NECソリューションイノベータ株式会社
ヒューマンデジタルツイン技術を活用した生成AIとのコミュニケーションが、人の環境配慮行動を促進するかを検証
NECソリューションイノベータは、8月27日、第12回 気候変動・省エネルギー行動会議「BECC JAPAN 2025」において「新規性部門賞」を受賞しました。

「BECC JAPAN(注1) 2025」は、行動変容から気候変動の解決を目指すコンファレンスで、省エネルギー行動や環境配慮行動(注2)に関する研究成果や実証事例、アイデア等を公募し、プログラム委員会にて審査しています。
今回受賞した研究は、生成AIとのコミュニケーションが、人の環境配慮行動の促進に影響を及ぼすかどうかを検証したものです。この生成AIは、ヒューマンデジタルツイン技術(注3)により、人間と類似の行動をとるようにチューニングしたもので、環境に配慮してごみをなるべく資源ごみとして処分するといった行動をとります。公募で集めた約400人を、生成AIと組み合わせたチームと、生成AIとは組み合わせないチームに分け、「ごみ処理ゲーム」を実施しました。その結果、生成AIを組み合わせたチームは、生成AIを組み合わせないチームと比較して、資源ごみの量が多くなったことから、生成AIとのコミュニケーションが環境配慮行動を促進する有効な手段となることがわかりました。
なお本研究は、当社および明治大学 後藤 晶准教授、奈良女子大学 安藤 香織教授と共同で行いました。
【BECC JAPAN 2025プログラム委員 コメント(要約)】
AIを介したコミュニケーションが環境配慮行動を促進する可能性を示した点は非常に興味深く、特に人間同士の対話よりもAIが関与する方が効果的だったという結果は印象的でした。対面のコストを抑えつつ行動変容を促す手法として、今後の応用が期待されます。
当社は、新技術獲得および新事業創出を目的としたR&D組織を有しており、今後もヒューマンデジタルツイン技術や環境配慮行動を促す生成AIの活用に関する研究を加速していきます。そして、ヒューマンデジタルツイン技術を活用した生成AIの社会実装により、環境問題を含む様々な社会課題の解決を目指します。
以上
(注1) BECCは「Behavior, Energy and Climate Change」の略。行動科学の知見を集約し、環境・気候変動・省エネルギーに関する行動の理解と行動変容を促す効果的なアプローチを議論する場として、2007年、米国でコンファレンスがスタート。BECC JAPANは、日本版BECCとして2014年に始まった。多様な分野の専門家が集い、協働して持続可能な未来を目指すためのプラットフォームを提供している。
(注2) 環境問題に対し、日々の生活や経済活動を委縮させることなく、自主的かつ積極的に環境保全に配慮した取り組みを行うこと。「省エネルギー」「グリーン購入」「エコドライブ」「3R」「公共交通機関の利用促進」「緑化・自然保護活動」などがあげられる。
(注3) 「人の心」をデジタル化してサイバー空間に再現する最新技術。見た目の特徴だけにとどまらず、行動や嗜好までをも解析・予測して、公共施設の安全やマーケット施策につなげることを目的としている。
<参考>
【研究者について】
・日室 聡仁(ひむろ あきひと)
NECソリューションイノベータ(株) イノベーションラボラトリ プロフェッショナル
専門分野:行動変容、行動科学、生成AI、ヒューマンデジタルツインに関する研究に従事
・後藤 晶(ごとう あきら)
明治大学 情報コミュニケーション学部 専任准教授
専門分野:行動経済学、実験社会科学、社会情報学
・安藤 香織(あんどう かおり)
奈良女子大学 奈良女子大学生活環境科学系 教授
専門分野:社会心理学、環境社会心理学、環境配慮行動を促進する要因やその文化比較に関する研究 を行う
【「ごみ処理ゲーム」と検証結果について】
本ゲームは、経営者が抱える「利益」と「環境負荷低減に伴うコスト」といったジレンマを取り上げ、環境問題について考えるオンラインゲームです。
参加者をランダムに振り分けて3人1組のチームを作り、10回のゲームをプレイします。参加者の組み合わせには生成AIを組み合わせたチームと、人のみのチームがあり、参加者にはどのプレイヤーが生成AIなのかは周知せず実施しました。
各プレイヤーには予めポイントが支給され、工場の経営者として工場から出るごみを処理します。ごみを可燃ごみとして処理する場合、ポイントは不要で、資源ごみとして処理する場合はポイントが必要ですが、資源ごみ量に基づいてチーム全員にポイントが分配され、チームに貢献することができます。

5ゲーム終了後、約半数のチームで、ごみ処理についてチャットによるコミュニケーションを実施します。

結果、人間同士よりも生成AIとコミュニケーションを行った参加者の方が、より多くの資源ごみを処理することが確認できました。
これにより、生成AIとのコミュニケーションは協力行動を促し、環境配慮行動を促進する有効な手段であることがわかりました。

<本件のお問い合わせ先>
NECソリューションイノベータ イノベーションラボラトリ サイエンスラボラトリ第二グループ
E-Mail: mebuki-thx-contact@nes.jp.nec.com