公益財団法人水戸市芸術振興財団
磯崎新が設計を手がけた水戸芸術館で11月1日(土)から2026年1月26日(日)まで。会期中は見学ツアーやキュレータートークも。

磯崎新 略歴

1931年大分市生まれ。1954年東京大学工学部建築学科卒業。1963年磯崎新アトリエを設立。以後、国際的な建築家として、旧大分県立図書館(現アートプラザ)、群馬県立近代美術館、ロサンゼルス現代美術館、バルセロナオリンピック競技場などを設計。近年では、カタール国立コンベンションセンター、ミラノアリアンツタワー、上海シンフォニーホール、湖南省博物館、中央アジア大学、中国河南省鄭州市の都市計画などを手がけた。
世界各地の建築展、美術展のキュレーションや設計競技の審査員、シンポジウムの議長を務めた。代表的な企画・キュレーションに「間-日本の時空間」展(1978-81)、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館コミッショナー(第6~8回)、同展日本館展示「亀裂」で金獅子賞受賞(1996)など。建築思想の国際会議「ANY会議」を10年にわたり企画(1991-2000)。著書に『建築における「日本的なもの」』( 新潮社、MIT Press) 、過去50年間にわたり書いてきた文章を編集した『磯崎新建築論集』(全8巻、岩波書店)など多数。建築のみならず、思想、美術、デザイン、文化論、批評など多岐にわたる領域で活躍。2019年「プリツカ―賞」受賞。
企画意図
2022年末に逝去した建築家・磯崎新の没後、国内初となる大規模回顧展を開催します。
水戸芸術館設計者でもある磯崎は、20世紀を代表する最も創造的で先駆的な建築家として知られ、2019 年に建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞しました。建築プロジェクトや都市計画にとどまらず、著作活動、芸術家や知識人とのコラボレーション、さらにはキュレトリアル・ワークを通じ、60年以上にわたり思想、美術、文化論や批評分野においても卓越した地位を確立しました。
「群島としての建築」と題した本展では、決して単一の領域にとどまらない磯崎の活動を「群島」の様に構成します。「都市」「建築」「建築物」「フラックス・ストラクチャー」「テンタティブ・フォーム」「建築外(美術)」をキーワードに、建築模型、図面、スケッチ、インスタレーション、映像、版画、水彩画などの様々なメディアを通じて、磯崎の軌跡を辿るとともに、自身が設計した水戸芸術館を舞台に、建築の枠を超えた磯崎の活動を俯瞰的に紹介します。
展覧会の内容
建築模型、図面、スケッチ、映像、写真、大型インスタレーション、アーカイブ資料などをもとに、磯崎の「建築」概念を検証します。さらにそれをどのように建築や都市プロジェクトとして実践してきたか、磯崎のあゆみと作品を包括的に振り返ります。
1 国内外の代表作
磯崎が東京大学丹下健三研究室所属時に関わった《東京計画1960》(1961年)に始まり、アーバンデザイナーとして提案した《空中都市―新宿計画》(1960-61年)、《空中都市―渋谷計画》(1960-62年)、《コンピューター・エイディッド・シティ》(1972年)などアンビルトの都市計画、《大分医師会館》(1959-60年)や《福岡相互銀行本店》(1968-71年)、《旧大分県立図書館(現・アートプラザ)(1962-6年)をはじめとする初期作品から《群馬県立近代美術館》(1971-74年)、《北九州市立美術館》(1972-74年)、《つくばセンタービル》(1979-83年)、《なら100年会館》(1992-98年)、《ラ・コルーニャ人間科学館》(1993-95年)、《カタール国立コンベンションセンター》(2004-11年)など国内外の代表作を紹介します。


2 建築界における功績
磯崎は建築のキュレーションともいえる仕事を通じ、一人の建築家という枠を超えて建築のプロジェクトを構想しました。本展では、多くの建築家を起用した《くまもとアートポリス》(1988-98年)、国際的に活躍する国内外の建築家6 名に集合住宅を競作させた《ネクサスワールド》(福岡、1989-91年)のコミッショナーといったプロジェクトを通じて、磯崎の建築界における功績を紹介します。
3 戦後日本美術や現代美術との関わり
《奈義町現代美術館》(岡山、1994年)、《ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ》(2011-13年、アニッシュ・カプーアと協働)のようなアーティストとコラボレーションした建築プロジェクトや、パリ装飾美術館で開催された『間展』(1978-79年、79年に米クーパー・ヒューイット美術館巡回後、海外4都市で開催)のキュレーションなどにみられる戦後日本美術や現代美術との関わりを紹介します。
4 スケッチブック
磯崎は建築模型や図面以外の様々なメディアで自身の作品を発表したことでも知られています。本展では群馬県立近代美術館などの70年代の主要建築をシルクスクリーンとして遺した「還元」シリーズ(1983年)、そして80年代後半から90年代前半に手がけた建築をモチーフにした24点の水彩画(1994年)を発表いたします。また、欧州、アメリカ、アジアをはじめとする世界の旅先で古典建築やモダニズム建築等を訪れ、その姿を70冊以上にもおよぶスケッチブックに記しました。これらスケッチブックには旅の記録だけではなく当時手掛けていた建築や展覧会そして執筆活動などの構想も残されています。磯崎のインスピレーションの源泉となった膨大な数のスケッチからその一部を紹介します。

5 磯崎建築としての水戸芸術館
1990年3月に開館した水戸芸術館は、画一的な近代建築を批判し、建築の根源的価値を再考するポストモダン建築の理念と実践を結実させた磯崎の代表作です。本展では水戸芸術館を、出品作品のひとつとして“展示” します。あわせて刊行する『水戸芸術館ガイドブック』(監修・執筆:五十嵐太郎/デザイン:イスナデザイン)を手に館内外を巡り、磯崎建築を体験できます。

関連プログラム
■ ゲストキュレーター・レクチャー 01:五十嵐太郎
講師:五十嵐太郎
日時:11月2日(日)14:00~15:30
会場:水戸芸術館会議場
定員:80名(先着順)
参加費:無料
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■ ゲストキュレーター・レクチャー 02:ケン・タダシ・オオシマ
講師:ケン・タダシ・オオシマ
日時:12月20日(土)14:00~15:30
会場:水戸芸術館会議場
定員:80名(先着順)
参加費:無料
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■ ゲストキュレーター・レクチャー 03:松井茂
講師:松井茂
日時:2026年1月17日(土)14:00~15:30
会場:水戸芸術館会議場
定員:80名(先着順)
参加費:無料
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■ ドキュメンタリー映画『だれも知らない建築家のはなし』上映
日時:12月21日(日)13:00~14:13(14:15~14:45ポストトーク)
会場:水戸芸術館ACM劇場
定員:150名(先着順)
料金:無料(ただし、本展入場券もしくは半券の提示が必要)
監督:石山友美/撮影:佛願広樹/出演:安藤忠雄、磯崎新、伊東豊雄、レム・コールハース、ピーター・アイゼンマン、チャールズ・ジェンクス、中村敏男、二川由夫ほか/上映時間:73分
ポストトーク:石山友美(映画監督)×伊東豊雄(建築家)
▼上映及びポストトークの詳細及び登壇者プロフィール等
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■ だれも知らない構造のはなし
水戸芸術館の構造設計を担当した構造家の金箱温春が当館タワーの構造について解説します。
講師:金箱温春
日時:2026年1月11日(日)14:00~15:30
会場:水戸芸術館会議場
定員:80名(先着順)
参加費:無料
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■ 磯崎新研究会:群島のアルケオロジー
磯崎自身が用いた言葉、「建築外的思考」を結節点に拡がる芸術の諸問題を、美学、芸術学、メディア論、アーカイブ論の実践者と共に議論し、その射程を拡張する研究会。本展を媒介に、戦後日本美術の持ち得た想像力を、未来へと継承します。
登壇者:石本華江(慶應義塾大学アート・センター土方巽アーカイヴ学芸員)、
伊村靖子(国立新美術館主任研究員)、木原天彦(渋谷区立松濤美術館学芸員)、
鯉沼晴悠(金沢工業大学五十嵐威暢アーカイブ学芸スタッフ)、服部真吏(編集者)
モデレーター:松井茂(本展ゲストキュレーター)
日時:2026年1月18日(日)11:00~17:00
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリーワークショップ室
参加費:無料(本展入場料別途)
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■ 水戸芸術館ガイドブック
本展ゲストキュレーターで建築史家である五十嵐太郎氏監修・執筆のもと、水戸芸術館の建築的特徴やデザインについてイラストつきでわかりやすく解説する『水戸芸術館ガイドブック』を刊行します。こどもから大人まで水戸芸術館の内側から外側まで楽しめる1冊です。
監修・執筆:五十嵐太郎
デザイン:イスナデザイン
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■ 水戸芸術館見学ツアー
水戸芸術館をATMフェイスがご案内するツアーを開催し、普段では見ることのできない施設も特別に公開します。
※公演・リハーサル・天候等の都合でご覧いただけない施設があります
日時:【平日】14:00〜/16:00〜
【土日祝日】11:00〜/14:00〜/16:00〜
所要時間:45分程度
料金:大人600円(本展入場料別途|サザコーヒー水戸芸術館店での1ドリンク付。当日限り有効)
こども(小中学生)500円(サザコーヒー水戸芸術館店での1ドリンク付。当日限り有効)
申込方法:当館HP(https://www.arttowermito.or.jp/service/tour.html)を参照ください。
関連教育プログラム
■ 赤ちゃんと一緒に美術館散歩
小さなお子さんと一緒に、安心して、気兼ねなく美術館を楽しんでいただくためのツアーです。
日時:11月21日(金)、22日(土)各日10:30~12:00
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
定員:5組程度 ※要申込/先着順
料金:保護者のみ1,500円、入場料無料の保護者1,000円
※保護者2人目からは通常入場料
申込期間:10月21日(火)~
協賛:ピジョンマニュファクチャリング茨城株式会社
■ ウィークエンド・ギャラリートーク
市民ボランティアCAC ギャラリートーカーとともに展覧会を鑑賞します。
日時:11月15日(土)より毎週土曜日 各日14:30 ~40分程度
※ただし、他のプログラムとの関連で中止となる場合があります。
会場:現代美術ギャラリー
料金:無料 ※ただし、展覧会入場券が必要です。
■ プレスクール プログラム
2007~2018年に開催していた幼稚園・保育園の年長向けの鑑賞ツアー+工作ワークショップを再開します。申込は園単位となります。
日程:12月3日(水)、4日(木)、9日(火)、10日(水)、11日(木)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー及びワークショップ室
対象:幼稚園・保育園・こども園・託児施設等の年長クラス
料金:20名までは2,000円、それ以上は1名につき200円
募集数:10~15園程度
同時開催
■ 日比野克彦「明後日朝顔プロジェクト2025水戸」収穫祭
2005年の個展「HIBINO EXPO 2005 日比野克彦の一人万博」をきっかけに全国に拡がった「明後日朝顔プロジェクト」の水戸版を今年も開催しています。秋の種の収穫、春の苗植え、夏の開花という朝顔の育成を通して、人と人が出会い、地域と地域がゆるやかにつながっていくプロジェクトです。来年に向け、水戸での記憶のつまった種を収穫します。
日時:11月8日(土)10:00~17:00(小雨決行。荒天時翌日順延)
会場:水戸芸術館広場回廊2階
料金:無料
主催:明後日朝顔プロジェクト水戸実行委員会、公益財団法人水戸市芸術振興財団、
株式会社水戸京成百貨店、水戸市民会館
協力:水戸21の会、茨城県立大子清流高等学校、サントリーホールディングス株式会社
■ 造形実験室
月替わりでさまざまな素材・技法を使って造形を楽しむプログラム。
年齢を問わず、どなたでも参加できます。
日時:11月14日(金)、15日(土)、12月5日(金)、6日(土)、
2026年1月9日(金)、10日(土)、2月13日(金)、14日(土)
各日10:30~12:00/13:30~15:30
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー ワークショップ室(11月、12月、1月)、会議場(2月)
料金:無料 ※予約不要
展覧会概要
磯崎新:群島としての建築 Arata Isozaki: Archipelagos of Architecture
会 期:2025年11月1日(土) ~ 2026年1月25日(日)
開場時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
会 場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
休館日:月曜日(ただし11月3日、11月24日、1月12日は開館)、11月4日(火)、11月25日(火)、年末年始(2025年12月27日(土)~2026年1月3日(土))、1月13日(火)
入場料: 一般900円、団体(20名以上)700円 高校生以下/ 70 歳以上、障害者手帳などをお持ち
の方と付き添いの方1名は無料※年齢のわかる身分証明書などが必要です
●一年間有効フリーパス →「年間パス」2,000 円
●学生とシニアのための特別割引デー「First Friday」:学生証をお持ちの方と65歳~
69歳の方は、毎月第1金曜日(11月7日、12月5日、1月9日)100円
※学生証、年齢のわかる身分証明書が必要です
主 催:公益財団法人水戸市芸術振興財団
協 賛:一般社団法人茨城県建築士会、一般社団法人茨城県建築士事務所協会、
柴建築設計事務所、横須賀満夫建築設計事務所、アビック、暁飯島工業、
パル綜合設計、国際警備保障、三上建築事務所、根本建築設計事務所、清水建設、
andHAND建築設計事務所、田村工務店
後 援:株式会社アンドエスティHD
協 力:磯崎新アトリエ、MISA SHIN GALLERY、大分市美術館、アートプラザ、
公益財団法人西日本シティ財団、公益財団法人山口きらめき財団、秋吉台国際芸術村、
高知県立美術館 石元泰博フォトセンター、The Estate of Jiro Takamatsu、
Yumiko Chiba Associates、TANGE建築都市設計、日本図書輸送株式会社、
アダストリア・ロジスティクス、伊東豊雄建築設計事務所、金箱構造設計事務所、
くまもとアートポリス事務局、慶應義塾大学アート・センター、AAarchitects、
MORF建築設計事務所、葵建設工業、加藤木工、サントリーホールディングス株式会社
ゲストキュレーター:ケン・タダシ・オオシマ、五十嵐太郎、松井茂
会場設計:日埜建築設計事務所
企 画:井関悠(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)





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