日本ロレアル株式会社
節目に新たな展開:本年度受賞者数を増強、特別賞をいとうまい子氏に授与75名の支援実績、20周年の史跡をまとめた記念誌を刊行、女性科学者の未来を拓く

世界最大の化粧品会社ロレアルグループ(本社:パリ)の日本法人である日本ロレアル株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:ジャン-ピエール・シャリトン)は、10月2日、大阪・関西万博のテーマウィーク会場にて、2025年度 第20回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の授賞式(後援:日本ユネスコ国内委員会)を実施しました。日本の若手女性科学者の育成と科学分野における男女共同参画の推進を目指し運営している本奨励賞は、本年で20周年を迎え、本年度は各賞3名、計6名の若手女性科学者に賞を授与いたしました。
■「物質科学」分野 ※肩書きは2024年応募当時、年齢は2025年10月2日時点のものです。
木野 量子(28)
東北大学大学院理学研究科物理学専攻 素粒子・核物理学講座 原子核物理研究室 ストレンジネス核物理
研究内容: ハイパートライトンのΛ束縛エネルギーと寿命の高精度測定によるバリオン間力の解明
受賞理由: 原子核の寿命を決定する装置を開発する国際チームを牽引し、国際的な実験研究をリードする研究者としての貢献を高く評価
髙田 咲良(26)
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 基礎理工学専攻 生命分子工学研究室
研究内容 : 人工細胞内再構成系を用いた細胞内の時空間秩序原理の解明
受賞理由:細胞という複雑な系の仕組みを物理学的な手法で解析する大変ユニークな研究を展開し、新たな分野を切り開く独自性への評価
仲里 佑利奈(26)
東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 宇宙理論研究室
研究内容 : 多波長観測と高精度シミュレーションで探る宇宙最初期の銀河形成
受賞理由:宇宙初期の銀河形成について,宇宙の風による星の集団が形成されることを理論シミュレーションにより世界で初めて示すなど,その独自の発想による研究が高く評価
■「生命科学」分野 ※肩書きは2024年応募当時、年齢は2025年10月2日時点のものです。
上野山 怜子(28)
岩手大学大学院 連合農学研究科 生物資源科学専攻 分子生体機能学研究室
研究内容 : ネコ科動物のマタタビ反応の行動学的意義とメカニズムの研究
受賞理由:ネコ科動物のマタタビ反応が生存戦略に関わるという独創的な発見であり、科学的知見を社会に広める意義も大きい研究であることを評価
沖田 ひかり(28)
名古屋大学 大学院工学研究科 生命分子工学専攻 浅沼研究室 トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム
研究内容 : 人工生命の創製に向けた天然アミノ酸由来の核酸による化学的な遺伝情報伝達系
受賞理由:生命の起源に挑む挑戦的な研究で、RNAよりも簡素なアミノ酸が遺伝情報伝達に機能しうるという驚くべき発見、そして人工生命創製への期待も大きい成果を評価
吉本 愛梨(29)
東京大学大学院薬学系研究科 薬品作用学教室
研究内容 : 皮質視床ネットワークによるトップダウン心拍数調整
受賞理由:新たな実験系を確立し、ラットの心拍調整が訓練によって可能になることを解明したこと、そしてヒトの心拍コントロールや医療応用への貢献の可能性を見出したことへの評価
20年間の軌跡と研究水準
2005年の創設以来、「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」は、物質科学および生命科学分野で活躍する日本の若手女性科学者を発掘し、その研究成果を称え、さらなる発展を奨励することを使命としてきました。これまでに支援した75名の受賞者は、それぞれの専門分野において研究を推進され、科学界に貢献されています。
この20年の間に、本賞に応募される研究の質も年々高まっており、選考委員会では、毎年多くの極めて質の高い研究応募の中から受賞者を選定する形となっております。これは、日本の女性科学者の研究が着実に進展していることを示すものであり、本賞がその役割の一端を担えていることの表れと考えております。
未来へのコミットメント:本年度限定の受賞者数増強、ロールモデルの発信、そして初の関西開催
このような背景を受け、日本ロレアルは、20周年という節目の年を記念し、日本の女性科学研究のさらなる発展に寄与する特別措置として、本年度の受賞者数を増強しました。これまで各賞(物質科学、生命科学)2名であった受賞者を、本年度は各賞3名とし、より多くの才能ある若手女性科学者を表彰し、その研究を支援します。
また、日本の科学分野におけるジェンダーギャップ解消には、次世代の女性たちが早い段階で理系分野に興味を持ち、進路を選択できるよう、周囲の理解を深めることが不可欠であると考えております。特に、教職員や保護者の皆様が抱く「女性科学者のキャリアは安定しないのではないか」といった無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が、時に女子生徒の理系進学を妨げる一因となっている現状があります。そこで本賞では、これまでの受賞者総勢75名のうち6名の現在を取材し、彼女たちが科学に興味を持ったきっかけ、続けてこられた理由などまとめた記念誌を作成しました。これにより、女性が科学の道に進むことが、他の専門職と同様に、やりがいと専門性を活かして社会に貢献し、着実にキャリアを築いていける、魅力ある選択肢であることを具体的に示し、未来の女性科学者やその保護者、教育関係者の皆様の理解を促すことで、未来の女性科学者の裾野を広げることを目指しています。オンラインでの公開も予定しており、女性科学者のロールモデルがわかりやすく集約され、アクセスしやすい情報源として活用されることが期待されます。
さらに、20周年を記念する授賞式は、大阪・関西万博内で「いのち輝く未来社会」を対話を通じて世界と創造する「EXPO2025テーマウィーク」内、「SDGs+Beyondいのち輝く未来社会」テーマ・プログラムの一環として開催されました。これは本賞史上初の関西での開催となり、西日本の科学コミュニティとの連携を深め、より広範な地域における女性科学者の活躍を奨励する機会にもなりました。また授賞式では、在京都フランス総領事館のサンドリン・ムシェ総領事様より受賞者へ祝辞を賜りました。さらに、20周年を記念し、俳優のいとうまい子さんに「ロレアルーユネスコ 女性科学者 日本奨励賞 特別賞」を授与いたしました。いとうさんは45歳で早稲田大学に入学し、予防医学やロボット工学を学ばれ、2025年からは大学教授にも就任されるなど、年齢や既存のキャリアにとらわれず、知的好奇心と社会貢献への意欲を原動力に、研究者として新たな道を切り拓いてこられました。特に、高齢者の健康寿命延伸に寄与する介護予防ロボットの開発に尽力されており、「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」という本賞のメッセージを体現する存在として、ご来場の皆様に大きな感銘を与えました。
日本ロレアルは、「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を通じて、日本の女性科学者がその才能を最大限に発揮し、世界の科学進歩に貢献できるよう、積極的な支援を続けてまいります。
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▪️「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」(主催:日本ロレアル)
https://www.loreal.com/ja-jp/japan/articles/commitments/fwis/
「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」の国内版として、日本ロレアルは2005年に日本ユネスコ国内委員会の協力のもと「ロレアルーユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を創設。日本の若手女性科学者が研究活動を継続できるよう奨励することを目的とし、物質科学、生命科学の分野で、博士課後期課程に在籍または、博士後期課程に進学予定の女性科学者(40歳未満)を対象としています。毎年、物質科学・生命科学から原則、各2名(計4名)に奨学金100万円を贈呈しています。2024年度を含み75名の若手女性科学者が受賞しており、受賞後さらにキャリアを開花し、国内外で活躍しています。
▪️ロレアル財団と「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」について
https://www.forwomeninscience.com/(英語のみ)
ロレアル財団は、「女性のエンパワメント」をミッションに掲げ、彼女たちが自らの未来を創造し、社会に貢献できるよう、若い才能の発掘から、優れた研究者の功績を称えることまで、世代を超えた視点と専門的なプログラムを通じて、科学界における多様性の推進に貢献しています。ロレアル財団は国連ユネスコとのパートナーシップのもと、「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」という理念を礎に、女性科学者の支援プログラム「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」を1998年に立ち上げました。プログラム開始以来、140カ国以上から4,700人以上の女性科学者を支援、顕彰しています。
また、未来の科学界を担う女性を奨励する目的で、若年層向けの「For Girls in Science」プログラムにも力を入れています。このプログラムでは、明日の科学的課題への意識を高め、卓越した女性のロールモデルを紹介することで、女子生徒たちが科学への関心を深めるきっかけを提供。次世代の女性科学者を支援し、彼女たちが科学分野で成功するための重要な「鍵」を提供しています。
さらに、ロレアル財団は、美は自己確立の過程で重要な位置を占め、包括的な社会の実現を後押しするという信念のもと、脆弱な立場におかれている女性を対象に、美のプロフェッショナル分野における無料の研修プログラムを展開しています
▪️ユネスコについて
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、諸国民の教育、科学及び文化の協力と交流を通じた国際平和と人類の共通の福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関です。本部はフランス・パリにあり、2025年9月現在の加盟国数は194ヵ国です。科学においては、技術、イノベーションや教育の発展に注力しているほか、海洋資源や生物多様性の保全、科学的知識に基づく気候変動や自然災害への対応策に取り組んでいます。とりわけ研究において、あらゆる人種差別の撤廃と男女共同参画を推進しています。
▪️日本ユネスコ国内委員会について
http://www.mext.go.jp/unesco/index.htm
日本では「ユネスコ活動に関する法律」に基づき、文部科学省に置かれる特別の機関として日本ユネスコ国内委員会が設置されています。日本ユネスコ国内委員会は、教育、科学、文化等の各分野を代表する60名以内の委員で構成され、我が国におけるユネスコ活動の基本方針の策定、ユネスコ活動に関する助言、企画、連絡及び調査等を行っています。日本ユネスコ国内委員会事務局は文部科学省に置かれ、文部科学省国際統括官が日本ユネスコ国内委員会事務総長を務めています。