文化庁
三好十郎の、人間の本質を炙り出す、骨太で力強い言葉。11月11日(火)から16日(日)まで、新国立劇場小劇場にて上演!

新国立劇場演劇研修所では、第19期生公演として、三好十郎作、田中麻衣子演出『トミイのスカートからミシンがとびだした話』を、11月11日(火)から16日(日)まで、新国立劇場小劇場にて上演いたします。
三好十郎は、昭和初期から30年代前半にかけて、日本演劇史に数多くの名作を遺した、現在も作品の上演が続く日本を代表する劇作家の一人です。
『トミイのスカートからミシンがとびだした話』は、敗戦後の占領下の激動の社会の中で、身体を張って生きていくしかなかった貧しく若い女たちと彼女たちを取り巻く男たちの苦闘、挫折と情熱を描く群像劇です。
三好は、矛盾に満ちた社会をありのままに描きます。若い俳優たちは、人間が持つ本性~愚かさ、卑しさ、醜さ~を露わにしながらも社会の中で懸命に生きる人間の姿を、全身全霊を込めてエネルギッシュに演じます。
戦後80年の今年、演劇研修所では8月、朗読劇『少年口伝隊一九四五』に臨み、戦争の悲惨さについて深く考える機会を得ました。今回は、敗戦後の激動の社会の一断面を見つめます。
◆なぜ、三好十郎作品を取り上げるのか
演劇研修所3年次学年担任であり、この公演の演出を担当する田中麻衣子の提案により、本公演の上演が決定しました。田中は、作品選定理由について、次のように語っています。
「三好十郎作品の、人間の本質を炙り出す、骨太で力強い言葉に強く魅力を感じてきました。この大劇作家の作品と向き合うには、経験に関係なく、心身ともに全力で立ち向かわないと太刀打ちできません。その強固な作品に、研修生活の中で出会うことは、将来の俳優人生にとってかけがえのない経験になると考えています。12期生(2018年)ではじめてこの作品と採り上げたとき、大きな手ごたえがありました。時代は異なりますが研修生の年齢と近い役柄も多く、今回も、彼らの熱気あふれる、今の19期生にしか出来ない作品作りになると確信しています。三好十郎の世界を充分にお楽しみいただきたいと思っています。」
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ものがたり
敗戦後1,2年を過ぎた頃、富子は、東京で働いて貯めたお金でミシンを手に入れ、洋裁で生活しようとしていた。戦時中、富子は空襲で両親を失い弟・妹と共に焼け出されたところを、東京郊外に住む伯父夫婦に助けられたのだった。富子は、洋裁で弟・妹の面倒も見ながら暮らそうと伯父夫婦のもとに戻った。「進駐軍仕込みの洋裁でダンスも踊れる美女が帰ってきた」と町中の噂となり、美談として新聞にも取り上げられた。しかし、富子のお金は身体を売って貯めたものであることが週刊誌に書かれ、周囲の態度は一変し、富子は、伯父の家を飛び出し流転の人生を歩むこととなる…
様々な社会の波に揉まれ、富子は職を転々とした後、結局、東京で身体を売っていた仲間のところに戻っていく。
「みんないろいろになつたけどさ、あたいたちの此處が一番だ。ザマアみろう!」
そこに、ある職場で出会った男が、富子を訪ねてくる……
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スタッフ・キャスト
【スタッフ】
作 : 三好十郎
演 出: 田中麻衣子
美 術: 伊藤雅子
照 明: 中川隆一
音 楽: 国広和毅
音 響: 黒野 尚
衣 裳:宮本宣子
振 付:前田清実
演出助手:中西良介
舞台監督: 瀬崎将孝
演劇研修所長: 宮田慶子
主催・制作: 新国立劇場
作:三好十郎
1902年~58年。吉江喬松に師事し、早稲田大学在学中に詩人としてデビュー。28年、高見順らと左翼芸術同盟を結成。同年、処女戯曲『首を切るのは誰だ』を発表。全日本無産者芸術連盟(ナップ)に参加、『疵だらけのお秋』のほか小説・詩を書き、31年、処女戯曲集『炭塵』を出版。以降、プロレタリア劇作家として知られたが、社会的リアリズムと呼ぶ創作方法により、政治主義・公式主義に不満を抱き組織から離れる。生涯で戯曲やラジオドラマの脚本等、80を超える作品を発表し、『炎の人~ゴッホ小伝』で52年読売文学賞戯曲賞を受賞。代表作に『斬られの仙太』(34年)、『浮標』(40年)、『崖』(46年)、『廃墟』(47年)、『その人を知らず』(48年)、『胎内』(49年)、『殺意―ストリップショー』(50年)、『炎の人』(51年)、『冒した者』(52年)。58年12月16日、東京・赤堤の自宅書斎で逝去。享年56歳。戯曲体で81枚、小説体で130枚書かれた『神という殺人者』が絶筆未完の遺作となったほか、『悪人を求む』が遺稿として同年12月19日の読売演劇で発表される。

演出:田中麻衣子
演出家
1978年7月15日生まれ。兵庫県宝塚市出身。
日本大学芸術学部演劇学科演出コース卒業。2014年度文化庁新進芸術家海外研修制度にてロンドンで研修。新国立劇場演劇研修所学年担任(3年次)。
日本の近代、新作戯曲からギリシャ悲劇やシェイクスピアなどの海外古典、新作ミュージカルなど多岐にわたり手掛けている。
新国立劇場演劇研修所では、2008年2月、第1期生修了公演より演出家・栗山民也氏の演出助手を務め、講師補佐を経て講師(コーチ)を務める。2011年度よりアソシエイトディレクター、2020年度より学年担任(3年次)。
【キャスト】
新国立劇場演劇研修所 第19期生
井神崚太 大田真喜乃 菊川斗希 﨑山新大 田村良葉 千田 碧 辻坂優宇 中島一茶 野仲咲智花 向井里穂子 森 唯人 和田壮礼

【公演日程】
2025年11月11日(火)18:30
2025年11月12日(水)18:30
2025年11月13日(木)14:00
2025年11月14日(金)18:30
2025年11月15日(土)14:00
2025年11月16日(日)14:00
*開場は開演の30分前
*11月15日(土)、16日(日)公演は、託児室<キッズルーム「ドレミ」>がご利用になれます。(定員制/要予約/有料)
【会場】新国立劇場 小劇場
【チケット料金(税込)】
A席 3,850円/B席 3,300円/U25席 1,650円
Z席(当日券)1,650円
*クラブ・ジ・アトレ会員ほか、各種割引はありません。
【前売り開始日】一般発売日 2025年10月2日(木)10:00 ~
◆U25席のご案内
ご観劇当日に25歳以下の方が対象です。Webボックスオフィスのみのお取り扱いです。
入場時、チケットと共にご年齢を確認できる証明書(コピー不可)をご提示ください。電話予約不可。
【チケットのお求め・お問い合わせ】
新国立劇場ボックスオフィス 03‐5352‐9999
Webボックスオフィス https://nntt.pia.jp/
チケットぴあ【Pコード:536-577】 https://t.pia.jp/
【前売り開始日】一般発売日 2025年10月2日(木)10:00 ~
【公演ウェブサイト】https://www.nntt.jac.go.jp/play/tomiesskirt2025/
*チケット販売等、最新の情報はウェブサイトをご確認ください。
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新国立劇場について

新国立劇場は、オペラ、バレエ、ダンス、演劇という現代舞台芸術のためのわが国唯一の国立劇場として、1997 年秋に開場しました。オペラパレス、中劇場、小劇場の特色ある3つの劇場を有し、年間約250ステージの主催公演を実施しています。
次代を担うアーティスト育成も新国立劇場の事業の大きな柱の一つであり、オペラ、バレエ、演劇の3つの研修所を擁し、充実した研修を実施しています。
所在地:東京都渋谷区本町1-1-1
https://www.nntt.jac.go.jp/