国立大学法人 静岡大学
静岡大学農学部の富永晃好助教が、植物の眠り(休眠)をコントロールできる「物質X」の効果を実証し、社会実装につなげるため、クラウドファンディングを開始します。
地球温暖化の進行により、「眠り症」と呼ばれる発芽不良が、ナシ、モモなどの落葉果樹を中心に世界中で深刻化していることが、これまでの研究で明らかになっています。このような原因によって、世界的に農作物の平均収量の減少が報告され、多額の経済損失につながっています。植物の休眠を人為的に制御できれば、必要な時期に開花・発芽する「地球温暖化に強い農業」が実現可能となり、収量確保と経済損失の防止につながります。
研究者は、さまざまな化合物を眠り症常発樹に処理し、開花・発芽促進をもたらす休眠打破剤「物質X」を発見しました(特願2025-103709)。物質Xは毒劇物に該当せず、安全性の高い化合物です。本プロジェクトでは、RNA-seq 解析による網羅的な遺伝子発現変動の解析や、植物体の組織観察などを通じて、物質Xによってどのように休眠から目覚めるかを明らかにします。また、クラウドファンディングを通じて「支援者コミュニティー」を形成し、研究を加速することで、物質Xの使用法の確立、農薬登録への情報整備、受入体制の構築といった社会実装に向けた第一歩を目指します。
報道機関の皆様におかれましては、ご多用中とは存じますが、ぜひ、周知並びに取材賜りますよう、お願い申し上げます。
【クラウドファンディングの概要】
プロジェクトタイトル:植物の眠りを制御して地球温暖化に強い農業を実現する!
ページURL:https://academist-cf.com/projects/397
目標金額 :200万円(All or Nothing形式)
※募集期間内に集まった寄付が目標金額を超えた場合のみ受け取ることができる仕組み
募集期間 :2025年9月2日(火)8時~2025年10月30日(木)17時
資金の使途:物質Xの効果検証試験実施費、分子生物学的解析費、広報活動費 等
【研究者コメント】
静岡大学 農学部 助教 富永 晃好(とみなが・あきよし)
10年間の試行錯誤の末、眠り症を根本から解決する休眠打破剤「物質X」を発見しました。この物質は地球温暖化に強い農業への大きな可能性を秘めています。私ひとりでは世界を変えることはできません。この挑戦に、ぜひお力をお貸しください。

【研究概要】
今まで生産者の圃場でナシの眠り症の発生状況を継続的にモニタリングし、温度などの環境データと開花・発芽タイミングを長年にわたり詳細に記録してきました。
並行して、さまざまな化合物を眠り症常発樹に処理し、開花・発芽促進をもたらす休眠打破剤「物質X」を発見しました(特願2025-103709)。物質Xは毒劇物に該当せず、一般の「普通物」として扱える安全性の高い化合物です。
驚くべきことに、物質Xはナシだけでなく、他の落葉果樹、草本作物、モデル植物などさまざまな植物に対して一度の塗布で顕著な休眠打破効果を示すことが分かってきました。すなわち、眠り症の改善にとどまらず、開花促進、葉や陰芽、脇芽の発芽促進が可能であることが、新たな知見として得られてきました。
植物成長調整剤の市場は、2034年には147.4億ドル(約2.3兆円)に達すると予測され、年平均成長率は11.9%と高い伸びを示しています(Precedence Research調査)。しかし、低毒性で多作物に適用可能かつ発芽・開花促進に特化した資材は、現時点では市場に存在していません。物質Xはこのギャップを埋める画期的な候補であり、次世代農業の実現に資する資材として大きな可能性を秘めています。
今回のプロジェクトでは、特許出願中の休眠打破剤「物質X」の作用を、全国の支援者の皆様と協力して検証し、その応用範囲と社会的な価値を飛躍的に広げていくことを目的としています。具体的には、物質Xの処理によって開花・発芽が促進される植物種、最も効果的な処理時期、処理濃度を、全国各地の支援者のご協力を通じて実証します。そして、植物種別に最適化された使用プロトコルの構築を目指します。
支援者には生産者、消費者、研究者、企業の皆さまなど、多様な立場の方々を想定しており、それぞれの視点から、需要や現場ニーズ、試験方法に関する貴重なご意見やアドバイスをいただける環境を構築したいと考えています。こうした多様な知見の融合が、物質Xの実用化を大きく前進させると確信しています。支援者の皆様には、支援者コミュニティーを通じて、気づいたことやアドバイスをフィードバックしていただき、物質Xの社会実装に必要な情報を加速度的に蓄積していきます。同時に、植物の「眠り」を解除する分子メカニズムを解明する基礎研究も進めます。RNA-seq 解析による網羅的な遺伝子発現変動の解析、植物体の組織観察などを通じて、物質Xによってどのように休眠から目覚めるかを明らかにします。これにより、物質Xを単なる“効く資材”ではなく、「作用機序が明らかな新しい農業テクノロジー」として定義し直し、社会実装における信頼性を高めます。このプロジェクトは、基礎研究の成果を支援者の皆様と共に育てる、社会実装のモデルケースになります。

【研究背景】
地球温暖化の進行により、春になっても芽が動かず、花が咲かない「眠り症」と呼ばれる発芽不良が、ナシ、モモなどの落葉果樹を中心に世界中で深刻化していることが、これまでの研究で明らかになっています。これは、植物が冬の低温を十分に経験できず、休眠を打破できないことで引き起こされる生理障害です。さらに、ダイズ、トウモロコシ、イチゴなどの主要作物においても、冬期の低温不足や異常高温の影響で発芽不良が報告されており、生育リズムや収量に深刻な影響を及ぼしています。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」では、1961〜2017年の実データに基づき、地球温暖化が世界の農作物平均収量を約5.3%減少させたと報告されています。これは現在の市場規模換算で、年間約424億ドル(約6.4兆円)の経済損失に相当します。
休眠を人為的に制御できれば、必要な時期に開花・発芽する「地球温暖化に強い農業」が実現可能となり、収量確保と、経済損失を防ぐことにつながります。

【今後の展望と波及効果】
本プロジェクトでは、10年かけて発見した休眠打破剤「物質X」の効果を実証し、社会実装につなげることを目指します。この研究の最大の特徴は、支援者の皆様と一体となって進める「支援者コミュニティー」にあります。 今回のクラウドファンディングは、「研究者だけでは社会を変えられない」「支援者の皆さんと一緒に未来を作りたい」という強い思いから立ち上げました。

物質Xの効果を検証するには、植物種・品種・処理時期などの膨大で多様なデータが必要です。そこで、生産者・消費者・研究者・企業など、多様な立場の支援者の皆様と協力し、情報を共有しながら現場での有効な使用方法を見出していきたいと考えています。また、物質Xを社会に届けるには、「農薬登録」という大きな壁を越える必要があります。農薬登録には、安全性試験や大規模なフィールド試験、書類審査などに莫大な時間と費用を要し、最終的には15億円以上のコストが見込まれます。
本プロジェクトは、社会実装に向けた第一歩として、正確な物質Xの使用方法の確立・迅速な農薬登録への情報整備・社会の受け入れ態勢の構築を目指しています。そのためには、初期段階における研究資金の確保が重要です。
ご支援金は、以下の用途に大切に活用させていただきます。
・物質Xの効果検証試験実施費(120万円)
・作用機構解明のための分子生物学的解析費(60万円)
・プロジェクトの進捗を広く発信するための広報活動費(20万円) 等
この技術が普及すれば、地球温暖化に左右されない「次世代農業」が実現し、食卓には安定して食材が届く、そんな未来を10年以内に実現できると信じています。
●研究計画

【時期】 |
【計画】 |
2025年11月 |
支援者コミュニティーの物質X効果検証開始 |
2025年12月 |
支援者コミュニティーのお悩み共有開始 |
2026年3月 |
国内学会で発表 |
2026年4月 |
物質Xによる眠り症改善効果の検証 |
2026年5月 |
RNA-seq解析 |
2026年7月 |
支援者コミュニティーの物質X効果のフィードバック |
2026年8月 |
論文投稿 |