋愛の意識調査」2025 結果発表

調査では、世代間・性別間で顕著な意識差が明らかになりました。

恋愛・結婚・家族観

出会いの場は若者・大人ともに「職場や学校」が最多で、若者では「マッチングアプリ」が第2位に。若者の7割が結婚を望み、6割が子どもを持ちたいと回答しましたが、どちらも「経済的不安」が最大の理由で実現を妨げていました。また、恋人やパートナーに「合わせてしまう」と答えた割合は、若者で7割、大人で6割を超えました。

性・セックスの意識

セックスのイメージは、男性が「気持ちいい」、女性は「スキンシップ」や「子づくり」が上位に。希望をパートナーと話し合った経験は両世代で約3割にとどまりました。性的同意については9割が「大事」と回答した一方、「よくわからない」と答えた人も若者で4割にのぼります。また「気が乗らないのに応じた経験」がある人は若者で4割、大人で5割に達しました。

避妊・性感染症予防

「避妊は男性がするもの」と答えた割合は若者で5割、大人で7割。避妊方法は大人の8割がコンドームと答えましたが、低用量ピルや緊急避妊薬の利用経験は若者の方が高い結果に。妊娠を望まない性行為で「避妊をしなかった経験」がある人も、若者で2割、大人で4割に上りました。

セクシュアル・ヘルス

若者の情報源は「インターネット・SNS」が中心で、正しい知識に触れる機会の不足が浮き彫りになりました。HPVワクチンを接種した若者女性は4割にのぼる一方、子宮頸がん検診を受診している割合は2割程度と低い結果となりました。

自分の人生を自分で決められるか

学校での性教育を「役立っている」と答えたのは若者で半数、大人では3割未満。特に「セックス」「避妊」の内容が不足していたとの声が多く聞かれました。また名字に関しては、若者男性の4割が「変えない」と答えた一方、若者女性は半数近くが「変える」「状況によっては変えてもよい」と回答しました。

このパートには谷口真由美氏、宋美玄氏、松田七海氏が登壇。調査結果をもとに、世代や性別で異なる恋愛・性への意識や、日本における性教育の不足について議論が交わされました。

『性と恋愛に関する意識調査』2025

https://ilady.world/

第2部:日本における性教育とSRHR

続くセッションでは、西岡笑子氏と清水美春氏が登壇。自身の教育現場での経験を踏まえ、日本の性教育の現状と課題について語りました。

国際的に推奨される「包括的性教育(CSE)」が幼少期から段階的に導入されている一方、日本では依然として「特別なもの」として扱われがちである現状を指摘。「性教育は病気や避妊の知識にとどまらず、ウェルビーイングや人間関係を良くするための学びである」と強調しました。

また、現場では「もっと知りたかった」「自分を守る方法がわかった」といった生徒の声が多く寄せられる一方で、授業時間の制約や保護者の反発といった課題も存在。学校だけでなく、家庭・地域・行政・専門家が連携し、オープンに語れる社会をつくることの重要性が確認されました。

さらに会場では、西岡氏が手がけた包括的性教育を進めるための教材『からだとこころの科学まるっとまなブック』が配布され、来場者に向けて実際に活用できる教材として紹介されました。

今後の展望

主催者であるジョイセフは、「性や恋愛について恥ずかしいことではなくオープンに語れる社会づくり」を目指し、教育・家庭・地域が一体となった支援体制の構築を呼びかけています。本調査で示された「知識不足」と「コミュニケーションの難しさ」への対応は、次世代が安心して生きていくための社会課題であり、今後も継続的に取り組んでいく方針です。

【イベント概要】

イベント名:「性と恋愛に関する意識調査」2025 ~9000人の#性と人生のホンネ 性別間、世代間、そこに見えた意識の差は?

開催日:2025年8月27日

形式:会場およびオンライン開催

主催:国際協力NGOジョイセフ「I LADY.」プロジェクト

URL:https://www.joicfp.or.jp/jpn/

監修者コメント

谷口真由美さん(ジョイセフ理事)

 2019年から2年ごとの調査をしている「性と恋愛」の意識調査は、このたび第4回目となりました。第一回目から監修に関わっていますが、今回の特徴としては、継続的な設問においては、これまでの調査と大きく変化したものはあまりないといえます。一方で、新しく調査の設問に加わったものをみてみると、地続きの問題があることが見えてきます。

 パートナーとの出会いは、若者、大人ともに第1位は「職場、バイト先、学校」とリアルな社会での出会いですが、その後、若者は「マッチングアプリ」や「SNS」が上位に入ってきますが、大人は「人からの紹介」と世代間の違いがみられます。結婚は新たに今回、子どもを持ちたいかという希望についてもあわせた設問としましたが、若者世代の7割は結婚願望があり、子どもを持ちたいという回答も6割を超えました。また、結婚したいがしていない理由、子どもを持ちたくない理由は、ともに「経済的不安」が第1位となり、大人世代でもそれぞれ、上位に入っています。ずっと言われてきていることですが、結婚や子どもを持つことを希望する人がそれを選択できる社会環境の整備の必要性が、改めて浮き彫りになりました。言い換えれば、政府が行っている少子化対策とのズレが浮き彫りになったともいえます。

 恋人・パートナーに気に入られるために合わせてしまう割合は、若者は7割を超え、大人世代でも6割を超えています。これは、性別や世代を問わず、親密な関係であればあるほど相手に自分のありのままを理解してもらいたいと考えていたとしても、実態としては、本当の自分を出すことができず、相手に気に入られようと行動しているということを示唆しています。このことは、自分の生き方に関すること、自分の人生の自己決定権を、相手に委ねてしまうという傾向でもあるといえます。つまり、性や恋愛に関することはもちろんですが、選択的夫婦別姓などにも影響が出ていると考えられます。以下、今回の結果とともに、これらの傾向についてみていきましょう。

 恋人・パートナーと、セックスに関する希望について話したことがあると回答したのは、若者・大人ともに3割程度にとどまりました。そのなかでも、男性より女性のほうが、性に関することを伝えにくいという規範も、まだまだ存在していることがわかりました。

 それは、例えば、気が乗らないのにセックスに応じた経験、つまり性的同意がないままセックスをした経験、イヤなのにNOと言えなかった経験ともいえますが、この設問などから読み取ることができます。この経験は、若者全体で35.1%、大人全体で52.4%にのぼりました。さらに細かく、男女、結婚の有無で内訳をみると属性別に高い順に、①既婚大人女性(67.2%)、②既婚若者女性(65.4%)、③未婚大人女性(61.5%)、④未婚若者女性(44.2%)、⑤既婚若者男性(42.7%)、⑥既婚大人男性(40.6%)、⑦未婚大人男性(36.7%)、⑧未婚若者男性(23.7%)となりました。いずれも、女性のほうが高い傾向がみられ、さらに年代と結婚の有無でも差が出ています。

また、異性間のセックスで避妊は誰がするものかということについては、主に「男性がするもの」と答えた割合は高い順に、①大人男性(72.7%)、②大人女性(65.5%)、③若者男性(59.9%)、④若者女性(49.9%)となっており、大人で男性に委ねる傾向が高いことがわかります。低用量ピルや緊急避妊薬を使用した経験のある割合は、若者の方が高い傾向にあります。

 セックスに対するイメージも、性別による差が大きく、男性では両世代で「気持ちいい」が第1位(若者男性46.2%、大人男性51.3%)となった一方、女性ではスキンシップ(若者女性39.4%、大人女性45.2%)や子づくり(若者女性24.6%、大人女性29.2%)が上位にランクインしました。

 性的同意については「絶対に大事だと思う」と回答したのは9割程度(若者86.4%、大人86.9%)であった一方、「性的同意とはどういうものか、正直わからない 」と若者の42.4%、大人の31.0%が回答しました。重要性はわかっていながらも、具体的な行動につながっていないという結果は、前回調査(2023)と同様の傾向です。性的同意という言葉だけではなく、知識、そしてどうすれば性的同意ができるのかというスキルも身につけられていないと、使うことはできないということです。

 学校で受けた性教育は「役立っている」と回答したのは若者の53.3%、大人の27.6%でした。特に不足していた/もっと学びたかったと感じた内容としては「セックス(性交渉)」で、若者32.0%、大人23.5%、「避妊」が若者25.5%、大人27.4%が上位となりました。

 その一方で、性に関する情報源は、「インターネット・Webサイト」が若者34.9%、大人39.3%と第1位で、若者は「動画サイト・SNS」が第2位(30.0%)。男性においては「アダルトビデオ・サイト」が若者男性で27.8%、大人男性で30.2%と上位に入りました。男性にセックスを委ねる傾向にあるなかで、とりわけ男性がアダルトビデオで描かれている内容を無防備に信じてしまうことの危険性は、どれだけ指摘しても足りません。アダルトビデオは、描かれている女性像も場面設定もファンタジー(架空のもの)であり、著しく現実をゆがめているものも多く存在しています。これらをAV神話とよびますが、AVは性的な知識の情報提供のために作成されたものではないのです。性に関する情報は、科学的に正しい情報を得ることがもっとも大切なことであり、それらに誰もがアクセスできる環境整備が急がれます。

 さて、ここまでと性質が少し違うように感じられるかもしれませんが、自身の姓について、「名字を変えるつもりはない」と回答した若者男性は41.8%でした。若者女性では9.6%だった一方、「名字を変えるつもりだ」「状況によっては変えてもよい」で49.6%を占める結果となり、結婚するカップルのうち約95%*で女性が改姓するという、性役割が残る現状を反映する結果となり、人生を相手に委ねてしまう傾向があるのは、男性より女性に多く見られる傾向とも合致します。*厚生労働省「人口動態統計」(2023年)より

 これらの結果からうかがえるのは、セクシュアル・リプロダクティブヘルス・ライツ(SRHR)が認識もされず、大切なものと捉えられていないことだということです。事実、SRHRという言葉は、若者で2.4%、大人で1.2%しか知られていません。自分の人生を誰かに委ねないためにも、SRHRをきちんと理解し、使えるようにしていくことが大切だと考えます。

宋美玄さん(産婦人科医・医学博士)

 今回の調査では、SRHR(性と生殖の健康と権利)に関するさまざまな項目について、男女の違いや世代間の差が浮き彫りになり、大変興味深い結果となりました。その中で私が特に気になった点についてコメントさせていただきます。

 若者世代で結婚して子どもを持ちたいという人は、男性で69.0%、女性で67.5%と7割に満たない結果でした。子どもを持ちたくないという主な理由は経済的な不安で、本来の妊娠適齢期には経済的な理由で産むことを選択できていない可能性があるかもしれないと思いました。

 また、性に関しても興味深い結果が得られました。セックスについて抱いているイメージが、若者男性の一番多い回答が「気持ちいい」(46.2%)であるのに対し、若者女性は「スキンシップ」(39.4%)、2番目は「愛が深まる」(33.8%)となっていて、「気持ちいい」は26.1%にとどまりました。この傾向は大人の方が強く、大人男性の51.3%が「気持ちいい」と答えているのに対し、大人女性では「気持ちいい」は17.7%で、5位までにランクインしませんでした。

 性的同意について、9割近く(若者86.4%、大人86.9%)が「絶対に大事だと思う」と回答していました。一方、「性的同意とはどういうものか、正直わからない 」と若者の42.4%、大人の31.0%が回答しているので、若い世代から性教育の場で「性的同意とは」ということを教えていかなければいけないと思います。

 また、「気が乗らないのにセックスに応じた」と回答したのは、若者男性では25.6%だったのに対し、若者女性では44.3%となっています。大人男性では39.1%、大人女性では65.3%と、その男女差が開いています。既婚の若者女性は65.4%、既婚の大人女性は67.2%と、既婚女性の方が気が乗らないのにセックスに応じた経験が多くなっており、夫婦間の性交同意やセックスのあり方についての議論が必要だと感じさせられました。

 避妊法については、全体的にコンドームが主流ですが、低用量ピルを使用したことのある若者は13.6%で、大人の8.9%より多くなっており、徐々に若者に浸透しているようで嬉しいです。

 また低用量ピル服用の経験は、若者女性で28.8%、大人女性で20.4%となり、徐々に浸透していると思われます。その入手先は「クリニックや病院」が最も多いですが(若者女性68.7%、大人女性83.4%)、若者女性ではオンライン診療が19.9%を占めており、インターネット購入・その他も8.9%となっていて、なるべく便利に手に入れたいというニーズを感じました。

 性に関する情報源は、「インターネット・Webサイト」が若者34.9%、大人39.3%が一番多く、「アダルトビデオ・サイト」と答えた若者男性は27.8%、大人男性で30.2%となっており、まだまだ商業ポルノの影響は大きいことがわかりました。こちらからもセックスそのものを含めた性教育の充実と、大人がアップデートする機会が望まれます。

 性の悩みを相談する相手については、全体の35.5%がいないと答えていて、まだまだ婦人科や医療機関がその受け皿になっていないことが伺われました。

今回の調査から、性的同意の大切さや、女性側が主体的にできる避妊方法については浸透してきていると思われましたが、性やセックスについてはまだまだ非対称だと思われました。

また、調査に協力くださった方のうち、性別を「その他」と答えられた方のサンプル数が少なかったので、数をもっと集めた意識調査の必要性を感じました。

調査結果を受けて ジョイセフより

2019年から2年おきに実施してきた4回にわたる本調査を通じて、日本社会における性と生殖をめぐる複雑で深刻な課題が浮き彫りになりました。調査結果は、性に関する知識不足だけでなく、根深いジェンダー格差、経済的制約、コミュニケーション不足、そして包括的性教育の欠如など、多岐にわたる構造的な問題の存在を明らかにしています。

特に注目すべきは、ジェンダー間、世代間、既婚・未婚といった様々な属性によって、性と生殖に関する体験や意識に大きな格差が存在することです。男性の性の健康相談における孤立、女性の自己決定権の制約、若い世代の経済的不安による人生設計の困難など、それぞれが相互に関連し合いながら、個人の尊厳と選択の自由を制限しています。

「少子高齢化」が進む現在の日本において、人口減少への対策が個人の基本的人権であるセクシュアル・リプロダクティブヘルス・ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)よりも優先される傾向があります。そのことに警鐘を鳴らすとともに、個人の尊厳と選択の自由を制限する「男/女らしさ」というジェンダー規範を取り払い、現在は異性婚カップルのみが受けられる社会的支援を、シングルペアレント、同性カップル、ひとりで生きる人なども家族形態によらず受けられる制度づくりを進めることで、真に誰もが自分らしく生きられる社会を実現することが、結果として少子化をはじめとする日本が直面するあらゆる課題の根本的解決につながると確信しています。

真の意味でのSRHRの実現には、包括的性教育の基礎教育への導入、ジェンダー平等の推進、そして一人ひとりが自分らしく生きられる社会づくりが不可欠です。ジョイセフは今後も、この調査で明らかになった課題に真摯に向き合い、皆さまとともに誰もが自分の性と生殖に関する権利を享受できる社会の実現に向けて、より一層努力してまいります。

登壇者プロフィール

谷口真由美(たにぐち・まゆみ)

ジョイセフ理事。法学者としてジェンダーや人権問題に精通し、メディア出演や講演を通じて社会課題を発信。性と恋愛2019、2021、2023、2025監修

宋美玄(そん・みひょん)

産婦人科医・医学博士。女性の健康や性に関する情報発信を幅広く行い、執筆やメディア活動でも活躍。性と恋愛2025監修

松田七海(まつだ・ななみ)

I LADY. ピア・アクティビスト。若者世代の視点からSRHRの課題に取り組み、啓発活動を展開。

西岡笑子(にしおか・えみこ)

順天堂大学教授。助産師。保健教育・性教育の専門家として、教育現場や研究を通じて包括的性教育の普及に取り組む。厚生労働省の研究班で『まるっと からだとこころの科学 まなブック』を作成

清水美春(しみず・みはる)

びわこんどーむプロジェクト代表。立命館大学大学院先端総合学術研究科 一貫制博士課程在籍。地域活動や研究を通じ、性教育やSRHRの実践と普及を進める。


■国際協力NGOジョイセフについて

ジョイセフは、すべての人が自分の意思で生き方を選択できる世界をめざして、基本的人権であるSRHRを推進する、日本生まれの国際協力NGOです。これまで半世紀以上にわたり、43の国と地域で、妊娠・出産・安全でない中絶によって亡くなる女性を減らすための支援、意図しない妊娠を防いで女性の人権を守るための家族計画の推進、性感染症の予防、SRHR推進のための啓発や教育、アドボカシーを行ってきました。​​ウェブサイト:https://www.joicfp.or.jp/

出典:PR TIMES

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企業プレスリリース詳細へ (2025年8月28日 16時17分)

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