公益財団法人日本ユニセフ協会

【2025年9月12日 アンマン(ヨルダン)発】
ガザ市での軍事作戦が拡大している事態を受け、ユニセフ(国連児童基金)中東・北アフリカ地域事務所代表エドゥアルド・ベイグベデルは以下の声明を発表しました。
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ガザ市における軍事攻撃の激化は、すでに2年近くに及ぶ絶え間ない戦争によってトラウマを負い、疲れ果てた45万人以上の子どもたちに、壊滅的な影響を与えています。飢きんと、命を奪う暴力が広がる中、彼らは命の瀬戸際に立たされています。
ユニセフは、軍事作戦が拡大する中、大惨事が差し迫っていると警鐘を鳴らしています。避難場所や支援が限られているかほとんど存在しない状況下で戦闘が激化し続けることは、すでに民間人に不釣り合いな被害をもたらしており、子どもが生き延びるために必要な残りのライフラインのすべてを崩壊させつつあります。

特に、家族で唯一生き残った3歳のウィサームちゃんのような子どもたちが危険にさらされています。ウィサームちゃんはガザ市近郊のザイトゥーン地区で暮らしていましたが、真夜中の攻撃により、兄、妊娠中の母親、父親、そして祖父母が命を落としました。彼女自身も脚が切断寸断になるほどの重傷を負い、ガザ市の病院で横たわっています。
ガザ市のような人口密集地域における爆発性兵器の使用は、子どもを含む民間人が命を落とし、けがを負い、住宅や学校、重要な水道システムが破壊されるといった、壊滅的で複合的な被害をもたらします。それは、都市を事実上、居住不可能にする危険性をもはらんでいます。

ガザ市では、飢きんの発生が確認されており、過去2カ月だけで1万人を超える子どもが急性栄養不良と診断されています。これは衝撃的な数字です。もし治療ケアが中断されれば、現在この地域で重度栄養不良の治療ケアを受けている2,400人の子どもの一部が、飢えによって亡くなる危険性が極めて高くなります。行動を起こし命を守る緊急性は、かつてないほど高まっています。
また、保育器内の未熟児、負傷し集中治療室にいる子ども、障がいのある子どもへのリスクについても、深刻な懸念を抱いています。暴力が続く中、これらの子どもを安全に避難させる必要がありますが、医師たちは患者を守る手段が限られていることに絶望しています。安全な場所はどこにもありません。
国際法で定められていることは明確です。子どもは常に保護されなければならず、彼らが頼りにしているわずかに残されたサービスも同様に守られなければなりません。ユニセフはイスラエルに対し、法的義務を遵守するようあらためて要請するとともに、世界各国のリーダーに対し、さらに深刻な事態が起きるのを防ぐため、今すぐ行動を起こすよう強く促します。
ユニセフは、子どもは特に弱い立場に置かれていることを強調し、さらに以下を求めています。
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即時かつ持続的な停戦により、殺傷を止め、全ての子どもに対する重大な権利侵害を終わらせること。また、ハマスおよびその他の武装集団は直ちに全ての人質を解放し、そのウェルビーイングを確保すること。
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全ての利用可能な検問所を通じて大量の支援物資を搬入するために、持続的かつ安全で妨げられない人道アクセスを確保し、支援を必要としているガザ地区全域の世帯に、食料、栄養に関する物資、水、燃料、医療支援を届けること。
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子どもを含む民間人および病院や住処など、彼らの基本的なニーズを支えるインフラを攻撃から保護すること。
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避難指示後も、移動できない、あるいは移動を望まない子どもとその家族を継続的に保護すること。人々は安全な地域へ自由に移動することを認められるべきですが、決して強制されるべきではありません。
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人道支援組織および従事者が、子どもとその家族がガザ地区内のどこにいても、命を守る支援を安全かつ安定して届けられるようにすること。
ガザ市における軍事攻撃がさらに激化すれば、子どもの苦しみは指数関数的に増大し、最後の拠り所となる保護さえも奪い去られます。わずか2年足らずで5万人以上の子どもが命を落としたか、負傷したと報告されています。世界が行動を起こすまでに、さらに何人の犠牲が必要なのでしょうか。 私たちはこれ以上、彼らを見捨て続けるわけにはいきません。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
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■ 日本ユニセフ協会について
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